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首都高、横浜北線の開通や、新インフラ管理システムについて説明

10月定例会見にて

2016年10月19日 実施

 首都高速道路は10月19日、同社で定例会見を行ない、横浜北線の開通に向けた動きや、スマートインフラ管理システムの「i-DREAMs」、陸上自衛隊東部方面隊との連携に関する実施協定の締結などについて代表取締役社長の宮田年耕氏が解説した。

2017年春に横浜北線が開通

定例会見を行なう首都高速道路株式会社 代表取締役社長 宮田年耕氏

 会見では、最初に宮田氏が生麦JCT(ジャンクション)~第三京浜横浜港北JCTの開通に向けた動きについて解説した。

 湾岸線と横羽線をつないでいる大黒線を第三京浜まで延ばす形となる横浜北線は、「岸谷生麦出入口」から「新横浜出入口」までの約5.9kmに及ぶ「横浜北トンネル」を含む全長約8.2kmで、横浜北線の開通から遅れて供用開始予定の「馬場出入口」を含めた3カ所のアクセスポイントで構成される。

 着工から16年間で約4000億円投入された横浜北線は、2017年3月の開通により、横浜港や羽田空港へのアクセスが向上、物流の効率化や地域活性化などの整備効果が期待できるとした。また、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に合わせて開通予定の東名高速道路横浜青葉IC(インターチェンジ)まで結ぶ横浜環状北西線が完成すると、これまで一般道を使用しなければならなかった東名高速から横浜エリアへのアクセスが格段によくなるという。

 現在、横浜北線の工事は仕上げの段階に入っており、トンネルの内装、高架橋の舗装や遮音壁などの工事が行なわれている。開通に際して一般開放イベントが企画されているという。

横羽線と第三京浜がつながる
横浜環状北西線が2020年につながると、東名までのアクセスが便利に

管理システム「i-DREAMs」

 i-DREAMsは、調査・設計~施行~維持管理に至るまでの全情報を統合管理することで設計、建設、維持管理のプロセスにおいて判断材料となるデータを速やかに確認し、維持管理計画の作成を支援するAIエンジンを搭載した未来型一括管理システム。新たに2016年度中に検証をして2017年度から実施する。

 道路構造物維持管理業務支援システム「InfraDoctor」やICT(情報通信技術)を用いて点検データ・点群情報や近赤外線情報を用いたひび割れ自動検出情報・構造物諸元、図面データ、交通量データなどの各種データを収集する。i-DREAMsの推定AIエンジンに入力し学習させることで、劣化、損傷、補修補強候補を自動検知できる。

 これまで平均的に行なっていた点検や補修などの作業が効率的になるほか、調査・設計及び施工の効率化においては、点群データを用いて設計することによって、現状(寸法や付属物の配置など)に合った構造検討がシステム上ででき、GIS(地理情報システム)プラットホームから、構造物の管理に必要なすべてのデータベースにアクセスが可能となることで、総合的な診断や評価が可能となる。

最終判断はエンジニアが行なうが、AIエンジンに多くの情報が蓄積されることでより正確で迅速な保守管理などが行える
i-DREAMsは来年度から実施
InfraDoctorを搭載した計測車などで多くのデータを収集

 また、InfraDoctorによる点群データの取得によって、測定した点群の相対変位による構造物の変状を抽出し、浮き・剥離等を定量的に把握できる。任意断面のCAD図及び3D解析モデルが容易に作成でき、劣化診断や予測解析の実現が可能となるため、図面の作成時間がおよそ、8日から1.5日へと大幅に短縮できる。

 なおi-DREAMsの開発費やAIエンジンの精度に対して宮田氏は「開発費用は1億数千万円、AIエンジンの精度については、学習機能を持ったエンジンなので、例えばひび割れなどを点群データの差分で検知して、点検の範囲で再点検などの推奨などを判断してくれ、交通量などさまざまなデータから点検精度などを導き出してくれる」とした。

陸上自衛隊東部方面隊との連携

 陸上自衛隊東部方面隊との連携に関する実施協定の締結については、9月26日、災害発生時に自衛隊の車両が被災地に円滑に移動し、迅速な救命・救助活動を行なえるよう相互協力を図ることを目的として締結された。

連携事項

・被害情報の共有
・定期的な会議及び訓練
・救援活動に必要となる道路、施設の緊急復旧
・救援活動に必要となる施設、敷地、資機材、物資等の提供
・管理用通路等を活用した自衛隊車両の通行

陸上自衛隊東部方面隊との連携に関する実施協定の締結について

知財管理について

 技術とノウハウを活かした知的財産権の活用状況については、事業の効率的な運営と、技術やノウハウを活かした事業領域の拡大を図る目的から、知的財産の開発促進、活用促進を図っており、2016年度上半期に特許権5件、意匠権3件を取得し合計で特許権60件、意匠権9件、実用新案権2件を保有している。なお、2015年度は所有する知的財産権のうち特許権13件、意匠権3件、実用新案権2件で約940万円の収入を得た。

鋼床版デッキ内の亀裂の深傷を計測する技術
トラフリブ専用の深触子ホルダにより超音波深触子を溶接線に対して鉛直度を保ちながらスライド操作する作業を簡単かつ確実に行なうことを可能にした
落下防止機構を備えた配管支持金物

そのほか

 ハイウェイテクノフェア2016は11月1日および2日に東京ビッグサイト西3~4ホールで高速道路の建設管理技術に焦点をあてた展示会として開催される。首都高グループは全10社で出展し、高速道路上を巡回する車両に視野角180度の3面カメラを設置し、得られたフルハイビジョン映像から自動でジョイントなどの損傷を検出する“インフラパトロール”や、高速道路巡回パトロールにおいて、リアルタイムに車両位置及び巡回履歴を把握する“道路パトロールカー運行管理支援システム”など、先進的な技術の取り組みについて48の技術を紹介する。

ハイウェイテクノフェア2016への出展

 環境への取り組みは、環境イベントとしてイオンモール与野で「首都高環境フェア2016inさいたま」(11月20日開催)、クイーンズスクエア横浜で「首都高環境フェア2017inみなとみらい」(2017年2月4日、5日開催)を予定しており、中央環状線全線開通後の状況変化を踏まえ、低炭素化社会や自然共生社会などの視点から再構築された新パンフレット「首都高の環境への取り組み」を作成した。

新パンフレット「首都高の環境への取り組み」

 また、目黒区周辺の斜面林や草地、水田などの原風景を大橋ジャンクション内の換気所屋上に再現した「おおはし里の杜」が生物多様性への貢献度や影響度を事業の前後で比較し定量評価するJHEP認証の最高ランク「AAA」を高速道路としては初めて取得した。

 評価点としては、地域本来の自然を手本にして苗木の種類等を顧慮し、良質な自然地を回復したことや、整備から約5年間自然の樹形や草はらの生育のために過度な刈り込みなどを行なわず、在来種育成のための外来種駆除を行なうなどの維持管理を行なっていることなどが、挙げられている。

「おおはし里の杜」がJHEP認証「AAA」取得

 2016年度の技術コンサルティング事業の受注状況は、土木建築分野において国、地方公共団体などから橋梁の点検、設計、技術支援業務など31件を受注し、新規業務として、福岡北九州高速道路公社が発注し、オリエンタルコンサルツが受注した業務に協力してInfraDoctorを活用した業務を行なった。

 海外では「ミャンマー国バゴー橋建設事業詳細設計調査」などをJICAから5件受注し、経産省「新興国市場開拓等事業費補助金(東南アジアにおける交通インフラ維持管理技術の効率化事業)」に「InfraDoctor」活用による提案が採択され、タイ国ドンムアン高速道路会社(DMT)から交通管制システムアドバイザリ業務を1件受注。また、貢献事業として湾岸線新木場高架下での橋梁の維持管理技術に関する勉強会の実施や、タイ国運輸省国道局(DOH)との技術協力覚書を締結(9月13日)、ミャンマー国建設大臣を始め、20カ国から約150名の海外からの要人、技術者の視察・研修の受け入れを行なった。

技術コンサルティング事業の受注状況
貢献事業

 建物耐震改修工事の受注と今後の取り組みは、首都直下地震に備え、首都高速道路を含む緊急輸送道路に対する沿道建築物耐震化を通じて首都機能の維持と震災に強い町づくりに貢献していくことが目的。建物耐震化を進めるにあたっては、自治体との情報交換や建物所有者への耐震アドバイスを行ない、耐震診断・補強設計・耐震改修工事を進めていくもので、7月4日に首都高グループが初めて受注した。

 受注までに耐震化アドバイスを行ない、耐震補強設計の契約、耐震改修工事の契約に基づき、都心環状線・新大橋通りの共同住宅・店舗・事務所の外壁耐震スリットの新設、屋外階段の固定などを実施した。

建物耐震改修工事の受注と今後の取り組み
最近の通行台数状況

 最近の通行台数状況は、2015年の同一時期と比べると微増しているが、今年4月の料金改正以降走行距離で金額が変動するため短い距離で首都高速を利用する車が増え、900円を超えたあたりからの利用者数は減少傾向にある。

 また、渋滞緩和の措置として取られた新料金体系(ETCで圏央道や外環自動車道を利用した場合、出発地から目的地までどの経路を利用しても、起終点間の最短距離の料金となる)で利用する車も増加傾向にあるため、微増はしているが、渋滞などへの影響はないとの見解を示した。