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NEXCO中日本、高速道路における大雪時の対応策。北陸道・東海北陸道での滞留発生を踏まえ再発防止

2021年1月25日 発表

NEXCO中日本は北陸道・東海北陸道での滞留発生を踏まえた対応策を発表した

 NEXCO中日本(中日本高速道路)は、1月9日~12日に北陸自動車道(E8)と東海北陸自動車道(E41)で発生した車両の大規模滞留への対応を受け、「福井県冬期道路情報連絡室臨時会議」などを踏まえ、当面実施する対応策を取りまとめた。

 1月9日~12日の大雪時には、北陸道で大型車のスタックなどを契機に約1600台の滞留が、東海北陸道では約200台の滞留が発生。災害対策基本法に基づく区間指定を行ない、警察、自衛隊、福井県の協力による物資配布、渋滞末尾からのUターンによる車両救出、除雪作業を実施した。また滞留解消までに長時間を要する見込みとなったことから、県や観光・運輸部局と連携し、一時避難希望者に対してホテルや宿泊所を提供した。

北陸道での車両滞留
東海北陸道での車両滞留

 これらを受け、3つの検証ポイントに基づき、「当面実施する対応策」を取りまとめた。1月中に速やかに実施する。

当面実施する対応策

検証ポイント1:通行止めのタイミングが遅れたこと(滞留車両が多く発生したこと)

<事前広報>
・SNSによる出控えのお願いや通行止めが予想される区間の情報提供を頻度高く行なうことを継続するとともに、図や写真を掲載した情報提供を強化する。

・ラジオの緊急放送枠を活用し、ドライバーだけでなく荷主を意識した協力要請を実施する。

・大雪が予測される場合は、従来の情報提供手段(記者発表、公式Webサイト、ラジオ)に加え、TVCMなども活用する。

・国や気象庁などの関係機関と連携した広報を実施(継続)。

・広域情報版を活用した広域迂回や出控え広報を実施(継続)。

・高速道路の冬期利用に関する注意事項の広報(大雪時の出控え、チェーン携行、冬道安全走行の注意点など)をWebサイト、休憩施設デジタルサイネージなどで実施(継続)。

<通行止め判断>
早期の通行止め判断:
・大雪に対する緊急発表が発表された場合、事故や自力走行不能車両が生じていなくても、路面状況、積雪、降雪予測、周辺道路を含む交通状況などを踏まえ、短期集中的な降雪により安全な交通確保が困難と認められる場合は、速やかに予防的通行止めを行なう。また、これらをタイムラインに反映する(強化)。

・速やかに通行止めを実施できるよう、近隣事務所、支社からの応援を含む機材・人員を事前配備する。また、これらをタイムラインに反映する(強化)。

・予防的通行止めの実施前に、事故、自力走行不能車両などが度々発生した際、車線が確保されていても渋滞長が伸びると予想される場合は、躊躇なく通行止めを実施する(強化)。

・移動の自粛や広域迂回を呼び掛けたうえで、交通状況、降雪状況に応じて、躊躇なく並行する一般国道と同時に通行止めする。なお、同時に通行止めした際には、各道路の開放の優先順位を関係機関で調整し、関係機関における除雪機械を融通して交通の早期確保に努める(新規)。

・複数の道路管理者の調整・判断が必要となる場合など高度な意思決定が伴う場合には上位機関の助言を得ながら協議する仕組み(Web会議)を構築し、速やかに意思決定を行なう(継続)。

・大雪警報などの情報を得た段階で国道事務所に設置された情報連絡本部と連携を図るため、相互リエゾン(連絡員)を配置(継続)。

自力走行不能車両の発生抑制:
・除雪の効率化や自力走行不能車両の救出に備えるため、自力走行不能車両が特に発生しやすい箇所近傍でのトラクターショベルの事前配置(継続)を行なうほか、大型車両も牽引可能な大型レッカー(20t級)を配置している山岳区間以外の必要な箇所に拡大して事前配置する(強化)。

検証ポイント2:滞留状況の正確な把握ができなかったこと

滞留車両の状況を正確に把握:
・大雪が予測される場合は、複数箇所での同時滞留発生を想定し、専任で滞留車両の確認を行なうのに十分な要員で体制を事前に構築(1事務所あたり、5~10人の応援体制を編成)。降雪が強まる前に巡回体制を強化する(強化)。

・配置した人員で滞留車両の確認が十分でないと判断される場合は、総力を結集し事務所、支社へ本社主導によりプッシュ型で迅速に補強人員を応援派遣する(強化)。

・スノーモビルを活用し、滞留状況の確認や支援物資提供を行なう体制を構築する(強化)。

・車線上の必要な箇所に、Webカメラを増設する(強化)。

・IC(インターチェンジ)の接続道路の状況は、関係機関で構成する情報連絡会議を通して積極的に情報収集する(継続)。また、料金所一般道側の交通状況が把握可能なWebカメラを増設する(強化)。

・関係機関の情報連絡室で報告された情報を文字化して共有するなど、確実に確認できる仕組みを構築する(新規)。

・重要情報は、県から市長への通常ルートによる連絡に加え、首長に直接連絡することで早期に共有する(新規)。

・特に広範囲での大雪が予想される場合は、事前にヘリコプターの要請を行ない、滞留状況について確認する。また、衛星通信車を活用し滞留状況や作業状況の共有を図る。さらに、ドローンについても、降雪が弱まり飛行が可能になった際に活用し、滞留状況のみならず除雪作業の状況などの現地の状況も確認する(継続)。

・CCTVカメラ、関係機関との情報交換、現地除雪作業員からの聞き取りなどにより、事故・自力走行不能車両の発生する可能性に関する情報の収集に努める(継続)。

・関係機関の情報連絡室の情報伝達員の役割を徹底し、積極的に情報収集・伝達する(継続)。

・関係機関の情報連絡室の情報伝達員が他の業務に巻き込まれることなく情報収集・伝達に専念できるよう十分な体制とする(継続)。

・関係機関や上位機関が同じ情報を共有する仕組み(Web会議)を構築する(継続)。

知見の蓄積による道路管理能力の向上:
・道路管理能力を高めるため、各高速道路会社相互に雪害対策に関する取り組みや失敗例をはじめとする事象事例を共有し、知見を蓄積する枠組みを速やかに構築する(新規)。

検証ポイント3:滞留車への救助・支援が不十分だったこと

<他機関などへの支援要請>
正確な現場状況把握に基づいた早い段階での応援要請:
・大雪が予測される場合は、複数箇所での同時滞留発生を想定し、専任で滞留車両の確認を行なうのに十分な要員で体制を事前に構築(1事務所あたり5~10人の応援体制を編成)。降雪が強まる前に巡回体制を強化する(強化)。

・現地での支援要請をする場合は、現場で効率的に支援活動ができるよう活動単位ごとに連絡調整責任者を配置する(新規)。

・滞留車の救助・支援に関して、通行止めから3時間を経過した時点で自力走行不能車両を動かせない場合、数百台規模の立ち往生となり、滞留車救助に24時間以上を要すると見込まれるため、迅速に国、県、自衛隊など関係機関に支援要請をおこなう(強化)。

・関係機関との情報連絡室への情報伝達では、滞留・渋滞などの道路情報だけではなく、滞留車両の発生、それらの数・滞留時間・状況、自力走行不能車両の撤去見込み時間などの救出行動に必要な情報を可能な限り共有する(継続)。

<滞留車両への支援実施>
滞留車両の早期退出に向けた対策:
・除雪機械だけでなく、人力による除雪を行なう要員を事前に現場に配置する(強化)。

・滞留時の除雪に有効な小型除雪機械の増車(強化)。

・滞留車の救助・支援に関して、通行止めから3時間を経過した時点で自力走行不能車両を動かせない場合、数百台規模の立ち往生となり、滞留車救助に24時間以上を要すると見込まれるため、迅速に国、県、自衛隊など関係機関に支援要請をおこなう(強化)。

・滞留者の状況把握・救出に際しては、順行に加え逆走・中央分離帯開口部でのUターン処理などを高速道路交通警察隊などと連携して実施する(継続)。

・除雪車両が渋滞に巻き込まれた際に、緊急車両の誘導により迅速な移動ができるよう関係機関とあらかじめ調整する(継続)。

救援物資の応援要請と早期・確実な配布:
・大雪が予測される場合は、複数箇所での同時滞留発生も想定した支援物資の量を事前に準備するとともに、支援物資配布の人員を十分確保する(強化)。

・物資支援、救援、避難支援などの活動にあたり、関係機関により現地対策本部が構築された場合には、現地対策本部に最大限の要員派遣などの対応を行なう(新規)。

・支援物資・配布人員について、対応可能か速やかに判断を行ない、足りない可能性が少しでもある場合は、迅速に国、県など関係機関に支援を要請する(継続)。

滞留車両のドライバーへの情報提供:
・SNSによる情報提供は専任の要員で行ない、頻度高く作業状況や支援状況などを発信する。また、写真や図を掲載した情報提供を行なう(強化)。

・支援物資配布の際、WebサイトやSNSを案内するチラシを配布し、滞留車両のドライバーに情報提供手段を知らせる。モバイル端末を所有していないドライバー向けには、車両や徒歩の可能な手段で接近し、拡声器などで案内する(継続)。

中長期的な対策

・現行ツールのほか、他機関と連携した広報を実施。内容の充実を図り、CMやポスター、デジタルサイネージなどで幅広く周知する。

・通行止めを早期に実施するための対策として、インター出口本線部に簡易な規制装置を整備する。

・正確かつ迅速な現場状況を把握するため、多様なツールを活用した改善方策を検討。

・雪害対策を担う専門人材を配置する。