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宮城県の航空自衛隊松島基地で6年ぶりにブルーインパルス復活!

震災後初の航空祭「松島基地復興感謝祭2016」開催

2016年8月28日 開催

 宮城県の航空自衛隊松島基地で8月28日、「松島基地復興感謝祭2016」が開催された。2011年3月11日の東日本大震災で被災した同基地の復興を記念して開催された航空祭。通常行なわれる航空祭は一般入場が自由だが、今回は全国から抽選で選ばれた1万名のみを対象としたイベントとなった。

 松島基地は東日本大震災で津波により大きな損害を受けた基地で、Car Watchでも当時の様子を取材し、レポートしている。

 松島基地は航空自衛隊のアクロバットチームである「ブルーインパルス」が所属する第11飛行隊が置かれていることで知られるが、戦闘機のパイロットを養成するための第21飛行隊も置かれている。パイロットとなるべくして入隊した隊員が戦闘機のパイロットとしてより高度な技術を習得するための部隊で、復座型戦闘機「F-2B」に搭乗して戦闘機の実戦的な技術を学ぶ場となっている。松島基地は未確認機に対してスクランブルを行なう戦闘航空団が所属する実戦部隊ではないが、未来のファイターパイロットを養成する重要なポジションにある基地だ。

 なお、ブルーインパルスのパイロットはこうした課程を経て戦闘航空団に配属され、さらにパイロットとして経験を積んだうえで選抜されるエリートで構成される。

 震災直後、松島基地は津波に襲われ、基地内に駐機していたF-2Bをはじめとする機体は、津波に流されるなど損害も多く、復旧には時間がかかった。不幸中の幸いだったのはブルーインパルスは偶然、九州新幹線の祝賀飛行のために福岡県の芦屋基地に展開していたため無事だったことだ。

 損害が軽微だったブルーインパルスが所属する第11飛行隊は2013年3月30日に松島基地に帰還を果たし、訓練飛行や全国各地で開催されたイベントなどでのアクロバット飛行を再開したが、その間、松島基地での航空祭は自粛されていた。

 そして2016年3月30日、これまで三沢基地を仮住まいとして訓練をしていたF-2Bを主力とする第21飛行隊もようやく同基地に復帰して松島基地での訓練を再開。ならびに津波対策として4mかさ上げをしたエプロン地区(駐機場)も完成し、松島基地は復興を遂げた。基地周辺には長大な防潮堤も建設されており、これらと連携することで基地が防潮堤の一部として機能し、防災効果を高めているという。

入場開始前の様子。全国の航空自衛隊基地で開催される一般的な航空祭は7~8万人、多い場所では数十万人が集まるイベントだが、今回の松島基地では抽選で選ばれた幸運な1万人のみが入場できた
入場ゲート付近の様子。白い天幕の下で全員荷物検査を受けてからの入場になる
会場と同時にダッシュする入場者
徐々に来場者が増えるエプロン地区
2016年3月に完成したばかりの新エプロン地区。従来から4mかさ上げされ、津波が来ても耐えられる構造とした
もちろん格納庫も新造

 今回のイベントはあくまで「松島基地復興感謝祭」ということで、正式な航空祭ではなく、基地の復興にあたって、地元や関係部署への感謝を表わすためのイベントとされている。新規に作られたエプロン地区を使って開催するということもあり、まずは規模を縮小して開催することになった。規模が小さいとはいえ、基地に所属する機体が展示飛行を行なうのは通常の航空祭と同じ。震災以前、松島基地の航空祭は毎年8月下旬に開催されていたため、航空祭が開催されたのは2010年の夏が最後で、実に6年ぶりの“航空祭”となった。

前日である8月27日に開催された東松島夏祭り2016で展示飛行をしたブルーインパルス

 感謝祭当日の8月28日はあいにくの曇天であったが、雨が降ることはなく、イベントは滞りなく実施された。感謝祭では松島基地に所属するブルーインパルスによる展示飛行はもちろん、戦闘機「F-2B」をはじめ、松島救難隊や消防庁のヘリによる放水デモなどが披露された。

オープニングフライト。松島基地に所属する固定翼によるフォーメーションで、戦闘は救難捜索機「U-125」、その後ろの2機がパイロット養成訓練にも使われる復座戦闘機「F-2B」、その後ろの3機がT-4(ブルーインパルス)となっている
速度の遅いヘリコプター「UH-60J」と並んで飛行する「U-125」
オープニングフライトに参加した2機のF-2B
同じくオープニングに参加したブルーインパルスの機体
オープニングから戻ってきたブルーインパルス。パイロットや整備員を間近で見られるブルーインパルスの駐機場前は一番の見学、撮影スポットなのはどこの航空祭でも同じ
戦闘機としての性能を見せつけたF-2Bによる機動飛行。F-2Bは通常は練習機として使われているが、有事の際には戦闘機として単座型のF-2Aと同様に運用される
仙台市消防航空隊 消防防災ヘリコプター「けやき」(ベル 412EP)による消火デモ
海上保安庁のボンバルディア 「DHC-8-300」の航過飛行
松島救難隊の救難隊捜索機「U-125」と救難ヘリコプター「UH-60J」による救難展示の様子。U-125が遭難者を発見し、救難物資を投下、その後UH-60Jが到着して隊員が現地に降下し、要救助者を収容する様子がデモされた
ブルーインパルスによるアクロバット飛行の様子。松島基地では6年ぶりの演技となる
演技の締めはブルーインパルスのオリジナル演技である「コークスクリュー」。直進する1機のまわりをもう1機がぐるぐるとまわりながら飛行する
最後はローリング・コンバット・ピッチを行なって着陸態勢に
着陸後の記念撮影の様子

 展示飛行の合間には、航空学生(パイロット候補生)によるファンシードリルの演技や、原付オートバイを使った「ブルーインパルスジュニア」の演技なども実施された。ファンシードリルとは、銃を持った隊員が音楽に合わせて行進し、さまざまな動きを披露するもの。自動小銃を軽々と扱う自衛官らしいキビキビとした動作が特徴だ。

 ブルーインパルスジュニアはブルーインパルスの機体を模した改造をした原付オートバイを使った、ブルーインパルスのパロディ的な演技を行なうチーム。松島基地所属の有志隊員によるチームで、全国各地の航空自衛隊基地で行なわれる航空祭で展示“走行”を行なっており、自衛隊らしからぬゆるいナレーションと、意外にマジメな演技で親しまれている。

航空学生によるファンシードリル。写真ではなかなかその魅力は伝わりにくいのが残念
隊員有志によるブルーインパルスジュニアの演技。ゆるい雰囲気ながらきっちりとフォーメーションを組んで走行する様子は観客から歓声があがる
最後は本物のブルーインパルスが行なう大技「コークスクリュー」を再現。手動で子機をクルクル回している

 そのほか、格納庫内では屋内展示も行なわれた。戦闘機の武装や各種装備品の展示、戦闘機などに搭載されている射出座席へ座っての記念撮影や、F-2Bコクピットの見学など、普段はなかなか見ることのできない展示が多く、いずれも行列ができていた。

F-2Bに搭載されるM61 バルカンの20mm弾
F-2Bに搭載されるM61 バルカンの本体。メカメカしい
射出座席体験。さすがに射出の体験ができるわけではないので念のため。記念撮影ができる
長い行列ができていたF-2Bのコクピット見学
F-2Bに搭載されているエンジン「F110-IHI-129B」。全長4.63m、最大径1.18m、重量1787kg。推力はミリタリー推力(アフターバーナー未使用時の最大推力)が7782kg。アフターバーナー使用時の最大推力が1万3035kg
ブルーインパルスの使用機体であるT-4に搭載されるエンジン「F3-IHI-30B」。全長1.6m、最大径60cm、重量340kg。推力は最大1670kg
基地防空を担当する基地防空隊の展示も。写真は20mm機関砲を搭載するVADS(Vulcan Air Defense System)
カモフラージュが施されたVADS
81式短距離地対空誘導弾発射装置
81式短距離地対空誘導弾の射撃統制装置搭載車両
もしものときに消火活動を行なう破壊機救難消防車「A-MB-2」

 なお、2017年の開催については、本来の航空祭にするか、2016年と同じように限定的な開催になるか現時点では不明で、例年3月以降に発表される航空自衛隊のイベントスケジュールを参考にしてほしい、とのことだった。