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星野リゾート、第4のブランドとして都市観光ホテルを展開。新築第1弾は大阪 新今宮駅前
「面白いものを作り、やってみるチャンスがある」と星野佳路代表
2017年4月25日 06:30
- 2017年4月24日 開催
星野リゾートは4月24日、大阪市内において報道向け定例発表会を開催。この発表会において、大阪 新今宮駅前に新規に建設する都市観光ホテルの詳細な説明を行なったほか、同社の近況に関する報告を行なった。
登壇した星野リゾート 代表 星野佳路氏は、新今宮駅前の新施設に関する説明があるためか通例より報道陣が多い状況を見て、「おそらく初めて参加する方もいるでしょうから」と、星野リゾートの概略説明から開始した。
星野代表によると、星野リゾートは103年の歴史を誇り、元々は軽井沢の温泉旅館から始まったという。星野佳路代表で4代目となる。自分の趣味の紹介としてスキーがあり、年間60日滑ることを目標としている。今シーズンはすでに57日滑っており、今後同社が運営する裏磐梯猫魔スキー場で目標を達成する予定とのこと。
今では国内35拠点、海外2拠点を持つ大規模リゾート会社となった星野リゾートだが、そもそものきっかけは1987年のリゾート法(総合保養地域整備法)の制定にあるという。この法律の制定をきっかけに大手がリゾート産業に新たに参入、ただし、その新たな大手が興味があったのが所有か開発で、意外と運営に興味がなかったとのこと。そこで星野リゾートとしては運営に特化することとし、所有や開発にはこだわっていないという。
その運営特化の結果、右肩上がりで成長し、取扱高は460億円に達する。この取扱高の中から「いくばくかの手数料をいただき」(星野代表)それが売上高になると説明した。
今回注目されている都市観光ホテルについて、「界 松本」を運営しているなかで気がついたことに端を発するという。界 松本は長野県松本市近くの浅間温泉にある温泉旅館だが、松本市内の観光客数は減っていないのに対し、浅間温泉全体の集客は減少している。この減少分がどこにいっているのか調べたところ、都市のビジネスホテルを観光客は利用するようになっているということが分かった。このビジネスホテルに泊まっている人の6割が観光客で、その人数は微増。
ビジネスホテル・シティホテルで全体宿泊需要の6割があり、この6割の半分が観光需要だとしても3割となり、これは全体宿泊需要の2割を占める旅館を超える利用率になる。
そのためビジネスホテル利用客の満足度調査をして確認すると、「寝るだけだから十分」と大きな不満はないものの、「旅行のテンションが下がる!」というのがあったとのこと。
そのため、このビジネスホテルを利用している観光需要をターゲットとして星野リゾート第4のブランドを立ち上げることとし、その最初として北海道旭川市にある「旭川グランドホテル」の運営会社となり、現在「コンセプト委員会」を立ち上げ、宿泊者ファーストの目線で方向性を策定中だという。
星野代表によれば、旭川グランドホテルは、ブライダル、宿泊、レストラン、宴会の4部門があり、その部門それぞれが新たな業者と競合。例えば宿泊では、東横インやJRインが台頭しながら宿泊部門のみで対応し、旭川グランドホテルの持つ総合力が活かせていないという。そのため、前述の委員会で部門がどう協力できるか検討しているとのことだ。
このような現状説明のあと、大阪 新今宮駅前に建設する都市観光ホテルの建設計画について説明した。
新今宮駅前に2022年に開業する都市観光ホテル
ホテル概要としては、開業予定が2022年、客室数が608室(予定)、客室サイズが30m2~となり、新今宮駅のホームから見える場所に建設する。この発表を行なった直後から質問が多かったのが「なぜ新今宮?」ということ。
その疑問に答えるため、星野代表はアメリカでホテルを初めてチェーン展開したというE.M.スタットラー氏の言葉を引き、「ホテルを成功させるために大切なことは? 1番目がロケーション、2番目がロケーション、3番目がロケーション」と紹介。新今宮駅前はロケーションがよいという例を3つ示した。
1番目は、アクセスがよいこと。このアクセスがよいというのは、ビジネスマンだと空港に直結しているとか、駅に直結しているとかになるが、観光客の場合は駅や空港に行きやすいことだという。その点、新今宮駅であれば関西国際空港や新大阪駅から1本で行くことができるという。
2番目は、観光スポットへのアクセス。新今宮駅であれば、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)や梅田、なんばなどに近く、宿泊客に便利だという。
3番目は、地域文化を感じるエリア。例えば梅田の駅前は、なんでもあって世界のブランドが並んでいるものの、ニューヨークから来た宿泊客にとっては大阪を感じられる風景となるのだろうかと、星野代表は問いかける。それに比べて、新今宮駅であれば通天閣や新世界が近く、ディープな大阪を観光客は体験できるという。
実際、星野代表も地域のNPO法人のスタッフとこのエリアを歩いて確認。大阪ならではの風景があることを確認できたという。
報道向け定例発表会は、このあと、星野リゾートの最新トピック紹介、質疑応答、囲み取材となったのだが、質疑応答については新今宮駅前のホテルに集中。星野代表が語った意図について紹介していく。
新今宮駅前の都市観光ホテルについては、新今宮駅のホームから見えるようにすることが重要だという。そのため、庭園部分についてはおよそ3階の屋上エリアまで持ち上げ、ホームだけでなく通過する電車からも見てもらえるようにするという。そのうえで、シーズンごとに彩りを変更し、楽しんでもらうようにしたいとのことだ。
星野リゾートは、リゾートの「星のや」、温泉旅館の「界」、ファミリーリゾートの「リゾナーレ」の3つのブランドを運営しているが、都市型ホテルとなる第4のブランドについてブランド名などはまだ決まっていないとのこと。まさにそのベースとなる部分を旭川グランドホテルのコンセプト委員会で討議しているとのことだ。
建設費や宿泊価格についても、東京オリンピック後の2022年開業となるため、「建設コストが変化しているなかで、現段階でどのくらいになるか発表できるだけの数字の根拠がない」(星野代表)とし、しかるべき時期に報告を行なうと語った。
質疑応答でも「星野リゾートがなぜ新今宮なのか?」という質問が記者から出た。星野リゾートのホテル自体は新今宮駅前北側に建つが、質問者によると南側は治安がよくないという。その治安のよくない場所の近くに場所になぜ星野リゾートがという質問だろう。
この質問に対し星野代表は、「治安という人もいらっしゃるが、海外の治安の危なさではない。世界中の各都市で課題を持ったエリアはある」とし、「もちろん南側のところも、自販機のお茶が60円だった」と、通常とは異なる風景はインパクトがあったという。
新今宮駅前という地区については、「地域のディープな文化体験」ができ、「大阪にいるんだということを自覚できるデザインと看板」があり、「文化というのはハードではなく、そこに住んでいる方々が作るもの」と説明。地域の人と一緒に歩いたときも「どこのお店に行っても、人情味あふれる人が大阪弁で語りかけてくれる」場所だとした。
それは星野代表が普段いる東京のオフィスとも違い、生まれ故郷である長野とも違う、大阪独自の文化を体験できる場所と位置づけた。
そして「星野リゾートが?」という部分についても説明。「新今宮になぜというギャップがあるから注目してもらえる」としたうえで、星野リゾートが小淵沢の再生を手がけるときに「失敗するといわれ、このギャップがエネルギーになった」とし、2度破綻したトマムを引き受けたときにも「そこを乗り越えて(北海道で)すごく強い集客に育ってきてくれている」と、星野リゾートのこれまでについて思い出すように語った。
「星野リゾートが得意としている部分は、どうやったら人を呼んでこられるか分からないという分野だった」と星野リゾートの特徴について紹介。「何の問題もなく、課題もなく、人がいらっしゃる地域では、思い切ったことをするチャンスがない。大阪市の真ん中で思い切った発想のコンセプトのホテルを作らしてもらえるのは、何らかの課題があるから」「であるからこそ、面白いものを作り、やってみるチャンスがあると考えている」と結んだ。
青森地区の星野リゾート
界 アルプスまでは星野代表から紹介があったが、その後は各ホテルの代表者が最新トピックについて紹介を行なった。
青森については、伊丹空港から(大阪での発表会のため)の近さを紹介。青森地区の星野リゾートは「奥入瀬渓流ホテル」「界 津軽」「青森屋」と3施設あるが伸びているという。その上で最新トピックを紹介した。
ロテルド比叡
京都府京都市左京区比叡山にある「ロテルド比叡」のトピックは、「山床 ~やまどこ~」について。京都では夏の風物詩として川床(かわどこ)があるが、その山版となるオープンテラスを設置し、「山床カフェ」として4月25日にオープンするという。そのほか、近江の発酵食である鮒寿しを活かした料理も紹介した。
星のや京都
「星のや京都」の最新トピックは夕食付きプライベート鵜飼い船について。2017年7月10日~9月10日に実施するという。夏の京都の夜は暑いが、川のため気温も低く、夜のひとときを涼しく楽しめるという。