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タイ王国 観光・スポーツ省大臣 ウィーラサック・コースラット氏に聞く。「リピーターには新しい地方、アクティビティに挑戦してほしい」

2018年5月12日 実施

タイ王国 観光・スポーツ大臣 ウィーラサック・コースラット氏

 在東京タイ王国大使館が主催する「第19回タイ・フェスティバル2018」が5月12日~13日の2日間、東京・代々木公園で開催された(関連記事「見て食べてタイを楽しむ『第19回タイ・フェスティバル2018』開幕。東京は5月12日~13日」)。

 タイ本国からは観光・スポーツ大臣のウィーラサック・コースラット氏が来日しており、タイ国政府観光庁ブース内でインタビューに応じた。

──今回の大臣の任期にあたって、どのような観光施策を進めていきますか。

コースラット氏:まずテーマとして申し上げたいのは、「微笑みの国」の微笑みの部分。これは受け入れる側の微笑みであり、訪れるゲストの微笑みです。つまり、収入や人数がどれくらい増えたか、というより満足度を重視しています。

 観光が経済発展のための道具に過ぎないという考えは間違っていると思います。社会ではさまざまな誤解や理解不足が生まれますが、むしろ、それを解決できるのが観光だと考えています。

 2017年はタイに3500万人の観光客を迎えましたが、一人一人が観光大使となって、「タイは素晴らしかった」と自分の国で語ってくれます。これこそが観光の力です。ですので、こうしたお祭り(タイ・フェスティバル)に日本の方が訪れてタイを知ってくれるのは、タイにとって素晴らしいこと、国益になることだと信じています。そして日本人との交流を通じて、日本人の秩序正しさ、清潔好きなところ、礼儀正しいところなど、日本人のよいところをタイは吸収できると思います。

 これから課題だと思っているのは、東京や大阪などの大都市だけでなく、地方からもタイに来てもらうことです。また統計によると、タイを訪れる日本人観光客の8割がリピーターだと聞いています。タイの新しい地方や新しいアクティビティにどんどんチャレンジしてほしいと思っていますし、タイの奥地に入っていってほしいと考えています。

 バンコクやチェンマイといった15ほどの拠点は、メインデスティネーションとしてもう皆さんに知られていますが、こうした主要な都市でも知られていないアクティビティがたくさんありますし、古い生活文化が色濃く残るコミュニティもあります。

 地方都市としてはまだ55ほど、紹介したい地域があります。面白いところでは、「マングローブの銀行」や「蟹の銀行」という社会的な取り組みが挙げられます。蟹の例でいうと、メスを養殖して卵をふ化させて、袋の中に小さい蟹がたくさん入ったものを観光客に渡して、川に放流してもらうのです。こうすることでコミュニティの人の役にも立ちますし、観光客も体験できて、自然環境にもよい影響があるわけです。もちろん、育った蟹はそのコミュニティで食べることができます。

 今までの観光ルート、例えばレストランで食事をするというだけでなく、それがどのように作られているかという裏事情まで知ってもらえればと考えているのです。

 スポーツ観戦が好きな方には、ブリーラム県でMotoGPという大きなバイクレースの大会があります。ちなみにブリーラム県には(サーキットなどの)スポーツ施設のほかに、1000年を超えるアンコールワットよりも古いクメール遺跡があります。パノムルン遺跡というもので、アンコールワットのモデルにもなったと言われています。

 11月の乾季になると、南部のパンガー県で大きな自転車レースがあり、これには皆さんにも参加していただけます。フランスのレース(ツール・ド・フランス)にも準じる大きな大会です。ホアヒン(プラチュアッブキリカン県)で人気があるのは、ヨットで引っ張ってもらうカイトサーフィンで、強すぎないよい風が吹くそうです。もう少し参加しやすいものとしては、マラソンやジョギング大会、サイクリング大会があり、各地で年間600回も開かれています。こうしたものに参加・体験することで、これまで知られていなかったタイの一面に触れることができます。

インタビューに答えるウィーラサック・コースラット氏

──タイ・フェスティバルを通じてどのように送客につなげますか。

コースラット氏:タイ・フェスティバルはショーケースとして、タイに行く前にお試しでタイを体験できる場だと考えています。食べ物がたくさんありますし、果物も多くあります。工芸品も試すことができます。ですが、果物についていえば、タイで果樹園に行ってほしいのです。タイの果樹園で苗木を植えてもらったり、花の時点で予約したりして、実が育ったら取りにくるということもできます。

 タイ・フェスティバルの方針としては、皆さんが買うだけでなく、ブースの中に入って体験してもらうということに力を入れていくつもりです。タイの地方都市からもブースを出してほしいと考えていますし、実際にタイ南部からブースが出ていますが、こうしたところはマレー文化が混ざっていて、魅力的です。

 また、タイ国政府観光庁のブースでは、タイ北部の秘境といわれるプレー県とナーン県の魅力をお伝えしています。ステージでは伝統舞踊を披露していますが、これもタイの地方の魅力を伝えるものです。

 タイ・フェスティバルは東京や大阪や名古屋でも開催しますが、今後福岡などでも開催できればと考えています。

──日本市場で何を目指していますか?

コースラット氏:特に若い世代にもっとタイを訪れてほしいと考えています。今回のブースのテーマにもなっていますが、タイの生活文化など多様性に触れてほしいと思います(関連記事「タイ国政府観光庁、タイの多様性を掘り起こす2018年のマーケティング戦略『Open to the New Shades』を説明」)。

 もう1つのターゲットは女性です。このタイ・フェスティバルに2つの工芸(藍染めと切り紙飾りのワークショップ)を持ってきましたが、女性はこういったことに非常に興味を持つと思います。この紙飾りは寺院で使われるものですが、そういった装飾品や布製品に注目してほしいです。

 また、日中の暑いときの観光だけでなく、日没後の楽しみ方についてももっと積極的に情報を提供します。そして国全体でユニバーサルデザイン/バリアフリー化を進めて、スーツケースを転がしている際も、車椅子に乗ったままでも観光しやすいようにしていきます。