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JAL、オーストラリア・メルボルン~成田線就航セレモニーをメルボルン空港でも実施

開設に携わったJALメルボルン空港担当責任者にインタビュー

2017年9月1日 就航

2017年9月2日 セレモニー実施

JALは成田~オーストラリア・メルボルン線就航記念セレモニーを、成田空港に続いてメルボルン空港でも実施した

 9月1日、JAL(日本航空)は成田~オーストラリア・メルボルン線を就航した。成田空港での就航セレモニーの様子は既報のとおりだが、9月2日にはその復路となるメルボルン空港発の初便セレモニーが開催された。

 セレモニーではJAL 会長の大西賢氏らが挨拶に立ち、成田空港をハブ空港として、世界各国や日本国内への乗り継ぎの利便性が向上することをアピールした。

 また、メルボルン空港に常駐するJALの責任者である安光晋作氏にインタビューし、メルボルン線開設の意義やメルボルンの魅力について伺った。

セレモニー会場となった搭乗口前では琴の演奏も行なわれた
JALの成田~メルボルン線

JL773便:成田(10時30分)発~メルボルン(21時55分)着 ※毎日運航、10月1日からは22時55分にメルボルン着
JL774便:メルボルン(00時05分)発~成田(09時05分)着 ※毎日運航、10月2日からは00時35分にメルボルン発、08時35分に成田着

“和敬清寂”のJALで「機内に一歩踏み入れたとたんに日本を経験」

メルボルン空港の搭乗口の様子

 成田空港を出発した初便が9月1日22時ごろにメルボルン空港に到着し、およそ2時間後の9月2日0時5分にメルボルン発の初便が出発する。その到着から出発までの時間に、メルボルン~成田路線の就航セレモニーが行なわれた。

日本航空株式会社 取締役会長 大西賢氏

 セレモニーでは、これからJL774便に搭乗して日本に戻るというJAL 取締役会長の大西賢氏が登壇。メルボルンで世界的なスポーツイベントが数多く開かれていることを引き合いに「私自身マラソンも走りますし、学生時代はラグビーをやっておりました。F1も大好きです。全豪オープンテニスもぜひ見てみたい。メルボルンは私にとって魅力満載の街。多くの日本人にとってもそう感じていただける都市ではないか」と述べた。

 さらに使用機材のボーイング 787-8型機で採用している、ピッチの広い「新・間隔エコノミー」の「JAL SKY WIDER II」について、「オーストラリアの皆さま、たいへん体格のよい人がいっぱいいらっしゃいますけども、くつろいでエコノミークラスシートにお座りいただけるものと思います」と話すと、会場にいた現地の人たちから笑いが起こった。

 日本のハブ空港である成田着の便であることについては、「欧州、アメリカ、東南アジアだけではなく、日本国内に乗り継ぎが至便になります」とし、メルボルンから世界へのアクセスが一段と向上することをアピールした。

在メルボルン日本国総領事館 総領事 松永一義氏

 次に英語でスピーチした在メルボルン日本国総領事館 総領事の松永一義氏は、「私自身IT系出身で、ソーシャルメディアやiPhone、iPadなどのテクノロジーが大好き。家内と過ごす時間よりもiPadと過ごす時間のほうが長いことを認めなければいけません」と笑いを誘った。

 そして「iPadを使えば世界中の人たちにアクセス(コミュニケーション)できます。バーチャルコミュニケーションは確かに便利ですが、直接人と人とがつながる本物の交流に勝るものはありません。日豪間の揺るぎない関係は、個人レベルでの人と人とのつながりなくしてはありえません」と語った。

 また、松永一義氏は茶道をたしなむことから、茶道の心得である「和敬清寂」にJALの特徴を当てはめて解説した。「和」は「ハーモニー」であり、JALのCA(客室乗務員)の親しみやすい笑顔と、美味しい食事、乗客が快適に感じる雰囲気を通じてこれを実現しているとした。

「敬」はJALが乗客を大切にもてなすこと、「清」は機内の清潔感や、その清潔感を保つための掃除に手を抜かない厳しい姿勢、「寂」は悪天候でも快適に過ごせるサービスがそれぞれ連想される、とコメント。

 こうしたJALの「和敬清寂」により、「機内に一歩踏み入れたとたんに日本を経験することができる」とし、路線開設をきっかけに「ビクトリア州と日本の交流がさらに深まり、多くの分野での活動が活発になれば」と結んだ。

メルボルン空港 CEO ライエル・ストランビ氏
ライエル・ストランビ氏と握手をかわす大西賢氏
最後にオーストラリア ビクトリア州政府のナイジェル・アルドンス氏も挨拶した

 メルボルン空港 CEOのライエル・ストランビ(Lyell Strambi)氏も挨拶し、「メルボルンの路線が増えれば、ビクトリア州からの旅行者もまた、世界への距離が近くなる。そして我々の街をビジターの皆さんによく知っていただける機会も提供できる」と、JALの新規路線就航を歓迎した。

「24時間、昼夜いつでも飛行が可能なのはメルボルン空港ならでは。伸び続ける市場の需要に応じて、お客さまの要望する時間帯に運航できる」とメルボルン空港のアドバンテージを解説。JALに「今後も路線をどんどん増やしてほしい」と注文した。

初便を運航するスタッフ
セレモニーが終了し、搭乗手続きが始まった
出発を待つJL774便、ボーイング 787-8型機
横断幕を掲げて初便を見送る
搭乗橋が外され、離陸へと向かっていった

「シドニー路線とは組み合わせ方で利便性が増す」JALメルボルン空港責任者の安光氏

日本航空株式会社 オーストラリア・ニュージーランド地区 ビクトリア・南オーストラリア・タスマニア州統括 安光晋作氏

 JALの安光晋作氏は、今回のメルボルン線開設の準備から関わり、5月にメルボルンへと仕事と生活の拠点を移した。ビクトリア州やタスマニア州といった南オーストラリア地域を統括する部門で、メルボルン空港に関する責任者を務める。

 現在はスタッフ10名体制とし、メルボルン空港内のオフィスで業務に当たっている。新規路線が就航して2日目、開設の狙いと意義、現在の予約状況、メルボルンの魅力や今後の展開などについて伺った。

──メルボルン線開設の経緯と狙いは?

安光晋作氏:ご存じのとおり、豪州発の路線の需要は底堅い。JAEPA(日豪経済連携協定)が2015年に発効されたことによるビジネス面での変化があったのと、オーストラリア人の日本観光の需要が着実に伸びていることもあります。

 年間の渡航者は、日本からオーストラリアへは40万人ちょっと、オーストラリアから日本へは45万人ちょっとですが、双方ともに2017年は対前年を上回る勢いで推移しています。ポテンシャルのあるマーケットであり、路線、地区でもあると認識しています。2年前からシドニーの次の都市はどこか、というのを研究していて、業務、観光の要素でメルボルンは非常に理にかなった地域であると考えました。

──既存の成田~シドニー線との役割分担は?

安光氏:シドニー線も活かしつつ、メルボルン線もうまく運営していくにはどうしていくのか、というのはダイヤに一番反映されています。シドニー線は日本発が夜便、シドニー発が朝便ですが、メルボルン線は日本発が朝便、メルボルン発が夜便となっています。

 これを組み合わせることによって、例えばバリバリのビジネスマンなら日本からシドニーに朝入って、ガッツリ仕事をする。メルボルンに移り、昼間仕事したあとに夜の便で帰る。そうすると、往復0泊で移動することもできます(笑)。

 レジャーに目を移すと、シニア層の需要は強い。金銭的にも余裕があるので、旅行でビジネスクラスを使われる方もいらっしゃいます。しかし身体の負担を考えると、行きも帰りも昼間便での移動にしたい。メルボルンに入って何日か滞在したあと、帰りはシドニーからの便にすると、行きも帰りも昼間の便になります。他社は夜便での移動が多いなか、JAL便だとこうした選択肢ができるということで、バリエーションのある路線販売ができるのではないかと思っています。

 シドニー空港は乗り継ぎが面倒なところがあります。ターミナル間をバスで移動しなければならず、巡回頻度も15分か20分に1回。乗り遅れる場合もあるので、長めの乗り継ぎ時間を想定して予定を組む人も多いようです。そういう点で、メルボルンに住んでいる人からすると、シドニー乗り換えは行きも帰りも負担が大きいと感じていたようです。

 対して、メルボルンの夜出発の便を使う場合は、どの都市からもメルボルンに来やすい。(日本から)アデレードやタスマニアへ行く場合、行きはシドニーから乗り継いで、帰りはアデレードやタスマニアを夜出発してメルボルン経由で帰ることができます。こうなると、我々としては今まで提供できていなかったマーケットに対して訴求していけるという意味で、非常にメリットがあると思います。

メルボルン空港の国際線出発カウンター付近の様子。21時過ぎだが、混雑はピークを迎えていた

──メルボルン発の便では成田から各地に乗り継ぎやすい。これについてオーストラリアの人たちはどう捉えているのか。

安光氏:オーストラリアは島国なので、どこに行くにも十数時間かかるという意識があります。イギリスとはもともと関係が深いですが、欧州やアメリカについてもかなりトラフィックがあって、そういう乗り継ぎをされる場合は、ビジネスクラスで移動される方が多いようです。

 貨物という意味では、日本宛だけでなく、欧州宛、米国宛に薬品関係の貨物があるようなので、そういうところにも期待できるのではないでしょうか。ビクトリア州は農産物に恵まれた地域なので、これからの季節は日本向けはアスパラガス。9月中旬・下旬から12月上旬くらいまでは、かなりのアスパラガスの輸送が見込まれています。タスマニアが近いこともあって、サーモンやアワビ、チルドミートの輸送も盛んです。

──メルボルン線の利用者にはどういう層が多いのか。観光とビジネスの需要割合や、日本人と非日系人の割合などは?

安光氏:ざっくり言うと観光の方が多いのではないでしょうか。初便は4対6くらいの感覚で観光客が多くいらっしゃいました。搭乗客の内訳としては、姓だけを見て判断したところでは、日本人は60人前後、非日系は100人くらいでした。語学留学の方は、長期、短期問わず数えると、かなりの学生さんがいらっしゃいます。そういう方たちも帰国にJAL便を使っていただけるよう(施策を)考えなければなりません。

 聞くところによると、オーストラリア人のスキーに対する需要は安定したものがあるそうです。オーストラリア人は運動好きなので、今は大阪、京都、東京のいわゆるゴールデンルート以外に、自転車が好きならしまなみ海道に、トレッキングという意味で熊野古道に行くこともあります。日本に対する関心、興味はここ3、4年で大きく変わってきているように思います。

 そういうこともあって、今回の新規路線の開設は、オーストラリアと日本の交流、パイプを太くするのに役立つということで、今がベストに近いタイミングとおっしゃっていただける方が多いですね。

──今後、メルボルンの次の路線開設はありえるか。キャパシティ増の面からボーイング 787-9型機への機材変更はありそうか。

安光氏:あらゆる(場所・地域に)ポテンシャルはあると思っています。ただ業務需要があるところで、というふるいにかけると、いくつか候補地点は絞られてきます。(旅客増を考えると)例えば地点を増やすというのも1つのやり方です。便数は一緒でも機材を大きくすることで供給量を増やせるし、機材は変えずに2便目を増やすという方法もあります。

 いろんなアプローチがあると思いますが、会社全体として見た場合には、日豪間の供給席を安定的に維持しつつ、増やしていくのを狙っていくことは変わらないでしょう。個人的な意見としては、新しい地点もいいですが、今就航しているところでパイを増やしていく戦略の方がよいのではと。

 また、季節偏差というのもあります。メルボルンのベストシーズンは秋の2~4月。日本が夏のときは北半球で大型の飛行機を飛ばし、南半球は供給を絞る。逆のシーズンになったら北半球の機材を小型化し南半球の方を大型化する、というのはありえる話だと思います。

 9月のメルボルン発の予約状況は、平均で95%前後くらいはありそうです。まずは機材をボーイング 787-9型機にすれば、席数は161から195に2割増えることになるので、そういうところから始めて、次はどうするの、という話になっていくのではないかと。

現地の人向けに配布されている新規路線開設のブローシャ。新しい機材であることや、エコノミークラスのシートのスペースをアピールしている

──パッケージツアー商品の開発状況は?

安光氏:新規就航を発表した5月末から企画造成していただいて、7月くらいから販売していると思いますが、思っていたよりは集客できていると伺っています。メルボルンの方では、以前の数が小さかったのもありますが、単月の取り扱い人数は信じられないくらい増えているという話を聞いています。

 今は来シーズン向けのツアー造成に取りかかり始めているところです。身体の大きいオーストラリアのお客さまに対しては、エコノミークラスの座席が(ピッチの広い「新・間隔エコノミー」で)非常に快適ですよという訴求をしていきたいと考えています。

──メルボルンやビクトリア州の観光のポイントを教えていただけますか。

安光氏:メルボルンはよいコンテンツがコンパクトにまとまっていて、日帰りでどのコンテンツも楽しめます。メルボルン到着は夜なので翌日から観光するとして、初日の朝はゆっくりめにスタートして、市内散策がお勧めです。市内散策は実は一番味があるといいますか、欧州の雰囲気があちこちにあるので、カフェでお茶を飲んで1日目はゆっくり過ごすのはいかがでしょうか。

 2日目からアクティブに。グレートオーシャンロードへ行くなり、電車に乗るなり、1日をフルに使ったツアーがお勧めです。日中に(丘陵地帯の)ヤラバレーに行くのもいい。メルボルンはそんなに疲れることなく、いくつかの観光資源を適度に楽しめる街なんじゃないかなと。女性が夜歩いても危険なことがない安全な都市ですし、観光にはとてもよいところだと思います