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JAL、中期経営計画のローリングプラン。25年度までに傘下のZIPAIRで10機、スプリングで8機の新機材

2021年度決算は1775億円の損失で無配を継続

2022年5月6日 発表

JALが2021年度(2022年3月期)決算を発表した

 JALは5月6日、2021年度(2022年3月期)決算と2021~2025年度の中期経営計画をより確実なものとする「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画ローリングプラン2022」を発表した。

 中期経営計画については説明したのは、代表取締役社長の赤坂祐二氏と常務執行役員 経営企画本部長兼経営管理本部長の斎藤祐二氏、連結業績については代表取締役専務執行役員 財務・経理本部長の菊山英樹氏が担当した。

 2021年度通期の連結決算は、営業収益が前期比41.9%増(2014億円増)の6827億円、EBIT(利払前税引前利益。以前の指標でいう営業利益)が2394億円の損失、純損益は1775億円の損失となった。経営環境が厳しいなか、依然として多額の損失を計上しているが、EBITは前期比で1588億円の改善が見られ、純損益も前期と比較して1091億円改善している。また、通期の実質固定費は4657億円となり、当初の見通しから343億円削減されている。

 事業別に見ると、国内線は変異株出現による感染拡大の影響がありつつも前期比35.5%増(617億円)の2357億円。国際線は依然として需要が限られるなか、東南アジア・北米間の通過需要、帰国者や海外への赴任需要を取り込むことにより前期比153.4%増(429億円)の708億円となっている。パンデミック前の2019年度比で見ると、国内線は55.5%減、国際線は85.4%減と厳しい状況に変わりはないが、足元の需要は着実に戻ってきていると説明した。

 一方、貨物郵便収入については旺盛な需要が依然として続いており、前期比69.5%増(895億円)の2183億円を計上。eコマースなどの伸び、海上輸送に混乱が見られることから、当面はこの流れが続くと予想している。

連結経営成績
主要営業費用項目

 財政状況については、新型コロナウイルスによる厳しい状況が続いており、自己資本比率は前期の45.0%から33.7%へ低下しているが、第3四半期にハイブリッド・ファイナンスで3500億円の調達を行なったことにより格付評価上の自己資本比率は41.1%を維持。現預金は4942億円、未使用のコミットメントライン3000億円も維持していることから十分な手元流動性は確保しているとのこと。

 当期配当については、コロナ禍における旅客需要の回復遅れや地政学リスクの顕在化、原油市況の高騰といった厳しい状況が続いていることから現状ではリスク耐性を強化すべく、手元流動性の確保と財務体質の強化が最優先事項であると判断したことから、前期に続き株主への配当は見送りになっている。

連結財政状態計算書と連結キャッシュフロー計算書

 なお、2022年度(2023年度3月期)の通期業績予想については、売上収益が1兆3900億円、EBIT800億円、純損益450億円を見込んでいる。旅客需要についは、国内線でコロナ前の2019年度比で90%程度、国際線は45%程度の回復を予想している。国際線は水際対策の緩和が重要なキーになるとし、中国路線と欧州路線については依然として厳しい状況が続くと見ている。

2022年度の通期業績予想

 赤坂社長は、昨年発表した2030年に向けたJALグループの指針を安全・安心とサステナビリティを2本柱とした「JAL Vision 2030」の達成をより確実なものとするため、「ローリングプラン2022」を発表した。

 2023年にはEBIT(利払前税引前利益)をコロナ禍前の水準である1700億円へ戻し、2025年には約1850億円レベルまで伸ばしていく。2030年にはSDGsの達成、2050年にはCO2排出実質ゼロを目指すといった基本骨子は変わらないが、今回発表したローリングプラン2022では、EBITを2022年に800億円、2025年は1850億円“以上”と、中期計画目標達成に向けてよりアグレッシブに戦略実行を加速するとしている。

ローリングプラン2022の概要

 ローリングプラン2022のポイントは、環境・社会・ガバナンスを含めたESG戦略を経営戦略の軸に据え、経営目標の達成を目指すと説明。ESG戦略の中身は「社会問題を解決し、サステナブルな人流・商流・物流を創出する」ことで企業価値を創出していくものだが、機会の獲得に向けて、売上の増加、費用の低減、生産性の向上を図る。2030年までの目標として、新規事業の売上高は2019年度比でプラス3000億円、省燃費機材への更新による燃油費削減効果で400億円の低減、生産性の向上による社員一人当たりの売上高は2019年度比で30%のプラスを目指す。

 売上構成については、フルサービスキャリアの今後の伸長は難しいと見ていることから、売上比率をほかの事業で伸ばしていく。具体的には、コロナ禍前ではフルサービスキャリア・貨物・郵便で70%、マイル・ライフ・インフラで30%だったものを、2025年度にはフルサービスキャリア・貨物・郵便で55%、LCC(ZIPAIR、スプリング・ジャパン、ジェットスター・ジャパン)で10%、マイル・ライフ・インフラで35%の構成にし、売上収益を1兆6500億円、EBITを1850億円に伸ばす考えだ。

 機材については、大型機を燃費のよいエアバス A350型機にリプレースしていき、2023年度には国際線仕様のエアバス A350-1000型機も導入する予定。LCCも事業規模拡大のために積極的に新機材を導入するとし、2025年度までにZIPAIRは10機、SPRING JAPANは8機の導入を予定している。

 ESG戦略を推進するにあたり、中核になる2050年のCO2排出量実質ゼロの目標に向けては低燃費機材の導入はもちろんのことであるが、SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な代替航空燃料)の調達にも力を入れているとし、自社やワンワールドの共同調達で目標達成(2030年度に全燃料搭載量の10%)を目指す。

ESG戦略の詳細

 質疑応答では、コロナの感染リスクが今期はどのように影響するのか問われると、赤坂社長は非常に難しいとしながらも、ワクチン接種率の向上、登場が期待されている飲み薬、日本の状況よりも何か月か先を進んでいる欧米の現状を踏まえて「日本を含め、世界的にウィズ・コロナのフェーズに入ったのではないかと想定しています」と返答。需要の戻りについては多少の波はあるかもしれないが、昨年のように大きく波を打つのではなく、「力強く回復していく段階に入っただろうと私は見ております」と所感を述べた。