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JR東日本、東京総合車両センターを一般公開「夏休みフェア2016」開催

車両展示から車体上げ下ろし、列車内のマイク放送をする車掌体験など実施

2016年8月27日 開催

4つのタイプのE233系が揃った

 JR東日本(東日本旅客鉄道)東京支社は8月27日、大井町駅近くの東京総合車両センターを一般公開する「夏休みフェア2016」を開催した。開場の朝10時前に長い列ができるほど、多くの鉄道ファンが詰めかけた。

 主なイベントとしては車両展示、車体上げ下ろし実演、台車組み立て作業実演などの見学コーナーや、E233系車両の試乗、車体洗浄体験、ドア開閉操作体験、パンタグラフ昇降操作体験、車軸引っ張り体験、列車内のマイク放送をする車掌体験などの体験型イベントなど、なかには長時間の行列ができる展示もあった。

電車を吊り上げる車体上げ下ろし実演は迫力十分

231系電車が吊り上げられた

 車両工場のイベントでは、恒例となる車体上げ下ろし作業の実演。整備で車両と台車を分離し移動させるための作業を目の前で見学できるもの。台車と車両を固定しているボルトを引き抜き、工場内に設置されている設備で吊り上げて移動し、移送用の車両に乗せて移動させる作業を公開した。見学者からは車両が吊り上がる瞬間に声があがった。

近接して見ることで大きさを感じる。大きな車体が宙に引き上げられていくのは迫力
構内作業車で車体が移動
車体に移動用の巨大なアームを接続
車体が宙に持ち上げられる
用意された台車の上まで車体を移動する
車体と台車を結合するために下げるシーン。一度に前後を下ろすのではなく、途中まで下げたあとに前後別々に結合作業を行なう

クーラーユニットや台車の分離作業実演

 目の前で台車の分離作業を見ることができる「クーラー・台車外し付け実演」を見学した。車両と台車はボルト2本で固定されていることが職員から説明。鉄道車両独自の構造が実際の作業工程をとおして理解することができた。

 車両の総重量は25トンから30トン、台車は6トンの重さ。台車交換は120万キロ(おおよそ4~5年)以内で行なわれる。クーラーユニットも、現在の列車では定期的な整備項目となっているとのこと。

クーラーユニットを吊り上げた

列車内に自分の声をマイク放送をする車掌体験

 東京総合車両センター内ではあるが、10両編成の車両を使い列車内にマイクで放送する車掌体験も人気。取材時点で約70分の待ちとなっていたが、体験に使用する車両内に並んでいるのでエアコンとシートが用意され、車掌体験でアナウンスしているのを聞くことができた。

 参加者のなかには本物の車内アナウンスかと思うほどの手練もおり、案内するスタッフも驚くほど。スタッフからは「鉄道に対する憧れを持っていただけるのがうれしい」との声が聞かれた。

一編成の列車に自分の声で車内アナウンスを流せる車掌体験。アナウンスを流したあとに実際の車両の運転台に座り機材に触れることもできた

E233系各車両の特徴も解説、バリエーションを並べて展示

 2006年から運用が開始されたE233系車両は、首都圏でJRを利用する人間には馴染みが深い列車であるが、年代や導入路線によって機能面で違いがある。今回の展示では4種の車両編成が展示されているだけで内部を見比べることはできなかったが、各導入路線ごとのパネル解説があり、違いが分かる展示となっていた。

中央線、青梅線の0番台

 0番台のE233系車両は中央線、青梅線に最初に導入。当初からバリアフリーを考慮した設計がされており、愛好者団体の鉄道友の会から技術面や先進性に優れた車両に贈られる「ローレル賞」を獲得している。

東海道線、宇都宮線、上野東京ライン、湘南新宿ラインの3000番台

 東海道線や宇都宮線、上野東京ラインや湘南新宿ラインに投入された3000番台は2階建てのグリーン車が連結され、クロスシートやトイレなども装備されており、長い路線では250kmを超える運用も考慮した仕様。

京葉線や外房・内房線に導入の5000番台

 京葉線や外房・内房線に導入されている5000番台では、蘇我駅から房総各線に入るために10両編成から6両や4両へ、途中駅で分割や統合を行なうための編成となっているだけでなく、途中駅での停車時間が長いために冷暖房の効果保持のために扉の「3/4閉」機能がある。

横浜線、根岸線に導入の6000番台

 2014年10月から横浜線、根岸線に導入された6000番台では車室内の照明はLED化され、205系のような6扉車はないが拡幅車体によって乗車定員を従来車より増やしている。

パーツや工具の展示

付随台車。ディスクブレーキが装着してある

 展示イベントのなかには、車両の構成部品を展示しているコーナーも多く用意。こちらは部品の一つ一つを確認している来場者が多かった。廃止された列車のヘッドマークや車両のドアなど、多彩な部品や工具などが展示された。

 分解された台車が展示されているコーナーでは、台車は形式をスタッフに尋ねたり、ディスクブレーキのローターの直径を質問したりと、熱心なファンが集まっていた。

電動台車と付随台車(モーターが付いていない)の違いや、ボルスタレス台車の構造を簡単に解説している
空気バネのカットモデル
ヘッドマークなどの展示
空気バネやブレーキなどに使うコンプレッサーの展示。各車両ごとの違いも見比べることができた

「観る」「動かす」、さまざまな展示と体験

 車両整備だけでなく、鉄道や車両、運行の安全に関する理解を深める展示も多数あった。

電車のドアの開閉操作の体験コーナー
パンタグラフの昇降操作の体験コーナー
人気の運転台操作体験コーナー。103系、205系、209系があったが、それぞれの順番待ちの椅子も電車のシート
景品をもらえたり制服を着用して写真を撮ったり、小さな子供たちも飽きさせないようなアトラクションも随所に設置されていた
ミニ電車の乗車体験は、ただ乗るだけでなく、東京総合車両センターの内部を見学できる
首都圏では普段から見慣れているE233系の試乗も人気で、順番待ちの行列ができていた
E233系の試乗電車が到着した
鉄道模型の走行展示も実施

鉄道グッズの販売コーナー、大人買いも発生

 鉄道関連のイベントでは欠かせない旧型車両から取り外した部品や駅構内の備品の販売コーナー。多くの部品を買い求める人もあり、目当ての来場者は多く、購入整理券を配布、順番に選んで購入するスタイルとなっていた。

 車両から取り外し部品のほか、乗務員や駅員が持っていた「懐中時計」や、車掌が車内精算に使う「ハサミ」。自動改札機やチャージ式のICカードが機械が普及した現在では、車内精算の光景を見ることはなくなってしまったので、マニアではなくとも目をひくものである。

 グッズ類の販売コーナーは整理券など不要で購入できたが、賑わいぶりは同じ。500円の「鉄道くじびき」では思わぬ当選をして喜ぶ子供がいた。