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JAL、小学生が空港で“ロクロ”を回す「伊万里焼ロクロ・絵付け体験 in 福岡空港」実施

「包括連携協定」を結ぶ佐賀県伊万里市との取り組み

2018年8月22日 実施

「伊万里焼ロクロ・絵付け体験 in 福岡空港」を開催

 JAL(日本航空)は8月22日、福岡空港で「伊万里焼ロクロ・絵付け体験 in 福岡空港」を開催した。

 JALと佐賀県伊万里市は、2017年5月26日に「包括連携協定」を締結しており、その一環として地域活性化プロジェクト「新・JAPAN PROJECT 伊万里」を展開したり、福岡空港JALカウンター前で伊万里焼風鈴を展示したりと伊万里市のPR活動を行なっている(関連記事「JAL、佐賀県伊万里市との包括連携協定を締結、6月から『新・JAPAN PROJECT 伊万里』を始動」)。

 2018年は、初の試みとして福岡空港内のBLUE SKYで風鈴の販売を開始したほか、JALダイヤモンド・プレミアラウンジ、サクララウンジでも磁器を展示している。

 この日行なわれた「伊万里焼ロクロ・絵付け体験教室」は、「実際に『触れる』ことで伊万里焼の魅力をさらに感じていただきたい」という思いから、小学生を対象に実施したもの。伊万里市より6名の伝統工芸士を招き、午前と午後の部に分かれて合計20組の小学生と保護者が体験教室に参加した。筆者は午前の部を取材したのでレポートする。

空港内にあるJAL 福岡空港支店を伊万里焼体験の会場に

会場となったのはJAL 福岡空港支店の会議室

 伊万里焼ロクロ・絵付け体験教室の会場となったのは、JAL 福岡空港支店の会議室。部屋の後方には、5台の電動ロクロが準備されており、床はブルーシートで覆われていた。体験教室は全行程を2時間とし、ロクロの作業と絵付けの作業を1時間ずつ交代で行なう。10組の親子が半分に分かれて伝統工芸士のサポートのもと、素焼きの皿に好きな絵柄を描いたり、ロクロを回したりしながら食器を作り上げていった。

日本航空株式会社 福岡空港支店グランドスタッフの豊村愛里氏が午前の部の司会を務めた
伊万里市より、伊万里市長の深浦弘信氏(右)、講師として鍋島藩窯の市川光山氏(左)、さらに5名の伝統工芸士が小学生を指導した

 伊万里市出身のJAL 福岡空港支店グランドスタッフの豊村愛里氏の司会により、開会式がスタート。

 冒頭にJAL 九州・山口地区支配人の溝之上正充氏より「皆さん宿題は終わりましたか? 保護者の皆さま、本日はお集まりいただきましてありがとうございます。2017年より、伊万里市さまとは連携協定を結ばさせていただいているのですが、チェックインカウンター前やラウンジでは伊万里焼を展示していたり、JALUXでは販売もしていたりと、いろいろな展開をしていっているところで、今日の体験教室もその一つです。なかなか体験する機会も少ないかと思いますので、保護者の皆さまもお子さまと一緒に楽しんでいってください」とあいさつ。

日本航空株式会社 九州・山口地区支配人 溝之上正充氏
伊万里市長 深浦弘信氏
開会式の最後に伊万里市のイメージムービーを放映

 続いて、伊万里市長の深浦弘信氏より「日本航空の皆さま、今日までご手配いただきましてありがとうございます。そして小学生の皆さん、保護者の皆さん、今日は伊万里焼のロクロと、絵付け体験にお集まりいただきましてありがとうございます。小学生の皆さん伊万里、知ってます? 首を振っていますね(笑)。今日は覚えて帰ってくださいね。今日は国の認定を受けた伊万里焼の伝統工芸士の皆さんに来ていただき教えてくれます。ぜひ世界にひとつだけの伊万里焼を作ってください」とコメントした。

 作業に移る前に、伝統工芸士の紹介があった。鍋島藩窯の市川光山氏、青木妙子氏、副田弘貴氏、梶原真理江氏、鴨川早苗氏、中島文子氏の6名が小学生を指導していく。5組はそのまま机に残り絵付けを、もう5組は会議室後方のロクロへ移動。1時間ほどで場所を交代し、絵付けとロクロの両方を体験する。

いよいよ体験スタート。絵付けは下書き、ロクロは「土こね」から

作業開始にあたり市川光山氏が説明

 参加者たちは、それぞれのスペースに振り分けられ、ロクロ・絵付け体験がスタート。絵付けは、900℃で焼き上げられた素焼きの陶器の皿に、シャープペンで下絵を描き、呉須(ごす)と呼ばれる酸化コバルトが原料の顔料で絵付けを行ない、一度、市川氏の窯で預かり1300℃で焼きを入れ、最終的に磁器となって完成したものが参加者の自宅に届くという流れ。市川氏から「この呉須という顔料は、イラクからシルクロードを通って中国まで伝わりました」と説明があったが、少々大人向けの内容だったかもしれない。

市川氏とともに講師を務める伝統工芸士が丁寧に指導
シャープペンで下書き
呉須と呼ばれる青緑色の顔料。水で薄めつつ濃淡を調整するため、濃い主線から書いていく
筆だけでなく、ボカシの部分は綿棒などを使っている小学生もいた
呉須は濃淡のバリエーションが豊富に用意されていた
絵付けが終わったものは焼き上げられ小学生の手元に届く。焼き上がりが空気の層が無くなることで1割ほど縮むとのこと

 ロクロは、天草産の磁器専用の粘土を切り出し、空気を抜く「土こね」という作業からスタート。その後、ロクロ台に乗せて回転スイッチをオン。最終的な器の形状にもよるが、最初に円筒状に引き伸ばしてから指などを使い、皿や湯呑みなどの回転体を完成させる。

 この日作ったものは記念のプレゼントとして、そのまま持ち帰ることができたが、地肌の処理はされず、そのまま自宅での自然乾燥による硬化を待つのみ、ということであくまで工作の範疇とのこと。しかし、自分の指から出来上がっていく器の様子に、親子で興奮する姿が多く見られた。また、それぞれの作業場が交代するタイミングで保護者がチャレンジする姿もあった。

5台のロクロが用意されていた
粘土をこねて空気を抜く「土こね」。「菊練り」とも呼ばれる
土こねが終わるとロクロに乗せられる。縦方向に伸ばすように形を整える
ロクロを回し、手に水をつけながら表面を整える
中心部に指を差し込み皿の形に広げていく
さらに広げていくとお椀の形状に近付いていく
下部にくぼみをつけて、ほぼお椀の形になった。最後は糸を引いて切り取る
さっそく小学生たちもチャレンジ開始。ロクロを回しながら途中で形状を変えたりしてドンドン出来上がりの姿が変わっていく
最後に糸を引いて切り取り、底面を作れば完成

JALラウンジでは伊万里焼の風鈴が涼し気な音色を奏でる

福岡空港内にあるJALダイヤモンド・プレミアラウンジ

 福岡空港には、ダイヤモンド・プレミアラウンジとサクララウンジが併設されているが、どちらにも伊万里焼の風鈴が展示されており、特にダイヤモンド・プレミアラウンジは、受付カウンター脇から長い廊下に進む途中に風鈴が設置されており、人が通る際に起こる風によって、順に音色を奏でるという風流な仕掛けがなされている。

 また、総合の受付カウンターには、JALのロゴマーク入りの特注ペンホルダーが設置されており、利用客から販売の問い合わせが多いとのこと。

JALの鶴丸マークが入ったペンホルダー。伊万里市大河内町にある太一郎窯製
サクララウンジの八女提灯が飾られている脇に風鈴が吊り下げられている
ダイヤモンド・プレミアラウンジの通路の両端に色とりどりの風鈴が吊り下げられており、利用客が通る際に起こる風で涼し気な音色が鳴る仕組み

 国内線のチェックインカウンター前には、「伊万里大川内山風鈴まつり」の開催時期(2018年は6月16日~8月31日)に合わせて、風鈴の櫓が出現し、人気投票などが行なわれている。こちらは2016年より毎年設置されている。

国内線チェックインカウンター前に設置された風鈴櫓。2016年より「伊万里大川内山風鈴まつり」の開催時期に合わせて登場する
伊万里有田焼伝統工芸士会の皆さん