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JATAの視察団がハワイ州知事と会談。観光再開に向けたミーティングではハワイはアメリカで最も安全な場所であると説明
2022年5月20日 06:00
- 2022年4月5日(現地時間) 実施
前回の記事に続き、JATA(日本旅行業協会)がハワイに海外視察団を派遣した2日目のレポートをお送りする。2日目はハワイ州行政のトップであるデイビッド・ユタカ・イゲ知事と会談した。JATAとの会談後、イゲ知事とハワイ・ツーリズム・オーソリティ(HTA:Hawaii Tourism Authority)の局長兼CEOであるジョン・デ・フリーズ氏はそれぞれメディアのグループインタビューに応じたので、その内容も掲載しておく。
会談が行なわれたのはハワイの歴史的建物の1つであるワシントンプレイスで、ハワイ王国最後の女王であるリリウオカラニ氏が暮らしていた場所として有名だ。その後は知事の公邸として使われてきたが(現在の知事公邸は敷地内の別棟にある)、今回のように知事主催のイベントでも使用される格調高い場所だ。
JATAの視察団を前にしたイゲ知事は開口一番、「ハワイを最初の訪問先に選んでくれたことに感謝いたします」と述べた。そして、ハワイはアメリカのなかで最も感染率が低く、そして死亡者数が2番目に少ない安全な場所であることを伝えた。徹底した感染症対策が奏功した結果であり、現在ではマスク着用の義務など、今まで行なってきた厳しい制限を取りやめたことも加えて説明した。
一時はロックダウンが行なわれるなど観光業は厳しい局面に立たされていたが、ここ1年はアメリカ本土からの旅行客を中心に回復をみせ、少しずつ経済は上向いているとのことだ。しかし、海外からのインバウンドは10%程度で、ハワイの旅行業界の方たちと話をする際に上がる話題は「日本の方たちはいつ戻ってきてくれるの?」という内容であり、ハワイが日本人をいかに待ち望んでいるかも伝えた。
イゲ知事はJATAから今後の施策を説明されると何度もうなずき、ビデオメッセージにてハワイの安全を日本の旅行者へ伝えてもらいたいといった依頼にも快諾した。ハワイ島ではコナ国際空港の大規模改修工事が終わったので、直行便の復活を楽しみにしていると答えた。また、環境保全にも言及し、ハワイは再生可能エネルギーで100%まかなっていこうという目標をアメリカで最初に宣言した州であり、サスティナビリティにおけるリーダー的立場であることも紹介した。観光も同様に「皆さんと安全で健康的で、そしてサスティナブルなアクティビティをこれからも考えていきたい」と話した。
コロナ禍における展望や今後のハワイにおける観光業のあり方などをイゲ知事に聞く
――ハワイ州が目指す持続可能な社会の実現に向けて観光業が担う役割とは?
イゲ知事:観光業はハワイにとって最も重要な業界です。持続可能な観光業を目指しており、ハワイを大切にして尊重してくださる旅行者の方をターゲットにプロモーション活動を今後も行なっていきます。
パンデミックの際は当初14日間の隔離政策を行なったため、約20万人の方が職を失いました。このようにハワイにおいて観光業は重要な産業であるため、今後何かこのような緊急事態があったときでも、コミュニティにそれほど大きな影響を与えないような観光協会というものを再建していく必要があると思っています。
――地域コミュニティと旅行者の理想的な関係についてお考えをお聞かせください。
イゲ知事:ハワイ州観光局の方では今後の観光業のあり方について考え方を刷新してるところです。それに沿ってお答えしますと、もちろん旅行者の方々に来ていただけるということは経済的に大きな力になります。ですが、ハワイの環境ですとか人、場所、そして文化に与える影響ですね、そういったものをうまく両立できないか模索しているところです。
ハワイに来ていただける観光客の方々には特別なバケーションとして過ごしていただきたいのですが、それと同時にハワイの地域コミュニティに対しても何かメリットになるような、インフラが改善されたり、経済が活性化したりといった、旅行者とハワイの双方にメリットがあるような形がベストだと思います。
――知事が描くハワイ州と日本の未来像はどのようなものでしょうか?
イゲ知事:ハワイと日本の関係が特別なのは、人と人との繋がりが非常にしっかりしているということです。ハワイでは多くの日本の県や市と姉妹都市提携を行なっており、長年にわたって交流が続けられています。ですから、ハワイと日本の関係はビジネスに留まらず、本当に個人的なレベルまでの交流ができていることから、今後もよい関係を続けていければと思います。
――任期終盤は過去に経験のない難しい舵取りを迫られました。状況は好転し始めましたが、残りの任期で観光業について取り組みたいことを教えてください。
イゲ知事:繰り返しになりますが、観光業というのはハワイ経済にとって最も重要な業界です。私自身も活性化のためには協力を惜しみませんし、業界と政府が真のパートナーとして手を携えて、発展させていきたいと思っております。観光客数がパンデミック前の数字に1日も早く戻せるよう、ハワイ側でも盛り上げていきたいですし、そうすることによって日本の観光業界にもよい影響が出ると思います。
――コロナ禍以前に予定していた観光にまつわる施策で、次の知事に託したいものはありますか?
イゲ知事:ハワイの観光業が新しい考えを持って活性化させていく機会が今だと思っています。パンデミックの後、よりサスティナブルなものとし継承していくためには、日本とハワイがこれまで培ってきた関係というのが最もベストな交流状況と思っています。
日本から訪れる観光客の方々については、ハワイが長年にわたって培ってきた価値観が非常に近いと感じています。マラマ精神(思いやりの心)に関してもそうですし、土地や環境など自然を守っていく大切さを非常によく理解していただいて、ハワイアンの文化や伝統、環境などを尊重していただいています。そして、伝統的なハワイ体験をもっとしたいと考えている人がたくさんいらっしゃる。今後、観光業全体にわたってそういう考えを持った方が来ていただければ嬉しいですし、そういう方面を推進していけるような状況にしていきたいと思います。
――日本でも海外旅行への意欲は高まっていますが、まだ不安を覚える方もたくさんいらっしゃいます。こういった不安を払拭し、旅行者がこれまでと同じように安心してハワイへ旅行できるような取り組みが必要になると思われますが、こちらについてお考えをお聞かせください。
イゲ知事:日本の旅行業界のさまざまなパートナーの方々と協力しながら、もし懸念事項があれば迅速に対応できるような体制を整えていきたいと思っています。日本から来られる観光客の方々にはできる限りのサポートをして、安全で楽しく旅行できるようにしていきたいと考えています。日本でも、ハワイはアメリカの中で最も健康的で安全な旅行先であることを広めてもらいたいと思います。
――ハワイでも厳しい感染症対策を行なってきましたが、それを転換する決め手となったのはどの部分でしょうか。日本の観光業界でも行政の判断が如実に関わってくるので、参考までに教えてください。
イゲ知事:確かに難しい決断でした。特に経済やビジネスにインパクトを与えてしまうので悩みました。それでも最優先事項はハワイ住民の健康と安全だったので、その部分を1番に考えてやってきました。
ようやく感染者数や入院患者数がかなり下火になって落ち着いてきたことからハワイの医療体制にも余裕ができ、旅行者の受け入れも対応可能であると判断できたので制限を外すことができました。そこに至るまでは色々な努力がありましたが、ハワイはアメリカの中でもワクチン接種率が非常に高いということも誇れるところでして、それに加えて万が一コロナにかかっても治療体制が整っているのも自信になっています。
あとは入院率が低いということです。この入院率が低いというのは、コロナに罹患してから治療に至るまでの時間が非常に短く、治療のプロセスを確立できたことです。これらが決断の理由になっています。
デ・フリーズ局長にハワイにおける日本市場の影響力について尋ねる
――2021年はアメリカ本土からの観光客が中心で、日本人観光客は2万4000人ということでした。日本市場のプレゼンスが下がっていると思われますが、HTAとして日本市場への姿勢は以前と変わらないでしょうか?
デ・フリーズ局長:日本人観光客に対してHTAの立場は変わらないですかという質問ですが、変わらないどころか、よりよいものになると思っています。その2万4000人しかいなかった中でも、滞在期間の伸びや、消費していただいた金額などが予想していた以上に多くて驚きました。
また、JATAからお話しいただいた2019年レベルまでの観光需要の回復が、早ければ2023年には可能であるという見込みを聞いてとても勇気づけられました。HTAとしましては、日本の観光客の方というのは尊敬の念や思いやりを持って、ハワイを楽しんでいただいています。そういうことが理由で、私達にとって日本人観光客の方々は非常に大切でありがたい存在になっています。もちろん、立場の違いはありますが、日本とハワイの関係というのは、立場を超えた心の奥深いところで繋がっていると感じています。
ハワイに渡航できずにいるけれど、もう一度ハワイと繋がり直したいという気持ちを持っている方はたくさんいると思います。そういった方が自由に選択できるように、HTAとしてはその機会を用意するというのが仕事であると思っています。けれども、もう1度繋がりたい、ハワイに帰りたいと思っていただける気持ちというのは、観光の枠組みを超えてもっと大切なものだと考えています。
――ハワイにおける旅行のスタイルは変わってくるのでしょうか?
デ・フリーズ局長:これまでも最高のレクリエーション先として、休養するための旅行先として、しっかりとした地位を確立してはいますが、今後の旅行目的はそれだけではありません。日本の方に限らず、より一歩踏み込んだところでの深い繋がり、自分の人生に何か影響を与えてくれるような旅行というものが求められると思います。何かに貢献できる、もしくは自分が成長できるといった精神面での旅行というのが今後は大切になってくると思います。
――コロナ収束後はどのような客層をターゲットに捉え、日本の旅行会社にはどのような販売をしてほしいと期待されますか?
デ・フリーズ局長:コロナ禍前になりますが、2019年に観光客が1000万人を超えた段階で、色々な面でその影響が出ており、そのストレスをハワイは感じていました。それに対処するためにHTAでも対応策を講じてきましたが、パンデミックが落ち着き、今またその問題が浮き彫りになってきました。
ハワイのコミュニティが求めているものは、ベストなバランスです。経済の活性化とハワイの環境を守るバランスをどこに落とし込むかということです。そのためには観光客の方が訪問する前に理解していただきたいこと「マラマ」をメッセージとして伝え、ハワイ側も観光と環境の両立について学ばなければなりません。旅行会社にはハワイ側の指針をお伝えし、反映した形で、安心で安全なパッケージを作ってもらいたいと思います。
――コロナ禍においてリニューアルを進めたホテル、もしくは利用者の受け入れを予約制などに変えた施設があると思います。久しぶりに訪れる方々に気を付けてほしいことありますか?
デ・フリーズ局長:私どもの責任は、旅行に出かける方々に最新の情報を提供していくということです。それは必要な書類や検査に加え、安全性に関する情報もそうです。HTAの仕事というのはそれらを提供し、旅行者の準備をお手伝いするという側面が多分にあります。特に今、このような変化のときにおいて混乱であったり、方向性が急に変わったり、日々目まぐるしく状況が変わっていく中において、最新の情報をいち早くお届けしたいと思います。