週末駅弁

久留米駅「焼麦弁当(しゃおまいべんとう)」

“西の中央軒”として知られる鳥栖駅名物のシウマイ弁当

「焼麦弁当」

 関東地方の方は、シウマイといえば横浜の崎陽軒を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、九州には崎陽軒同様にシウマイで有名な名店があります。それが佐賀県鳥栖の中央軒です。中央軒は、明治25年に創業して以来、駅売り弁当を長年扱っています。その中央軒が発売する鳥栖駅の名物駅弁が「焼麦弁当(しゃおまいべんとう)」です。

 焼麦(しゃおまい)はシウマイのことで、“麦の粉で包んで加熱したもの”という意味があるそうです。中央軒では、昭和31年から焼麦を販売しています。当時はまだハイカラで珍しかった焼麦を、長崎在住の中国人から作り方を教わり、いち早く駅弁に取り入れて販売したのがきっかけで、鳥栖駅の名物として現在でも定着しています。

 また、中央軒は鶏肉で炊き上げたご飯「かしわめし」を大正2年より販売していて、そちらも名物として親しまれています。今回購入した焼麦弁当には、その焼麦とかしわめしの、中央軒2大名物が贅沢に詰め込まれています。

焼麦弁当には、中央軒の誇る2大名物、焼麦とかしわめしが贅沢に詰められている

 フタを開けてまず目に飛び込んでくるのが焼麦です。小ぶりな焼麦は全部で6個と、贅沢に盛られています。サイズ感は、崎陽軒のシウマイに近いといってよいでしょう。焼麦の具材には、厳選されたSPA豚(抗生物質を使わず育てられた豚)に、無農薬で育てられた玉ねぎ、にんにくなどの野菜、しいたけ、卵が使われています。上に緑のグリーンピースが添えられている点も、焼麦らしい魅力です。

 東京在住の筆者は、崎陽軒のシウマイにはかなり馴染みがありますが、コク深く濃い目の味付けとなっている崎陽軒のシウマイに比べると、中央軒の焼麦はかなりあっさりしているという印象を受けました。これは、広東風の味付けだそうですが、豚肉の旨みがしっかり感じられて、お肉を食べているという感覚の強い味わいは、あとを引く美味しさです。また、崎陽軒のシウマイに比べると、独特の香りもやや弱めとなっています。ですので、列車内でも気兼ねなく食べられるといってよいでしょう。

小ぶりな焼麦は全部で6個。上のグリーンピースが焼麦らしさを引き立てている
比較的あっさりとした味わいだが、豚肉の旨みがしっかり伝わってあとを引く美味しさ。独特な香りが弱めな点もうれしい

 そして、焼麦に並ぶ名物のかしわめしも、かなりの美味しさです。ご飯粒には、鶏の旨みがしっかりしみ込んでいて、ほんのりとした醤油味と合わせて、それだけでも十分な美味しさです。さらに、ご飯の上に敷き詰められている甘辛く煮込まれた鶏肉や甘みの強い錦糸卵と合わせても、それぞれが主張しすぎることなく、より美味しさを高めてくれます。かしわめしは、弁当箱の半分以上を埋め尽くす量が詰め込まれていますので、ボリュームも満点です。

 もちろん、焼麦との相性も申し分ありません。異なる名物料理が詰められた弁当では、双方の味の調和がうまくとれない場合も少なくありませんが、焼麦弁当の、焼麦とかしわめしに関しては、そういった心配は無用です。漬物以外におかずはまったくない、シンプルな内容ですので、最初フタを開けた瞬間には、途中で飽きそうかも、という印象も受けたのですが、実際にはそれぞれが美味しさを引き立てあい、飽きることなく食べ進められました。

焼麦に並ぶ、中央軒の名物かしわめしが、弁当箱の半分以上ぎっしりと詰められている
ご飯粒には鶏の旨みがしみ込んでいて、優しい美味しさ。ご飯の上の鶏肉や錦糸卵と合わせると、さらに美味しさが高められる

 加えて、740円と駅弁としてはかなりリーズナブルな価格設定もうれしいところです。焼麦弁当は、発祥の鳥栖駅だけでなく、今回実際に購入した久留米駅などでも販売されています。佐賀県や福岡県方面に出掛けたときや、九州新幹線に乗るときなどに楽しむ駅弁としてお勧めです。

「焼麦弁当」

価格: 740円
販売駅: 鳥栖駅、久留米駅など
購入場所: 久留米駅 ファミリーマート銘品蔵久留米駅店
購入日: 2017年4月10日