荒木麻美のパリ生活

産地直送! パリで新鮮な朝採り野菜と果物を食べよう

おまかせ野菜の詰め合わせセットで新しい発見も

 2016年で私のパリ生活も13年目になりました。パリで暮らしているからこそできているさまざまな経験には感謝していますが、それでも私はいつか日本に戻りたいと思うほど、今でも日本の方が好き。そんな日本LOVEの私でも、これはパリの方がよいなと思うことの1つは、手ごろな値段でも食材がとても美味しいこと。特に野菜と果物は味が濃い。パリに長く住んでいる人は「以前より味が薄くなった」と言いますし、私は東京生まれ、東京育ちなので、日本でも地方に行けば違うのかもしれませんが、それでも東京とパリでは食材の味がまったく違うと思います。

 私はできるだけBIO(過去記事参照)の食材を買うようにしているのですが、これは健康や環境への配慮ということもありますが、単純に味がよいと思えることが多いから。それもBIOのパニエ(フランス語で「かご」の意味)の野菜と果物が一番美味しいです。

私が「Le Campanier」から注文した野菜を取りに行ったのは近所のBIOのお店。購入者にとって一番都合のよい引き取り所を選ぶことができます

 このパニエというのは、販売業者が提携している畑から季節の野菜や果物を選んでセットにし、配達するというもの。オプションで野菜や果物を追加できるところ、卵を扱っているところも多いです。私は数カ所から買っているのですが、どこもパニエの中身は前の週にインターネット上で見ることができるので、その中から気に入ったパニエを注文しています。量も家族の数に合わせて大小のパニエを選ぶことができます。そして週に1回、用意されたパニエを指定された場所に取りに行きます。自宅まで配送してくれるところもありますが割高になりますし、日本のように指定した時間きっかりに来ることを期待できないので、自分で取りに行った方がよいです。

 パニエのよいところはとにかくその新鮮さ。私の注文しているところは基本的に朝に収穫したものを午後に配送という流れになっています。あと、自分で選んでいたら決して買わないであろう野菜や果物に出会えるのも楽しいですね。知らない野菜が入っていると、インターネットで調べたり、義母に電話をしてレシピを聞いたりしています。また、フランス語で「忘れられた野菜」と言われる、大量生産に向かなかったり、戦時中の食料だったりしたことからイメージがわるくなり、出まわりにくくなってしまった野菜たちがあり、例えば日本語名でキクイモ、パースニップ、セイヨウゴボウといったものなのですが、これらの野菜もパニエにはよく入っているので楽しいです。

 パニエに入っている野菜で例えばポタージュを作ると、野菜の味が濃いのでブイヨンなしでも大丈夫。水と塩だけのスープは、牛乳や生クリーム入りのポタージュに慣れている人にはもしかすると物足りないかもしれませんが、我が家は「美味しいねー!」と喜んで食べています。

 ちなみに値段は、あくまで私の主観ですが、BIOのお店で買う野菜と大体同じくらいだと思います。ただ、新鮮さではパニエが勝ちだなと思うことが多いです。ですから私の場合は、パニエをメインに、それで足りない野菜や果物をBIOのお店に行って買い足すようにしています。

 ただしパニエでちょっと困るのは、冬は、もはやジャガイモ祭りとしかいいようがないほど毎週大量にジャガイモが入っていること。ジャガイモが大好きなフランス人はグラタンやピューレなどにして大量に消費するらしいのですが、我が家はそんなにジャガイモを食べないので、冬の間はパニエの注文を減らしています。

これは秋のパニエなので、日本ではなかなか見かけない赤皮栗カボチャやビーツが入っていました
お店は普段はランチのみのレストランとなっています

 近所のBIOのレストラン「Le Local BIO」も独自にパニエを出しています。オーナーが気に入った畑と契約しており、毎週月曜日に「今週のパニエの中身は○○です」といった内容のSMSが携帯に届くので、買いたい場合はSMSで返信して水曜日にお店に取りに行きます。

 ここの特徴は肉とパンも出していること。我が家は肉をほとんど食べないことと、パンは自宅で作っているのでまだ注文したことがありませんが、買っている人は多いようなので美味しいのでしょう。

写真は夏のパニエなのでスイカやキュウリなどが入っていました。ここはパニエの量が少な目なのですが、味は抜群によいです

 パニエのほか、最近では産地直送野菜と果物の無人販売所「Au Bout du Champ」もできました。ここはパニエではなく、インターネット上で自分の好きな食材を選び、用意ができるとお知らせが来るので、お店まで取りに行くというシステムです。またはお店に直接行って、自分の食べたいものの番号を選んで買うこともできます。

 ここで扱う野菜、果物、卵などは、パリから100km以内にある農家で基本的にはその日の朝に収穫したもののみ。農家が作った瓶詰のスープやジュース、ジャムやお菓子も扱っています。すべてBIOではありませんが、提携している農家は製品と地球環境に最大限の配慮をしているとのこと。営業時間は無休のうえ、朝の8時から夜の22時までやっていますから、週末の朝は市場に行くより寝ていたいような、忙しいパリジャンたちに喜ばれそうですね。普段、お店は無人なのですが、私が見学に行った日はたまたま商品の補充に来ていたスタッフがいたので少し話を聞いたところ、売り上げは上々で、販売所をさらに増やす計画が進んでいるとのことでした。

お店の中はこのようになっています。欲しいものが決まったら、お店の奥にある機械に番号を打ち込んで清算をすると、該当する扉が開きます
せっかくお店まで行ったので、キャベツと洋ナシを買ってみました

私がパリに引っ越してきた13年前には、私の知る限り、パニエのサービスをやっていたのは数えるほどで、パニエの中身が今一つだったり、毎週必ず買わなくてはならなかったり、畑の作業を手伝うといった約束事があったりしました。それが今や、BIOのお店の増加とともに、パニエもこれだけ充実してくれて本当にありがたい限りです!

Le Campanier

 野菜のみのパニエ、果物だけのパニエ、どちらも入ったパニエがあり、1人用から4人用までのサイズがあります。
URL:http://www.lecampanier.com/

Potagercity

 BIOではない野菜や果物も入っていますが、そのためかパニエの量がほかより多め。味はもちろん美味しいです。
URL:https://www.potagercity.fr/

tousPrimeurs

 ここはパニエが生産者毎で分かれているのが特徴。BIOだけを扱う生産者もいます。
URL:http://www.tousprimeurs.com/

Le Local BIO

所在地:56 Rue de l'Aqueduc, 75010 Paris
電話:+33(0)1 72 34 73 54
URL(Facebookのページのみ):https://fr-fr.facebook.com/LeLocalBio/

Au Bout du Champ

所在地(現在は下記の3店舗):
4 rue Camille Pelletan, 92300 Levallois-Perret
20 rue des Dames, 75017 Paris
118 rue Caulaincourt, 75018 Paris
URL:http://www.auboutduchamp.com/

荒木麻美

東京での出版社勤務などを経て、2003年よりパリ在住。フランス人の夫と黒猫と暮らしています。2011年にNaturopathie(自然療法)の専門学校に入学、2015年に卒業。2016年は卒業論文を執筆しながらカウンセリングも少しずつ始める予定です。