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東京メトロ、アフターコロナの価値観の変化を見据えた新アプリを披露

2020年8月27日 発表

東京地下鉄 代表取締役社長の山村明義氏(中央)と連携アプリを提供する各社の担当者

 東京メトロ(東京地下鉄)は8月27日、スマートフォン向けのアプリ「東京メトロmy!アプリ」の提供を開始した。同日、都内で発表会を開催し、提供の狙いや今後のロードマップなどを説明した。

新アプリで集中から分散に変化するライフスタイルをサポート

 同社 代表取締役社長の山村明義氏は、「今年3月に東京における大都市型MaaS『my! 東京MaaS』の始動を公表した。この取り組みの一環としてMaaS機能を搭載した新しいアプリを発表する。キーワードは、パーソナライズド、リアルタイム、ネットワークの連続性の追求」だとしたうえで、今回のアプリを活用し、「都内を移動するお客さま一人一人にとって最適な情報をリアルタイムで提供すること、東京メトロの路線だけでなく、タクシーやシェアサイクルなどの多様なモビリティと連携し、ネットワークの連続性をさらに追求する。これにより、お客さまの安心で快適な移動・ビジネス・生活を支え、都市の安心と活力を高めることを目的としてさまざまな取り組みを実施していく」と説明。

東京地下鉄 代表取締役社長の山村明義氏
my! 東京MaaSのコンセプト

 新型コロナウイルスの影響により、「人々は密を避ける、安心な空間の提供ということに価値観が移っていく。言い換えれば、集中から分散にライフスタイル、ワークスタイルの変化が想定される。安心とパーソナライズドを人々の新しい日常として捉え、サポートすることが『東京メトロ my!アプリ』の目指す姿」だと語った。

今後も断続的にサービスを拡張

東京地下鉄 ICT戦略部 課長補佐の石川敦氏

 続いて新アプリの開発を担当した同社 ICT戦略部 課長補佐の石川敦氏が登壇し、アプリの機能を説明した。

 同氏は、リアルタイム運行情報や列車走行位置のデザインを改善したほか、列車内の混雑状況や改札口の混雑状況の実績値の確認機能の対応駅や路線を全駅・全線に拡大したことや、鉄道・バスに加え、タクシーやシェアサイクルを利用した経路検索が可能になったことを披露。

 その後、連携するアプリの提供元となるMobility Technologies(JapanTaxi)、みんなのタクシー(S.RIDE)、ドコモ・バイクシェア、OpenStreet(Hello Cycling)の各社担当者がそれぞれのサービスの特徴を説明した。

 石川氏は、今回のアプリのリリースは第一歩で、今後も断続的にさまざまなサービスを提供していく予定であることを明らかにした。

 2020年度下期に、1駅分歩くことでポイントが貯まるなどする健康増進を演出する「ひと駅○○検索」をドコモ・ヘルスケアや東京海上日動あんしん生命などと組んで提供することや、デジタルクーポンを配信することで、さまざまな移動手段を使って東京を楽しめるようにする取り組みをスタートする計画。

 2021年度下期には、目的地の最寄り駅にエレベーターがない場合、付近のエレベーターがある駅からタクシーで移動することを提案する「エレベータールート検索」の提供を予定しており、その後もマイクロソフトや富士ゼロックスなどと組んで、Outlookに登録したスケジュールの空き時間を踏まえた移動を提案したり、個室型のワークスペースを活用したりすることで、効率的に仕事を進められるようにしていくという。

アプリの統合やサブスクリプション導入の可能性は?

東京メトロで最も新しい駅となる虎ノ門ヒルズ駅の改札前で囲み取材に応じる石川氏

 しかし、今回のアプリをフルに活用するには、連携する各社のアプリを別途インストールする必要があり、利用にあたっては決済方法の登録などをそれぞれのアプリで済ませておく必要がある。

 できれば1つのアプリで完結して欲しいところだが、これについて石川氏は「社内でも議論はあったが、東京という特性を考えると、地下鉄以外にも多様な移動手段が共存しており、タクシーでも今回の2社、シェアサイクルでも今回の2社以外にいっぱいあるというなかで、1つのアプリにすべてを取り込むのは無理がある。開発のスピード感や費用面でも負担が軽い。彼らは彼らでいろんな取り組みをやって努力されており、バトンタッチして各社のアプリに渡していく形の方が相乗効果が高いと考えている。今後、場合によっては1つにまとめる展開もあるかもしれない」とする。

 また、サブスクリプション(定額制)の導入については、「社内で議論しているが、まずはサービスを繋ぐことから始めようということが第一歩。今後、やる可能性はあるにはあるが、まだちょっと先かな、といったところ」としている。