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貴重な車両に会いに行ける、年に1度の電車まつり! JR西日本が吹田総合車両所を一般公開

2016年10月29日 開催

 JR西日本(西日本旅客鉄道)は10月29日、吹田総合車両所(大阪府吹田市)を一般公開した。同所は車両基地・車両工場であり、電車の整備だけでなく改造なども手掛ける大規模な施設だ。一般公開は毎年1度この時期に開催されているもので、2016年は来場者の出足が早かったことから午前10時の予定を早め、午前9時45分ごろにオープン。すがすがしい秋晴れの陽気のなか、親子連れや鉄道ファンなど約1万5000名(主催者発表)が、普段見られない車両整備の様子を見学したり運転士体験コーナーなどの催しを楽しんだりと、思い思いの時間を過ごした。

 車両展示の目玉は、2015年3月まで大阪~札幌間を走っていた「トワイライトエクスプレス」の客車。オリエント急行をイメージしてシックなグリーンに塗られた車両は、1号車(スロネフ25形500番台)、9号車(オハネフ25形500番台)が観客側に配置され、1号車の手前にはすでに解体された車両の側面から切り出されたと思われるエンブレムが置かれていた。今回展示された車両は保存される予定はないとのことで、別れを惜しむファンらが次々にシャッターを切っていた。そのほかの展示車両も、ここでしか見られない貴重な車両が大半だった。

「トワイライトエクスプレス」の客車
オレンジ、スカイブルー、ウグイスと3色が並べられた103系電車。首都圏では見られない光景だ
3色の車両が連結された様子を撮影する鉄道ファン
向かって左から、JR西日本の試験車両「U@tech(ユーテック)」、牽引車クモヤ145形、381系特急電車

 もちろん、車両工場らしい整備の現場を紹介する催しも充実していた。なかでも、敷地の限られた工場で車両を横方向に移動させる「トラバーサー車両入換実演」、大型クレーンで車両を持ち上げ移動させる「車体上げ下ろし作業実演」、車輪を真円に削り、車軸に固定する「車輪削正・圧入作業実演」といった実際の車両整備を行なう場面の展示は、鉄道博物館などでも見ることができないとあって大人も子供も興味津々の様子だった。

 また、「221系体質改善車両展示」では、リニューアル工事中の先頭車両が展示された。JR西日本の発足後、新しい時代の新快速車両としてデビューした221系も誕生から25年以上が経過しているため、安全性、快適性を向上させる改造が、ここ吹田総合車両所で進められている。この展示は改造中の電車の様子が分かるよう、塗装がはがされ内装なども取り外された状態で車内外を観察することができた。

トラバーサーに電車を載せ、横にスライドして動かす展示。吹田総合車両所には3つのトラバーサーがあるが、そのうち最も正門に近い1基で実演が行なわれた
巨大な車両を2基のクレーンで吊り上げ、工場内で車体を動かす仮の台車上に移される。クレーンの吊り上げ能力は1基あたり20トン
車軸に車輪を圧入する作業。右から左方向に車軸を押し込み、「D556B」と手書きされた新品の車輪に圧入する。圧入作業の実演で次々と車軸に新品の車輪が取り付けられる。車輪が摩耗するとこうして新品に交換されていく
電車の台車
車軸、車輪を取り付けた台車
リニューアル工事が進められている221系先頭車両

 子供たちに人気だったのが、「軌道自転車」「ミニSL」「ミニ新幹線」の体験乗車。軌道自転車は120ccの単気筒ガソリンエンジンで線路上を走行できるもので、主に保線の現場で活躍しているという。

 ミニSLは実際に石炭を燃やし蒸気を作り出して走る。煙を出して走る機関車の存在や、石炭の燃える匂いをはじめて知ったという子供も多かったようで、蒸気を噴きだし機関車が動き出すと歓声が上がっていた。

 ミニ新幹線は「ドクターイエロー」と北陸新幹線「かがやき」のいずれかに乗車できる。これらのアトラクションはいずれも常時30分以上待つ長い列ができていた。

軌道自転車はATカートとも呼ばれるようだ。後進もできるため構内の線路を往復していた
蒸気機関車を懐かしむ年配の方から新鮮に感じる子供たちまで、あらゆる世代に大人気のミニSL
親子で楽しめるミニ新幹線。モデルは「ドクターイエロー」「かがやき」で、ともに人気の車種だ。本物のドクターイエローもJR西日本博多総合車両所の所属
本物の電車の運転台を使用することで例年好評を博している「運転台体験」

 また、本物の電車の運転台を使用した「運転台体験」も抽選により実施。画面はゲームのものだが、例年大好評のため今年は2カ所に増設されたという。運転体験の前にはレバーなどの操作方法がレクチャーされ、子供たちも本物の運転士から電車の運転方法を真剣に聞き入っていた。

 ほかにも、ネジのゆるみなどを金づちで叩くことで聞き分ける「打音検査体験」コーナーや、計測器具を用いて車輪の直径を測定するコーナー、台車のねじをトルクレンチを使って締める体験ができるコーナー、鉄道に関する問題にチャレンジする「ちびっこ電車塾」、子供たちが綱を引いて列車を動かす「車両と綱引き」などが各所で随時催され、どのコーナーも終日親子連れで賑わった。

実際に叩いてみて音の違いから緩んだネジを見つける打音検査体験。子供たちも真剣に音を聞き分けていた
車輪の直径を計測する体験。測定器具を押し当てるとメモリに直径が表示される。写真の「862mm」は新品の数値で、摩耗し774mm程度になると交換されるという
「非常ボタン取扱体験」コーナーでは、新旧の非常ボタンを実際に押してみるという貴重な体験ができる
「非常ボタン取扱体験」のノベルティ
緊急時に非常ボタンをためらわず押すことを啓蒙する「ストッピー」は学校や警察のイベントなどにも現われるとのこと
トルクレンチを使って規定の力でネジを締める体験。地味だが、ネジは緩くても締めすぎてもいけないことが体感できる
「電車と綱引き」体験コーナー。43.2トン×2両、計86.4トンの車両を動かせると子供から歓声が上がった
吹田総合車両所に保存されているモハ52001号電車。1936年(昭和11年)に製造され、戦前に最高運転速度95km/hの快足を誇った。京都~大阪間36分、大阪~神戸間28分は現代の列車と比べても決して遅くはない
巨大な社員食堂も開放され、カレーや焼きそば、唐揚げなどの限定メニューもリーズナブルな価格で提供された
JR WEST カードホルダーが対象の抽選会なども行なわれた
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構内の様子
制服写真撮影コーナー
鉄道ジオラマコーナー
鉄道グッズ販売コーナー
食べ物の屋台も出た飲食コーナー
構内のレールの隙間にはウレタンが押し詰められ、子供が通っても安全なように配慮されていた
JR吹田駅南口を出たところにあるモニュメント。鉄道の車輪が使われており、電車工場の街であることを印象付けられる
JR吹田駅から吹田総合車両所までは徒歩10分程度。経路上には案内板を持った警備員が立ち、迷うことなく訪れることができた