ニュース
3つの単語で正確に住所を表示する「what3words」説明会。「建物の入り口や駐車場のマスも表現できる」とジョーンズCMO
メルセデスのナビやドミノ・ピザのデリバリーに採用
2018年11月27日 17:49
- 2018年11月21日 実施
世界中の位置情報をたった3単語で表わし、正確に指定できるシステム「what3words」のCMO ジャイルズ・リース・ジョーンズ氏が来日し、本システムについてのセミナーを11月21日に開催した。
「what3words」は世界全体を約57兆個の3×3m四方のマスに区切り、一つ一つに異なる3単語「3ワードアドレス」を当てはめ永久固定、ピンポイントで場所を正確に表示、伝達できるシステムだ。単語は固定されるため、アップデート不要でオフライン利用も可能。住所のある場所はもちろん、ない場所においても信頼性の高いアドレスとして利用ができる。現在日本語を含めた26言語に対応し、今後も増える予定だ。
CMOのジャイルズ・リース・ジョーンズ氏はプレゼンテーションで、「what3words」は住所がうまく設定されず機能していないというグローバルな問題を解決すると強調。具体的な例として、現在のマップ機能では行き先にはピンが1本立つだけであり、建物の実際のエントランスや搬入口は行ってみないと分からないが、同システムならばきちんと行くべき場所が表示でき、効率よく辿り着けると話した。
また、自然災害などで既存の住所が使えなくなった場合にも応用できるとし、特に事業を行なううえでは不正確な住所は非効率で高いコストがかかり、さらに危険であると語った。
緊急時に警察や救急に現在地を伝える場合はもちろん、身近な例として訪問する会社に効率よく辿り着けなかったり、花見会場で友人との合流に手間取ったり……。現在はAIの発達で音声検索が容易になったが理解しないことなども。前述のような問題を解決し、すべての人々が利用できるグローバルでシンプルなアドレッシングに対するニーズがあるとし、実際GPSのコーディングがそれにあたると話した。
そもそも、共同創業者兼CEOのクリス・シェルドリック氏がイベントのオーガナイザーを務めたときに、機材が指定場所に届かなかったり、出演者やゲストが会場にたどり着くのに時間がかかったりしたことがシステム開発のきっかけだという。住所がないような会場でもきちんと届くよう、18桁のGPS座標軸を伝えたが難しい。そんなとき目の前にあったマップと辞書を見て、数字を操作し3つの単語で世界中が住所として表わせることに気付いたという。
つまり「what3words」は、GPSの座標軸を分かりやすくシンプルに、ユーザーフレンドリーな形で使えるシステムなのだ。そのため、駐車場の車庫エリア一つ一つを指定したり、大きな会場の複数の入り口一つ一つを表わしたり、指定したりすることも可能となる。
そして4億もの住所のないエリアに3単語からなる「3ワードアドレス」で住所を割り当て、保健医療へのアクセスに投票など社会との関わりをもたせ、発展途上国のサポートもできるという。
現在世界175か国、1000以上の企業が同システムを採用。具体的な導入例としてパートナーであるメルセデスベンツが世界初の「what3words」音声入力ナビを装備した車種を先日発売したことを紹介。また、IBMワトソンの無人自動車での利用やドローンを使った配達、ピザのデリバリーなどでも活用。さらに国連や赤十字などでも採用されているとのことだ。
なお、収益モデルとしてはソフトウェアのライセンシーが基本。ただし、人道的な活動や緊急性を有する場合などは無償での提供となる。
「what3words」は住所表示、住所指定のグローバルスタンダードのシステムを目指しており、利用者が問題に直面する場面を軽減し、効率化、安全な社会を提供することがミッションだという。
3Dの導入もグローバルで検討中。日本語版は2万5000語から組み合わせ
セミナーの後半にCMOのジャイルズ・リース・ジョーンズ氏へのインタビューを実施。3Dの検討や日本語対応時の取り組み、今後の展開について伺った。
――世界を57兆個の正方形に分割し、3単語で表現とのことですが、言葉が被ることはないのでしょうか?
ジョーンズ氏:英語の場合は約4万語の単語を使用しています。4万×4万×4万=64兆ですので57兆は十分にカバーできます。日本の場合は30名の言語学者や関係者に協力いただき一つ一つの単語をチェックし2万5000語を使っています。
なるべく短く、一般的で、覚えやすいという3点を考慮して言葉を選び、失礼な言葉や利用される文化圏でNGな単語は外されます。また、似た発音の場合はできるかぎり地理的な距離を離し、ユーザーが気付くようにしています。アメリカで待ち合わせなのに、オーストラリアが指定されるのは変ですよね。エラー防止装置がビルトインされている唯一のものだと考えております。
対応言語が多いのも、どの場所にいても自分たちの使ういつもの言葉で入力したほうがよいと思うからこそです。いつでも自分の言葉で音声入力ができますし、初めての場所でも自分の言葉で探せるのは利便性が高いでしょう。
――現在は2Dでのレイヤー表示ですが、3D表示は今後検討していますか?
ジョーンズ氏:今言えることはグローバルに3Dを検討中ということだけです。なお、「what3words」は現在使われているアドレスに取って代わろうとは考えていません。「what3words」は場所を正確に、具体的にどこなのかを示すシステムです。私どものシステムは3つの単語を入れて「ここ!」とポイントアウトすることが目的です。目的地までのナビゲーションをするものではありません。
ビルの場所は既存のシステムを使えば分かります。でもいざたどり着いたとき、入り口を探してウロウロして5分無駄にしていまうかもしれません。その無駄な5分をなくし、効率よくたどり着くためのものと言えば分かりやすいと思います。
実際に「Google Maps」や「Uber」などと連動できますので、既存のマップとともに使いそれぞれが補完し合えます。ただ、「what3words」は住所のない場所では住所となりうるものだとも言えます。
――狭い範囲でピンポイントで指定するからこその利便性なのですね。
ジョーンズ氏:まさにそのとおりです。実際に厳密に住所が設定されているロンドンで2名の配達員に20個の荷物を渡し1人には「what3words」を使い3ワードアドレスで配達を。もう1人にはストリートアドレスを伝え、何を使ってもいいことに。すると「what3words」を利用したほうが30%、3時間早く配達を終えることができました。渋滞も作らず、効率的に、自動車も動き回らないので環境にも優しいとも言えます。日本ではお花見など広い公園での待ち合わせでも活用できるのでは!?
――今後の展開・展望などを教えてください。
ジョーンズ氏:私たちが焦点を当てたいのはクルマ関連とモビリティ。そして宅配と物流です。というのも「what3words」の利用でより効率化が図れるからです。もう一つはトラベルです。ガイドブックにホテルやエリアの既存アドレスと3ワードアドレスの2つを表記するなど、すでに活用がスタートしています。
日本での展開ですが、現在、クルマにトラベル、スペースにマッピングとさまざまな業界の皆さまとお話させていただいています。今回、Sony Innovation Fundより資金調達が行なえ本当にワクワクしています。日本市場には非常に期待しております。私たちは多くの方々に3ワードアドレスを使っていただき、収益を出すと同時に人道的なものとバランスをとりながら、ビジネスをこれからも進めていきます。