ニュース

JR西日本、大阪環状線専用の新型車両「323系」を公開

現在の103系および201系をすべて置き換え

2016年6月24日 公開

 JR西日本(西日本旅客鉄道)は6月24日、業務提携している車両メーカー、近畿車輛において、大阪環状線の新型車両「323系」のお披露目式典を開催、車両を公開した。現在、大阪環状線の103系および201系をすべて置き換えるための車両で、ステンレス車体に路線カラーのオレンジ色を配した外見と、1両あたり片側3扉車となっているほか、シートや女性専用車に新しい試みを採用した。

2018年度までに103系および201系をすべて置き換える

 新型車両の「323系」の8両編成は従来の103系や201系と同じだが、扉数が変わり1両の片側あたり3扉となる。JR西日本の225系などと同様に「0.5M」方式を採用し、8両編成の全車が電動車となる。2005年の車両事故の関係から、衝突安全対策も重視されており、前面衝撃吸収構造や側面衝突対策をとり、ドア横の席に大型袖仕切りを配置、車両異常挙動検知システムなどを搭載している。

 車両デザインはステンレスのシルバーの車体に、ドアまわりに路線カラーの「オレンジバーミリオン」を配置した。ただし、4号車は女性専用車となっており、オレンジではなくピンク色。4号車だけは車内に女性専用車の表示を多く行なったほか、車内照明のカラーが女性専用車だけ電球色となっており、誤って乗車することがないようにし、誤って立ち入った場合でもすぐ分かるように配慮した。

ドア横にオレンジ色の路線カラーを配した
女性専用車だけはオレンジではなくピンク色となる

 また、大阪駅において天満駅方向の8号車はホーム階段の配置から混雑が激しい。そのため、8号車については出入り口スペースを拡大するため、通常はドア間のシートは10人掛けのところを8人掛けとして、ドアの左右の立ち席スペースには腰当てを設置するなど路線特徴に応じた混雑対応を行なった。

8号車の車内。ドア横のスペースは腰当てを設置して立ちやすくするとともに、ロングシートがほかの号車よりも短い

 シートは3扉化したため、長いシートは10人掛け。両端の席はドアとの区切りで大型袖仕切りを配置しているが、斜めに配置することで、着席者の肘スペースの確保と、立っている人の寄りかかりの快適さを両立させた。

 優先席については、立ち上がり時の支えにも使えるよう、初めて専用の個別肘掛けを装備した。車端部に車椅子、ベビーカースペースは各車両に設置した。

ドア横の席に大型袖仕切りを斜め配置し、肘のスペースを確保、ドア横に立つ人の収まりもよくなった
優先席には立ち上がり時の支えにも使える個別肘掛けを装備
長いシートが10人掛けの7号車の室内
2m近い大型の窓にもロールカーテンがあり、スムーズに上下する
女性専用車は照明カラーが異なるので、入った瞬間に女性専用車であることが分かる
車内には照明の差のほか、ピンクの帯があちこちに入っている

 車内の情報表示はドア上や車両端に液晶ディスプレイを配置し、4カ国語で案内し、駅の案内も環状線らしく円形でイメージしやすくするデザインを採用する。また、無料のWi-Fiを装備した。

 なお、323系は2016年度~2018年度に8両編成を21本、合計168両を導入する。製造メーカーは近畿車輛のほかに川崎重工も製造する。

 今回の更新については、大阪環状線改造プロジェクトの一環。直近は回復の兆しがあるものの大阪環状線の利用者数減という背景があり、ユーザーの満足度調査では車両の古さなどを指摘する声があり、それを解消する狙いもあるという。

323系の登場は大阪環状線を盛り上げ、車両更新に留まらない効果を期待

お披露目の式典は雨のため、急遽、会議室で行なわれた

 お披露目式典はでは、JR西日本と、車両を製造する近畿車輛、川崎重工業から関係者、そして大阪環状線に思い入れのある鉄道好きタレント、斉藤雪乃さんが出席してとり行なわれた。

西日本旅客鉄道株式会社 取締役兼常務執行役員 近畿統括本部長 平野賀久氏

 西日本旅客鉄道 取締役兼常務執行役員 近畿統括本部長の平野賀久氏は323系について、「安心安全、信頼性、情報提供、快適」の4つコンセプトで開発を進めてきたと説明、同じオレンジバーミリオンの色なので「なおいっそう。323系をご利用いただければありがたい」と話した。

 また、大阪環状線はこれまで、発車メロディの採用や話題となる駅隣接の商業施設を作るなどして盛り上げてきたが、「引き続き、残る駅の改良、地域のみなさまと環状線を盛り上げていきたい」と希望を述べた。

近畿車輛株式会社 代表取締役社長 森下逸夫氏

 近畿車輛代表取締役社長の森下逸夫氏は「JRになって約30年。この間、大阪環状線は国鉄時代の車両が走っていて、待ちに待った新車の登場だと思う」とし、製造メーカーの代表者として「無事に第1編成目が完成してうれしく思っている。これからの大阪の方々のご期待に答えるようにがんばりたい」とこれから2年半続く製造の抱負を述べた。

 さらに製造にかける意気込みとして「受注する前から、設備、社員教育、技術伝承、この車両をその集大成にしようとがんばってきた。今までの近畿車両のクルマよりも出来がよくなったとつもり」と話し、「結果として大阪の街が活性化して、インバウンドの方にも喜んでいただいて、地元の方々も“これぞ大阪だ”と思って乗っていただけるようなクルマになった」と自信を見せた。

川崎重工業株式会社 理事 車両カンパニー営業本部長 村生弘氏

 また、近畿車輛とともに323系を製造する川崎重工業の理事で車両カンパニー営業本部長 村生弘氏は、単に車両更新でなく、アーバンネットワークの構築や、大阪環状線に新しいブランドを持たせる意味があると説明。車両についても、8号車の混雑対応などを示し「お客さまにやさしい車内環境は、非常によい設計」と評価した。

 川崎重工業の323系の納入は2017年からとなるが「323系が、大阪環状線の新しいイメージリーダーとして、一日も早くデビューすることを心待ちにしている」と新型車の展開に期待を寄せた。その一方で、JR西日本の関連会社の商業施設で、建物外観が103系の形をしている「ビエラ玉造」についても「あのまま変わらず残ってほしい」と希望を述べた。

鉄道好きとして知られる、タレントの斉藤雪乃さん

 一方、ゲストとして鉄道好きタレント、斉藤雪乃さんは大阪環状線の路線カラーをオレンジバーミリオンを意識したというオレンジ色の衣装で登場、大阪環状線に対する思いを語った。

 斉藤さんは大阪環状線で好きな車両は「103系です!」と答え、現在は京都鉄道博物館に収蔵されるクハ103形1号車のラストランを桜ノ宮駅に見に行った経験などが語られた。

 報道陣よりも一足先に323系を見たという斉藤さんは第一印象を「変わりましたね。ガラッと変わりました。ちょっと大人っぽい感じ。落ち着いていて、長く愛されていくだろうというデザイン」と語った。オレンジ色とともに茶色のラインが入っていることについては「221系、223系、225系……遡ると117系のシティライナーから続いている、すごく感動しました」と語り、興奮冷めやらぬ様子。

 さらに斉藤さんは、JR西日本が報道陣に配布した資料にない独自のよい点を指摘、S字バネを使ったシートの座り心地や、大型化された窓と、大型化されながらもスムーズに動くブラインドなどのよさを語った。

 女性専用車については、車内照明の色が異なる点について、「電球色はあたたかみのある色、夜、大阪環状線を走ってるところを外から見てほしい」と語り、誤乗車防止の観点からも評価した。

大阪環状線を意識、オレンジ色の衣装をまとって登場した斉藤雪乃さん
大阪環状線と新しい323系の魅力を熱く語った斉藤雪乃さん

オレンジ色の幕で覆われた323系がアンベール

 この日は時おり雨が強まる天候で、当初予定された関係者の挨拶が急遽、室内で実施されるなどしたが、除幕式のタイミングだけ雨が止み、車両の前で除幕が行なわれた。

 式典参列の3社の担当者のほか、斉藤雪乃さんも参加、合図に合わせてロープを引き、オレンジ色の幕で覆われた323系の先頭車が、報道陣の前に姿を表した。

除幕前の323系
合図でロープを引くと、幕の中から323系のフロントが姿を現わした