ニュース

JR西日本、博多総合車両所で「新幹線ふれあいデー」を開催(前編)

ドクターイエローとエヴァンゲリオンの新幹線「500 TYPE EVA」展示

2016年10月16日 実施

 JR西日本(西日本旅客鉄道)は10月16日、博多総合車両所(福岡県筑紫郡那珂川町)にて、「新幹線ふれあいデー」を開催した。毎年「鉄道の日」の前後に行なわれ、鉄道ファンにも馴染みのあるイベントだが、今回は従来の展示に加えて、特別にエヴァンゲリオン新幹線「500 TYPE EVA」を展示した。通常は博多駅~新大阪駅間を1日1往復しかしない車両を見学できる貴重な1日となった。広大な敷地のほとんどを展示スペースとして使用し、入場無料ながら、とても充実した「はかそう(博多総合車両所の略称)」の1日をレポートする。

 今回は、毎回高い応募倍率でプラチナチケット化しているドクターイエロー車内見学などの、スペシャルコンテンツを中心に見ていこう。

開会前から多くの鉄道ファンが列をなす

テープカット後、開園時刻の10時となり、一般客の入場が開始
広大な敷地は、効率よく回らないと展示を見逃すおそれもあるため、事前に場所の確認が必要なほどだ
開会セレモニーで挨拶したのは、JR西日本新幹線管理本部福岡支社長の加川裕治郎氏

「ふれあいデー」は、実際に使用されている工場内の見学や、0系・高速試験電車WIN350などの車両内見学ができるとあって、多くの鉄道ファンや鉄道好きの親子に人気のイベント。開催した博多総合車両所は、JR西日本では最大規模の敷地面積を誇る車両基地として、コンテンツも充実している。

 特に、当イベントでは恒例となっているドクターイエロー(新幹線電気軌道総合試験車)の展示は、常に人の波が絶えないほどの人気ぶりだ。それもそのはず、ドクターイエローが走るダイヤは公表されておらず、偶然見かけることができたら幸せになれる、などの伝説があるほどだからだ。

 博多総合車両所には、博多南線の「博多南駅」が隣接しているが、そこから会場の正面口までは距離があるので、来場者は、徒歩かシャトルバスで会場入口まで移動。アクセス方法は限られているが、今年の入場者数は2万7000人を記録し、近年では来場者を多く集めた2013年開催時と同様の入場者数となった。

当選した100組だけが体感できるドクターイエロー車内見学

「ふれあいデー」は事前申込なく入場が可能だが、一部で事前申込が必要な催しがある。それがドクターイエローの車両見学となる。今回は限定100組が見学できた。

正面口を入って、南進していくと柵越しにドクターイエローが現れる
見学者はドクターイエローの後ろに見えている車庫から入場
車庫側の窓から見た923形ドクターイエローの7号車
入場台を経由して6号車から車両内に入る

1号車

 まずは1号車から。車両内中央部はモニター室となっている。試験走行中のパンタグラフからの検査データをモニターで集中的に確認できる。同時に信号や無線の状態も監視している役目がある。

まずは1号車
車両内中央部はモニター室となっている

2号車

 車内は一見、機器の詰まったボックスが立ち並んでいる殺風景な場所。しかし、車両上部には、走行用と検査用の2本のパンタグラフが並んでおりドクターイエローが「ドクター」である重要な車両でもある。

2号車
機器の詰まったボックスが立ち並んでいるだけの殺風景にも見える
「高圧室」、その名のとおり高い電圧の電気が流れていると説明がある

3号車

 車両中央上部に観測窓が設けられており、検測中のパンタグラフ(2号車)の状況を目視できるようになっている。ビデオカメラも設置されており、録画も行なわれる。

3号車
階段を数段登り天井間際で着席するタイプの観測台
録画用のビデオカメラ
観測窓用のワイパースイッチを装備している。空調の吹き出し口も確認できた
着席した際に見える景色
更衣室などの小部屋もある
水道が利用できるシンク

4号車

 レール点検用の専用台車を装備しているため、床が数cm高くなっている。こちらにもモニターが多く並んでおり、レールの状態をモニターで常時監視する。

4号車にもモニターが多く並ぶ
モニターは、先頭車両のカメラ映像も映し出しているとのこと
数台のノートPCとプリンタ類が並んでおり、ここだけを見るとオフィスのよう
モニター上部のゲージには新幹線の駅名と距離数が記されている。
東京駅から博多駅の総延長距離は、1069.1km
左側の連結部側がスロープになり、床が高いことが確認できる。軌道検測用台車があり、装置は車両ドア脇の蓋から点検を行なうことができる。なお、軌道検測はレーザー光を照射して、レールの歪みなどを監視する

5号車

 5号車も3号車同様、観測窓がある車両となっている。機材搬入のためにドア幅も広くとられている。

3号車とは着席方向が逆。博多駅から東京駅方面に向かって座る。
録画用ビデオカメラ
シートは肘掛け付き
3号車同様に洗浄用のワイパースイッチが確認できる。冬季用のガラスヒータースイッチも装備
東京駅方面に向いて着席すると、写真のような風景となる。2本のパンタグラフが架線に接触した状態であることが確認できる
5号車は機材搬入のためにドア幅が広い
5号車にも洗面台がある

6号車

 6号車は2号車と同様、2本のパンタグラフが設置されている車両で、今回は車内見学の出入口として使用されていた。普段は資材置場にも使用される。

7号車

 先頭車両となる7号車には、通常の新幹線同様にシートが並んでいる。

シートが並ぶ7号車
見学当選者は、ここでスタッフから説明を受ける。モニターには各車両の役割などの説明がイラストを交えて案内される
東京方面に向かって左側の席は2人掛け。通常の新幹線と同じだ
東京方面に向かって右側の席は3人掛け。ほとんど使用される機会がないとのことで、クッションのヘタりもない

2016年のスペシャル企画は「500 TYPE EVA」の構内展示

洗車機を通過して登場した「500 TYPE EVA」。この日は、こうして数回構内を往復し来場客を楽しませた

 2015年11月より運行を開始し、現在も博多駅~新大阪駅間を1日1往復運行している「500 TYPE EVA」の展示もあった。今回が初展示となり、前回の3月開催時にはなかったものだ。こちらもドクターイエロー同様、走っている姿を見る機会が少ない特別車両というだけあって、会場での注目度が高かった。

「500 TYPE EVA」が入線してきた。
洗車機は2つあるが、最初の門をくぐってきたばかりの状態では洗剤が残った状態だった。次に通過する洗車機で洗い流すという順序
着発線に向かう「500 TYPE EVA」
洗車機。この日、通常の業務で車庫に戻ってくる新幹線が洗車機にかけられる姿を、多く見ることができた
同時に30編成もの新幹線を停車させることが可能とのことだ

N700系、700系新幹線運転台見学

 事前の抽選申し込みで、当選者のみ入場できる運転台見学。会場の入口付近に用意されていた記念撮影用車両の反対側の先頭車両が会場となっていた。

N700系

N700系の運転台全景
運転席左側に収められた機器群
運転席
車両所の線路は直線で、16号車から振り返ると、11号車(トイレや車いす対応設備のある車両)まで見通すことができた

700系

こちらは700系の運転台
全体的な機器の配置パターンはN700系と似ている
側面の窓部
運転席

 ここまで、特別展示をご覧いただいたが、後半では「新幹線ふれあいデー」来場者は誰でも見学ができる工場内や本部棟の様子を紹介する。工場内ではパンタグラフの動作体験や、新幹線内の清掃作業の体験会など、新幹線の運行を支えている各部門の魅力が見学できるようになっている。