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世界の“MANGA”が東京凱旋。「MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」会場レポート。国立新美術館で11月3日まで
「君の名は。」「シン・ゴジラ」などを通じて東京に触れる
2020年8月13日 17:00
- 2020年8月12日~11月3日 開催
文化庁、日本芸術文化振興会、国立新美術館が主催する「MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」が、国立新美術館 企画展示室1Eを会場に始まった。
この展覧会は2018年にフランス・パリで開催され、3万人超が訪れた「MANGA⇔TOKYO」の凱旋企画となるが、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため開催が延期されていた。会期は11月3日まで。混雑緩和のため事前予約制となっている。
MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020
会期: 2020年8月12日~11月3日
休館日: 火曜 ※9月22日、11月3日は開館、9月23日は休館
開館時間: 10時~18時(入場は閉館の30分前まで)
観覧料: 一般1600円、大学生1200円、高校生800円(中学生以下は無料)
会場: 国立新美術館 企画展示室1E(@@maplink|東京都港区六本木7-22-2|東京都港区六本木7-22-2)
※混雑緩和のため事前予約制
Webサイト: MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020
「MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」はマンガ・アニメ・ゲーム・特撮の4分野を扱ったもので、この分野を横断的に展示するのは国立の美術館では初の試みとなる。表題の「MANGA」は、マンガ・アニメ・ゲーム・特撮を総称したものだ。この4分野の作品で、巨大都市である東京はさまざまなシーンで登場する。
災害や戦争で荒廃し、その後は劇的な復興で繁栄していく姿や、時代時代での流行、人々の営みなどを、セレクトされた90タイトル以上から原画や制作資料、歴史資料や巨大な東京の都市模型によって紹介している。作品の虚構と実際の現実、その相互関係だけでなく、現実の都市が虚構の影響を受けて変化していく様相も見どころとなっている。
会場に入ると、マスコットキャラクターである「ヨリコ」と「ヴィッピー」が描かれた看板がお出迎え。ヨリコは展示会スタッフ/コミュニケーター役としての職務を持ち、展示ポスターではさまざまなキャラクターのコスプレで代理を務める。ヴィッピーはVIPの来場者として、ヨリコに質問を投げかける役割となっている。
会場は中央に1/1000の巨大な東京都市模型が配置され、その周囲をセクションごとに作品やそれにまつわる解説を展示している。まずはイントロダクションとなる東京都市模型。東京の山手線エリアを中心に再現した都市模型は圧倒的な大きさで、その後ろにある巨大なスクリーンには空から見た東京のリアルな姿や「AKIRA」「シン・ゴジラ」など、東京を舞台にしたシーンが上映されている。
都市模型の手前にある展示では、東京の幹線道路網の一部を再現した作品として「グランツーリスモ 6」、東京の鉄道網を山手線の運転手として体験できる「電車でGO!FINAL」、東京の複数の副都心を舞台にした「ガンスリンガー ストラトス」シリーズを取り上げている。また、河川が多いことから橋が多い景観にも着目し、東京を特徴づける橋が次々と劇中で破壊される「機動警察パトレイバー2 the Movie」が紹介されている。
セクションは「破壊と復興の反復」「東京の日常」「キャラクター vs. 都市」の3テーマに分けられている。「破壊と復興の反復」では、大震災や大火、空襲によって破壊されるが瞬く間に復興し、繁栄を遂げる東京。その新たな姿を描いた作品も数多く、ここでは現実の都市の歴史や未来像、そしてフィクションとの関係を取り上げている。
アニメでは「AKIRA」「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」「人狼 JIN-ROH」「千年女優」「火要鎮」が、特撮では「ゴジラ」の歴代作品や最新の「シン・ゴジラ」「帝都物語」などが紹介されている。歴史参考資料としては「浅草公園凌雲閣之図」「帝都大震火災系統地図」などが展示されている。
2番目のセクションでは「東京の日常」を、時代ともに移り変わりる東京の人々の暮らしぶりを紹介している。古くは江戸時代までさかのぼり、「江戸名所 吉原桜之図」「東都名所 日本橋行列図」を展示し、遊郭や街並みを分かりやすく解説。その時代背景や景観を取り入れたゲームとして、ファミコンの「がんばれゴエモン2」が展示されているのもなかなか興味深い。
近代化の波が押し寄せた19世紀後半・明治時代も東京はさまざまな形に街の色を変えていった。「東京の日常II」では「近代化の幕開けからポストモダン都市まで」と表題を掲げ、新しい生活様式や文化、景観の移り変わりを細かく描いたマンガ作品「るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-」を紹介している。
大正時代になると女性解放運動が盛んになり、社会で活躍する女性が増え、袴に革靴という和洋折衷なスタイルが人気になる。これを描いた作品としてはセガサターンのゲームである「サクラ大戦」を展示していた。そのほか、高度成長期時代を背景としたマンガ「あしたのジョー」、バブル時代の新宿が舞台の「シティハンター」など、時代を映す鏡として多くの作品が飾られている。
「東京の日常III」では、20世紀末から現在に至るまでを描写した作品を紹介している。経済は低迷期に入り、きらびやかな大都市を演出するのではなく、日常の生活に根差した東京の今ある場所を克明に描いた作品が多く登場していることがここでは語られている。国立新美術館が登場するアニメ「君の名は。」や、秋葉原が舞台となるXbox 360のゲーム「STEINS; GATE」、日常の小さな幸福が描かれたマンガ「孤独のグルメ」など、最近の作品が数多く紹介されているので、自分がひいきにしている作品の新しい魅力に気付くかもしれない。
展示の最後にあるセクション「キャラクター vs. 都市」では、フィクションのなかに登場していたキャラクターが現実の世界に召喚され、その知名度を武器に活躍している事例が紹介されている。企業や公共機関、自治体などの広報活動を行なう姿であったり、特定の場所と登場シーンが関連付けられることで「聖地」となり、観光資源として注目スポットになっているケースを地図とともに展示している。また、東京国際展示場で夏と冬に開催されるマンガ・アニメ・ゲームの同人誌即売会「コミックマーケット」についても紹介されている。
新型コロナウイルス感染症拡大防止のため開催が遅れたが、入場の事前予約、入口での検温、マスク着用を行なうなど対策を徹底することで実施される運びとなった。作品に登場するその時代の東京の街並みや文化、空想上の別世界の東京の姿、作品の息吹が感じられる今の東京など、マンガ・アニメ・ゲーム・特撮から多くの東京を感じとれる展示会になっている。それを可能にしているのは作品のクオリティの高さであり、それを見るだけでも楽しい内容であるのは間違いない。