旅レポ

食は台南にあり! 美食最強レストラン(前編)

驚きの巨大カラスミやナマコの肉詰め

台南にはたくさんの統治時代の建物が残っている。この建物は今でもデパートに

 親日で安全で、そして何よりおいしいもので溢れている台湾は、今や日本人に大人気。けれども、ほとんどの人は台北で過ごして帰ってしまいます。しかし、台湾人に聞くと、「台湾で美食の街といえば台南! 本当にうまいものは台南にある」のだそう。そこで、GOURMET TAIWAN台湾美食、経済部商業司、財団法人中衛発展中心の協力で実施されたグルメツアーに参加。グルメな台南の最強レストランを紹介します。

台南ってどんなとこ?

 北の台北、南の台南。東京と大阪みたいなものでしょうか? 台北から高速鉄道に乗って一路、台南へ。車両は日本の東海道新幹線と同じで、おまけに窓から見える景色は田んぼだらけ。新幹線にでも乗っている気分でうとうと寝込み、寝ぼけて「そろそろ富士山が見えてきた?」と起きた頃、台南駅に到着しました。

 台南の食事グルメを堪能する前に、ガイドブックで台南の歴史をお勉強。なるほど、1895年から日本統治が始まるまで、台湾の中心地は台北ではなく台南だったようです。そのため、街のあちこちに、いまだ統治時代やさらに古い建物が残っているのだとか。

 台湾の料理は中国の福建省から来た人たちの料理がベースになっているものの、日本統治時代も長かったことから、日本の影響も強く受けているので、油っぽくなくあっさりした味付けになったそう。「ん? ということは、台南料理はたくさん食べても腹が出ないってことね」と勝手な解釈をして、まずは一軒目の店へ!

ナマコにタウナギ……台南の伝統料理を堪能しよう。阿美飯店で見た驚きのメニューとは?

 お腹をペコペコにして訪れた台南最初の店は、60年の歴史を誇る伝統的な台湾の宴会料理が自慢の「阿美飯店」。現在のオーナーは2代目の祭■益さん(■は王偏に申)。

「うちで出す高級食材を使った台湾料理は、『酒家菜』と呼ばれるもので、昔ながらの手法で再現しています。すごく手間がかかるので、作れる調理人も少なくなってしまったんですよ」と祭さん。お父さんの祭崇廉さんは13歳から台湾の伝統料理の修業をしたそうです。

 細長い店の奥にある階段を上がると、すでにたくさんのお客さんが円卓を囲んで乾杯をしています。お隣のテーブルでは、お酒を注ぎ合い、部長らしき人のお話などがあったりして、会社の打ち上げのようです。

 店内をカメラでパチパチと撮っていたら、「ねえねえ、何しているの?」と隣のおじさんたちが日本語で話しかけてきました。台南でも日本語を話せる人が多いようです。「日本から取材に来たの」と答えると、「そうか、いいところに来たな。この店は確かにうまいぞ!」と満足そうにうなずく赤ら顔のおじさんたち。酒瓶が何本も並んですでにご機嫌です。「まあまあ、1杯」とお酒を注ぎ合うサラリーマンの姿に、一瞬、ここは新橋かと錯覚してしまいました。

大人気の「阿美飯店」。いつでも団体客の予約がいっぱい
ほがらかだが、やり手の2代目祭さん

さすが野生!? 肉厚カラスミの食べ方

 そうこうしているうちに、1皿目が運ばれてきました。おおっ! これはボラの卵巣を塩漬けにしたカラスミ!! 日本のものよりも肉厚です。「養殖ですか?」と聞くと「野生!」と答える通訳さん。なんだかワイルドな味がしそうです。ああ、日本酒が飲みたくなりました。カラスミを崩しながらチビチビ飲みたいところですけれど、仕事なので、台湾式にネギとダイコンを一緒にいただきます。濃厚なカラスミがこうして食べるとあっさり。健康にもよさそうです。

 続いて、三色前菜。台湾ソーセージに台南で獲れたカニと海老のすり身揚げ。ふわふわでジューシー。天然のカニや海老の味が濃厚で、お酒のあてにちょうどいいメニューです。

台南産カラスミ。前菜じゃなくて、最後に頼んでもいいかもしれない。というのは酒飲みのたわごと?
人気の三色前菜。手前右が台湾ソーセージ、左が海老のすり身揚げ、奥がカニのすり身揚げ

カニ味噌がたっぷり乗った贅沢おこわ

 最初はサラダ、なんてカッコつけないのが台湾料理。最初からどんどん飛ばしていきます。続いて出てきたのがカニ! 味噌たっぷりですが下はおこわ。前半にもう米! シメでもいいじゃないか! といぶかしく思えど、この湯気が立つカニたちに、完全にノックアウト。なにしろ、味噌もたっぷり入っています。

 ウェイターさんに「何という種類のカニ?」と聞いたら、首を傾げて「台南で獲れたカニ」と答えてくれました。ま、うまいので深追いはしませんがワタリガニのようです。身もぎっしり、おこわにネットリした味噌をからめると、口の中に甘みと苦味が広がり、絶妙な味にもう幸せです。このカニたち、よい育ちをしています。

カニをぎっしり敷き詰め、土鍋で炊いた贅沢おこわ。味噌とカニ肉とからめたおこわは最高です。

主役になった特大プルプルなまこを味わう

 カニおこわのおかげで幸せな気分になっていると、今までの人生で見たこともない、何やら恐ろしげな料理が運ばれてきました。黒い! そしてブヨブヨ!

「な、なんの生物ですか!?」
「これはナマコです」
「ナマコ!?」

 ナマコならお刺身で何度か食べたことあります。酢醤油で食べると、コリコリしていておいしいですよね。あと酢の物にキュウリと一緒にちょこっと入っているとか。そう、ナマコって前座か脇役なんですよ。主役として扱われた巨大ナマコにうろたえるのは、私だけでしょうか?

 ナマコは魚に攻撃されたときに肛門から内臓をペッ、と吐き出すのです。へんな動物。吐いちゃって大丈夫なの? と心配になりますが、ちゃんと内臓は1カ月くらいで再生するみたいです。気持ちわるい習性ですが、その内臓、塩辛っぽい味なので、チョビチョビ箸で突いて食べると美味しいのですよね。もちろん、日本酒片手にですけど。

「中身もナマコですか?」
「中は出した。ブタと魚を詰めた」

 ふむ、残念ながら、この黒いブヨブヨには煮込んだ内臓ではないようです。間近で見るとグロい。誰が考えたんだ? しかし、勇気を振り絞って一口いただくと……ナマコ、すごい!! ムニムニした食感の皮にもブタや魚の味が染み込み、トロトロです。そして思ったよりもあっさりして飽きません。

ナマコのブタ肉と魚詰め。卵あんかけ。プルプルした外観に、肌もプルプルになるだろうか? と妄想
タウナギのエキスが玉ねぎに染み込んでいて酒のつまみに最高です

 カラスミ、カニ、ナマコに続き、運ばれてきたのはタウナギの炒め物。私はウナギの独特なぬめりや香りが好きではないのですが、「台南ならではの料理です」というオーナーの祭さんの笑顔を前に食べないわけには……いきません。はい、いただきます。

 むむ、ぬめりも匂いもないけれど、香ばしい味がして玉ねぎにも味が染み込んでいます。後で調べたところによると、タウナギはウナギとは全く別物なのだとか。日本ではほとんど食べませんが、こんなにうまいのなら、田んぼや沼で捕獲して食べるべき食材でしょう。

 祭さんによると、ナマコやすっぽん、貝柱などは結婚式で出される食材とのこと。内臓を吐いたり、見た目もブヨブヨなナマコがどう御目出度い食材なのか分かりませんが、一度食べたら、クセになる台湾の伝統料理でした。

見た目も豪華な台南の伝統料理。隣のサラリーマンたちが、「そのナマコはこっちにないぞ。いいなあ」と覗き込んでいました

おいしいのは台湾料理だけじゃない! 市長官邸を大改造したフレンチレストランへ行ってみた

 油っぽい中華料理と比べ、あっさりして野菜たっぷりの台湾料理はいくら食べていても飽きません。しかし、たまには違うものも食べたくなるもの。そんなときは、台南で本格フレンチなんていかがでしょうか?

 台南まで来て、わざわざフレンチ? 東京にだっておいしいところ、いっぱいあるじゃないか! と言われそうですが、台湾のパン屋さんって本気でうまいのです。有名店でなくても、そのへんの街の小さなパン屋さんでさえ、もちもちで日本人好みのおいしいパンが次々と焼かれているのです。

 勝手ながら、「パンがおいしい国は、洋食も必ずうまい」というのが私の持論です。ベトナムだってそうじゃないですか。さっそく、台南で今年4月にオープンし話題になっている「パサデナ台南市長官邸」へ向かいました。

レストランの庭に何かいる!

 閑静な住宅街に、広い敷地の邸宅。ここはもともと、日本統治時代から官邸として使われていたのですが、現在の建物は、1974年に当時の台南市長が建てたものだそうです。しかし、そのあと誰も住まずに荒れ放題になっていたところ、「民間で利用してもらえないか」と公開入札があり、「パサデナ」が権利を得てリニューアルしたそうです。

気品あふれる「パサデナ台南市長官邸」の入り口
ここがレストランとは思えない広い庭。結婚式にも使えそう

 広い庭には、日本統治時代からある大木が木陰を作っていてロマンチックです。近くに寄ると、チュッと蚊に刺されました。どうせ私の血を吸うならうまいものを食べたあとの方がよいのにと、ポリポリと足をかきながら、入り口に向かうと……おや? 何か芝生にいます。

 ウサギにカニ、カエル、ブタも共生しています。

 そして錦鯉! よく見れば、なんだか不思議な光景です。

 シュールな置物たちに、妄想が浮かんでは消えていきます。支配人のお兄さんがやってきて、「ああ、これはアートなんですよ。しばらくしたら入れ替えるかもしれません」と教えてくれました。いえ、この作品、面白いので入れ替えないでほしいです。

2匹のウサギが目をギラギラさせて、錦鯉を狙っているようにも見えませんか?

フランスで修行を積んだシェフたちが競演!

メインシェフはまだ若い34歳の黄さん。フランスで修行した実力派

 さあ、さっそく中に入りましょう。外の光が射し込む、高い天井の素敵なダイニングに足を踏み入れると、短く髪の毛を刈り込んだシェフがオープンキッチンで格闘中。シンガポールとフランスで修行した経験のある黄國維さん、34歳。次々と並んだお皿に盛り付けていくのですが、その色や配置の素晴らしいこと。一皿一皿が美術作品のようです。

 黄さん、週に2回は、自ら市場の食材を見に行くそうです。「ここにいるシェフはみなすごい人なのです」という支配人の説明に、「てへへ」と照れていて、ちょっとかわいかったです。

 ではさっそく、黄さん率いるシェフたち渾身のお料理をいただきましょう。前菜には、カニ肉とアボガドの和え物の上に炙ったホタテを乗せたもの。バルサミコ酢とオリーブオイルをつけていただくシンプルな一品です。聞けば、ホタテはなんと北海道産。

炙りホタテ カニとアボガド和え添え。やっぱり北海道産のホタテが台湾の人の口にも合うようです

 “日本から来たのに!”と思うなかれ。台南の食材を中心に使っているけれど、地元産に固執せず、季節に応じて、海外の素材も組み合わせているとのこと。フレンチといっても、素材の味を引き出すため、味付けはずいぶんとあっさりです。

 次に桜のチップでスモークしたサーモンを68℃で調理した一品。低温で調理することでジューシーなままお客さんに出せるとのこと。南米のキアヌとの相性も抜群です。

 さすが台南、魚介が続きます。今度は、新鮮な台湾のイカが登場。シャキッとした台湾タケノコも重ねています。切れ目を入れ、さっと炙ったイカに……なぜ紅しょうが!? と驚いたのですが、カリカリのスペインソーセージでした。やわらかいイカとパプリカソースがよく合います。

 魚介だけでもすでにお腹がいっぱいですが、いよいよ肉が運ばれてきました。ニュージーランド産のラム肉は、一番おいしい背中の肉を使ったそうです。オレンジの果汁で炒めたクスクス、台湾の黄色いにんじんのさっぱりした味が、ラム肉の濃厚な味を引き立てます。オーナーの許正吉氏に聞くと、「海鮮類は台湾産、でも肉はやっぱり海外だね~」とのことでした。

スモークサーモン キアヌとキノコ添え。しっとりとしたサーモンとキアヌのプチプチした食感がたまりません
炙りイカとタケノコのパプリカソースがけ。上に乗った豆苗が味を引き締めます
ラムステーキ オレンジで炊いたクスクス添え。オレンジ味のクスクスは人生初でした

 ちなみに、「パサデナ」という店名は、許さんの息子さんが留学しているカルフォルニアの古い町の名前だそうです。「文化・アート・グルメの町で、遊びに行ったときにすっかり気に入りました。それで、文化とアートとグルメを会社の理念にして、街の名前をレストラン名にしたのです」と許さん。

 なるほど、アートといえば、先ほどの池の鯉ならぬ、芝生の錦鯉もその1つなのですね。お料理の盛り付けや色合いも一品、一品アートそのものです。

おしゃれすぎて食べるのがもったいない!

 さあ、いよいよラスト。フレンチの楽しみといえば、なんといってもデザートです。首を伸ばして待っていると、なにやら小高いスイーツが運ばれてきました。フランスで修行した美人パティシエの黄麗芳さんが現れ、「ここのデザートは、五感で楽しめるように作っています。今回は七夕が近いので、縁起のいい赤を使ったデザートを考えました」と説明してくれました。

季節のデザート。チョコとブラックベリー、いちじくとキャラメルといったさまざまな味が一品で楽しめる魅惑のスイーツ
美人パティシエの黄さん。やる気いっぱいの若い人たちに教えています

 ブラックベリーのシャーベットにいちじくとキャラメルのムース。金箔も乗っていて豪華絢爛。赤と金の組み合わせに、一口食べれば、リッチな気分。いいことがありそうな絶品デザートでした。

 素材本来の味を消さないように調理された台湾フレンチに、胃もたれせず、心も軽やか。本格的なフレンチは、私、途中で漬物が食べたくなるのですが、こちらは最後までモリモリといただけました。ふたりの黄さんと許さんにお礼を言って、レストランを後に。

 同じ敷地内にはベーカリーも併設されており、2008年にはベーカリーの世界大会で優勝したこともあるとか。パイナップルケーキや龍眼を使ったパンなどが並んでいて、地元の人に大人気だそうです。ぜひ、この日のために、スーツケースに一着、おしゃれな服をしのばせて、訪れてほしいお店です。ただし、庭をのんびり歩くなら、蚊よけスプレーを忘れずに。

炸蝦捲を食べることなく台南を語るべからず、海老好きは迷わず「周氏蝦捲」へ行こう!

「周氏蝦捲」の入り口。1階はカジュアルな雰囲気で、家族連れでにぎわっている

 台南に来たら「絶対」と念押しされたのが海老ロール。それも「周氏蝦捲」の「海老ロールが絶品らしいのです。台湾のおみやげベスト10にも入るという大人気の海老ロールを食べに、この日の夜は「周氏蝦捲」に向かいました。

 おや、訪れてみればずいぶん庶民的なお店のようで、1階はファーストフード店のように並んで注文するスタイルです。家族連れで賑わっていますが、階段を上がって3階のちょっと高級な宴会場へ。1階でも3階でも同じ海老ロールはいただけるようなので、お財布と相談してもよいかもしれません。

 席につくと「ようこそ日本から!」と、2代目の周志峯さんが迎えてくれました。気さくでさわやかなおじさまです。周さんによると、お父さんが台南名物の肉そぼろを載せた麺、担仔麺(タンツーメン)の屋台をはじめたのが1965年。それと同時に、宴会のケータリングも行なっていて、海老ロールは宴会席の一品として作っていたそう。

3階の宴会場に上がると円卓があり高級感。特別な日にはこちらへどうぞ
屋台から始まった「周氏蝦捲」の歴史。やり手の2代目によって次々と支店が

「当時の台湾の人の生活は貧しかったので、お腹が一杯になるように、昔の海老ロールは今よりも2倍の大きさだったんです。キャベツをたっぷり入れてね。けれども、生活がよくなってきたので、僕が1995年に兵役が終わり、父から屋台を引き継ぐと、海老ロールを改良して、キャベツのかわりにセロリやネギを使って食感を増し、海老に豚肉や魚のすり身も加えて洗練された味にしていきました」

これが、台湾で有名な「周氏蝦捲」の海老ロール。ブタの網脂を巻いている
これがうまさの秘密、豚の網脂! 「広げるとけっこう大きいでしょ」と周さん

 それでは、さっそく揚げたての海老ロールをいただきましょう。海老のプリッとした食感とネギのシャキシャキ感……それだけではありません。ジュワーッとジューシーな中身に対し、外はカリカリ。その秘密は豚の網脂! なのだそうだけれど、すみません、網脂ってなに?

「見たことありません」というと、調理場へ走っていた周さんが、白い塊を持ってきてくれました。え? これが? と思っていると、両端をつまんで、ベローンと伸ばすではありませんか!

 なるほど、まさに網! ちょっとグロテスクですが、家庭では使わないので見たこともない人もいるでしょう。いや、ほとんどの人が見たことないかもしれない。これは、豚の横隔膜なんだそうです。この膜を巻くことで、この脂が溶けて海老にも染み込んでおいしくなるのだとか。

「昔は担仔麺と海老ロール、スープくらいしかメニューがなかったのですが、徐々に増やしていきました。当時は従業員を雇うお金もなくて、家族経営だったんです」

 屋台から店に、両隣を買い、奥も買い、1階から2階、2階から3階へと徐々に大きくなった「周氏蝦捲」。今では高雄や台中などにも支店を増やし、全部で13店舗あるのだとか。

 ここですべての海老ロールを作るため、どの店でも同じ味を楽しめるそう。熟練した海老ロール職人は20人。1時間に150本の海老ロールを作るれるようになれば、もうベテラン。1日1万本の海老ロールが出荷されているそうです。まさに海老ロール御殿! 大変な出世です。

 海老ロールを語るだけで、話が終わってしまいそうなので、続いて海鮮パイの紹介をしましょう。パイというよりも、海老やイカ、タラのすり身にパン粉をつけて揚げたコロッケのようなもの。海鮮パイも海老ロールも、火焼蝦という種類のプリッとした食感の海老を使っているそうです。

 肉味噌と海老を乗せた台南名物の担仔麺。さっと食べられる小ぶりな汁入り麺です。担仔とは天秤棒のことを指すのですが、昔は天秤を担いで麺を売り歩いたことから、この名前が付いたそう。

 辛くはなくあっさりしているのが特徴で、日本人好みの担仔麺は、お父さんのレシピは変えずに昔のまま。さまざまな野菜から出汁をとり、特製醤油を加えたスープは最後まで飽きず飲め、麺はもちもちで肉との絡みは抜群。看板の海老ロールに負けず劣らず、私、これだけ食べに毎日通ってもいいと涙するほどうまいです。

海鮮パイ。外はカリカリで、中はしっとり。食感が楽しい一品
担仔麺。スープも飽きのこない味で、どんぶりも小ぶりなので、若い男子なら3杯くらいはいけるのでは

 続いてもう1つ、スープものが運ばれてきました。これまた透明のスープが美しい。海老と台湾では国民魚とも言われるらしいサバヒーという魚を使ったつみれ汁だそうです。日本でいうとイワシみたいなものでしょうか?

 塩味を効かせたスープに、素材の味を引き出したつみれのシンプルな組み合わせが、店の自信を感じさせます。お腹にも優しく、これは日本の胃が弱い人たちのためにも、ぜひ支店を出してほしいところ。

 最後に、「周さんの杏仁豆腐」が登場しました。ふわふわな口当たりと、甘く煮込んだ小豆はどちらも、口のなかでとろけます。これまた店の人気メニューだそうです。

途中、「なぜトンカツが!」と思ったら、これはカラスミ。日本産の二倍はあるのではないか?と思うほど巨大です。やはりネギはマストのようです。カラスミの分厚く贅沢な切り方に、台南って本当にカラスミ天国だなあ、とうらやましくなりました。阿美飯店のカラスミも絶品でしたが、こちらもしっとりして悶絶もの。店によって味が違うので、ぜひ頼んでみてください。

サバヒーと海老のつみれ団子のスープ。日本料理よりももしかしてあっさり?
周さんの杏仁豆腐。特選小豆がたっぷり。この組み合わせが絶妙です
トンカツではありません。周さんのカラスミです。でかい!

 いかがでしたでしょうか? 今回は台南の人気店舗を紹介してきましたが、次回は台南郊外のお店を紹介します。

白石あづさ

フリーライター。主に旅行やグルメ雑誌などで執筆。北朝鮮から南極まで世界約100カ国を旅し、著書に「世界のへんなおじさん」(小学館)がある。好きなものは日本酒、山、市場。