ニュース

JR西日本、乗客の救護や誘導、関係機関と連携の向上を目指した「平成28年度 京都支社列車事故総合訓練」実施

2016年10月18日 訓練実施

開会式の様子。JR西日本グループ社員をはじめ、警察、消防、医療関係者の約230名が参加

 JR西日本(西日本旅客鉄道)は10月18日、滋賀県野洲市にある網干総合車両所 宮原支所 野洲派出所構内において「平成28年度 京都支社列車事故総合訓練」を行なった。この訓練は、2005年に兵庫県尼崎市で起きた福知山線列車事故を教訓とし、「乗客の救護」と「併発事故の阻止」を最優先に、事故現場における乗客の避難誘導や救護、関係機関との情報連絡・連携など、社員の対応能力向上を目的として実施した。

 訓練には、JR西日本グループ社員のほか、警察からは滋賀県警本部 機動隊、守山警察署、消防からは湖南広域消防局、甲賀広域行政組合、水口消防署、医療機関は済生会滋賀病院、滋賀医科大学医学部附属病院、京滋ドクターヘリが参加したほか、信楽高原鐵道、甲賀市 公共交通推進室も参加した。総勢で約230名(乗客役約100名)と大規模な訓練となった。

開会を宣言する西日本旅客鉄道株式会社 近畿統括本部京都支社長の岩崎悟志氏

 訓練を開始するにあたり、2005年の福知山線列車事故、2002年の東海道本線塚本駅で起きた事故で亡くなられた方に哀悼の意を表して黙とうがささげられた。続いて、JR西日本 執行役員 近畿統括本部副本部長 近畿統括本部京都支社長である岩崎悟志氏が開会を宣言。「今回の訓練では、併発事故の阻止とお客さまの救護を最優先とし、社内の情報伝達、社外の関連機関との情報伝達を確実に行なってください。大きな声を出してお互いに声を掛け合い、けがのないようにお願いします」と話した。

 訓練の想定は、「琵琶湖線 篠原~野洲駅間走行中の米原発姫路行き普通列車(221系4両編成、乗客約100名)が踏切内に進入してきた自動車を認め非常ブレーキをかけるも間に合わず衝突」「4両編成のうち1両目が脱線、車内では多数の乗客が負傷している。JR関係者、消防および警察関係者により負傷した乗客を降車させ、安全な場所まで誘導。消防が設置したエアーテントで応急処置を実施後、病院へ搬送する」「列車の運転士は軽症、車掌は無傷。自動車は進行方向右側に飛ばされているが、自動車の運転手は脱出して無事。列車内には乗り合わせたJR西日本の社員が2名いる」とされた。

訓練の舞台となった4両編成の車両。米原駅発姫路駅行きの列車に自動車が衝突して脱線という想定で訓練が始まる

訓練の事故発生、初期対応を行なう

 訓練は10時30分に列車脱線事故が発生したという想定で開始された。発生後の初期対応として、列車の運転士は非常ブレーキをかけて停車したあと、列車防護として周囲の列車に停止を知らせる措置(車両用信号炎管の使用、防護無線の発報、軌道短絡器の使用、携帯用信号炎管の使用)を行なう。

 車掌は、車内放送をするとともに、現地連絡責任者となる旨を「指令」へ連絡し、列車内の乗客に対する対応を開始する。さらに、今回の訓練では乗り合わせた社員がいるとの想定もあり、その社員による乗客対応も行なう。

 さらに、通報を受けて現地の交番から警察官が到着した。

運転士は列車防護のため携帯用信号炎管を用いて事故の発生、停止する旨を接近するほかの列車に知らせる
一報を受けて、交番勤務の警察官が到着
車内では車掌が乗客への対応、指令への連絡を行なう。また、「何が起きたんだ!」「どうなっているんだ! 早くしろ!」と声をあげ、不安を隠せない乗客に、乗り合わせた社員も協力して対応する

続々と応援人員が到着する

 10時35分に第1陣として、最寄りの野洲駅から駅長が現地到着、現地対策本部長代行として事故現場の管理者となり、車掌がなっていた現地連絡責任者も到着したスタッフに引き継いだ。

事故の衝撃で負傷した乗客役の人も数人配置されていた
現地へ向かう管理者と連絡責任者

 10時40分には、消防、警察、医療関係者が現地到着。事故現場の管理者が列車の状況および現段階の状況を説明したあと、1両目、2両目を中心に救出するよう要請した。

消防が到着
「重傷者がいるので早く救出してほしい!」と救急隊員に頼む乗客役
運転士や車掌が車内にある「非常用ドアコック」を操作して手動でドアを開く
救急隊員が救助開始のアナウンスをして乗客を落ち着かせる。歩ける人は自力で車外に出る
重傷者に対しては救急隊員がトリアージ(搬送の優先順位)作業を行なう。トリアージ・タッグだけではなく色のついたガムテープも使用された

 事故から15分が経過した10時45分、第2陣として周辺の管理駅である草津駅の駅長が到着、管理者の引継ぎ、工務担当らスタッフも同時に到着したため、一時避難箇所を設置し、救出・救護活動の支援に加わった。

重傷者は担架に乗せて迅速に車外に運ぶ
スムーズに連携できるよう、逐次情報を更新して記録していく
一時的な避難場所などが設置される

現地対策本部を設置

 事故から20分が経過した10時50分、第3陣として管轄であるJR西日本 京都支社よりスタッフが到着し、管理者を引き継ぎ、現地対策本部を設置した。引き続き救出・救護活動の支援に加わるとともに消防指揮所との状況確認を行なった。

 負傷者の救出やテントでの応急措置も行なわれ、事故から1時間15分が経過した11時45分、訓練は終了した。

現地対策本部が設置され、次々と指示が飛ぶ
消防が設置したエアーテントで応急処置が始まる。トリアージエリアでは、病院へ搬送する優先順位を医師をはじめ、救急救命士や看護師が判断してトリアージ・タッグに記載
トリアージ・タッグは端の色で判別する
重傷者は救急車で優先的に医療施設に搬送され、軽症者は他の車両で医療施設に向かう
今回の訓練では実際に現場で活躍が期待される滋賀医科大学や京滋ドクターヘリの医師や看護師が参加