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JAL、プロテニスプレーヤーの錦織圭選手をプリントした特別塗装機「JET-KEI(ジェット・ケイ)」就航

3月4日からのフライトを前にデカール貼り付け作業を見学

2016年3月4日 就航

 JAL(日本航空)は2015年11月27日に、プロテニスプレーヤーの錦織圭選手と2020年までの長期パートナー契約を締結すると発表した。世界を転戦する錦織選手の移動をサポートするとともに、2016年よりイメージキャラクターとして錦織選手をCMなどに起用することは弊誌記事「JAL、プロテニスプレーヤー錦織圭選手とのパートナー契約を締結」でも紹介しているが、1900年から毎年行なわれている男子テニスの国別対抗戦「デビスカップ」が開催される3月4日から、錦織選手の写真でラッピングされた特別塗装機「JET-KEI(ジェット・ケイ)」を就航する。就航を前に、そのデカール貼り付けなどの作業を見学する機会を得たのでレポートする。

ボーイング 777-300ER型機を総数90枚の巨大なデカールでデコレーション

 東京モノレール「新整備場」で降車し、駅から地上に出ると右手にある巨大な建物が、羽田空港に隣接する機体整備工場「JALメインテナンスセンター1」、通称M1ビル。このM1の中で国際線仕様のボーイング 777-300ER型機が今回ラッピングされた。

 JALエンジニアリング(JALEC)の羽田航空機整備センター 業務グループの安藤一樹氏は「デカールの貼り付け作業は機体の塗装などを受け持つセクションで行なっている。この作業は非常に神経を使うものなので、専任ではないが慣れているスタッフでないとできない」とのことだった。今回の「JET-KEI」では約150×110cmのデカールを片側45枚、長さ約17m、高さ約4.5mに渡って装飾する作業であり、作業スタッフ10人程度で昼夜兼行、おおよそ3日間を要するそうだ。

初回訪問時にはすでにデカールの仮止めが行なわれていた。このあとに本貼りを行ない各デカール間や窓、ドアの部分にシーリングを施す

 デカールの貼り付け作業での留意点については「ともかくデザインを損なわないように位置について気を使っている。ズレたら直し、その繰り返し。そして可能な限り気泡が入らないように注意する必要がある」と安藤氏。また「特にズレで気をつかうのは機体後部に及ぶデザインの場合。航空機の機体は尾翼に向かい絞り込まれているので、いくら柔軟性が高いデカールシートとは言え、平面なものを曲面に貼り付けるので、ズレやシワが生じないように気をつかう」とのことだった。

 また、「一般のお客様にデカールを至近距離で見ていただくことは難しいが、シートには無数の穴が開けられている。これは、航空機の高度上昇に伴い客室内の気圧を上げることで機体が膨張するため、それによる剥離を避けるためのものであるが、自動車ガラスに貼るフィルムなどと違い、表面に液体を吹き付けておいて気泡を抜くような作業はない」とも教えていただいた。

気圧による機体の膨張時に剥がれてしまうことがないように、デカールのシートには無数の穴か開いている。機体に貼られているほかのデカールも同様
今回の「JET-KEI」になるのは登録記号「JA733J」の機体。そのマスキングテープを剥がしている模様。接写画像を見るとシートの穴が分かりやすい
グラフィックスは機体左右共通。錦織選手が客室ドア近辺に配され左側にラケット、そして錦織選手のサインがプリントされている

つい見入ってしまう「JAL工場見学~SKY MUSIUM~」も必見

 余談ではあるが、今回「JET-KEI」の作業を行なっていたM1は、JALが社会貢献活動の一環として無料で「JAL工場見学~SKY MUSEUM~」を実施している施設なので、短時間ではあるが見学もさせてもらった。昨今では空港内をバスで移動して乗機することも減ったので、大型旅客機を下から見上げると、その大きさにあらためて驚かされる。また整備場前は滑走路であり、取材当日も頻繁に目前で航空機が着陸するなど、飛行機好きには大きな感動を与えてくれるものではないかと感じた。

最近では下から見上げることが減った大型旅客機。至近距離で見ると、あらためてその迫力を感じる

 ほかにも、動態保存を望む声がありながら保管場所や展示場所の確保に難があることから解体された日本初のジェット旅客機「DC-8 富士(FUJI)号」の先端部分や垂直尾翼が保管されているのを見ることができた。ビートルズの来日時にも使用された「空の貴婦人」とも評されたDC-8。今後展示する方向で調整を進めているとのことだった。

保管されている「富士号」のコックピット部や垂直尾翼。操縦席上にあるガラス窓は、星の位置を確認して航行する天測航行に利用するものだとか
富士号のノーズにあるエアインレットはスーパーチャージャー。クルマのターボと同様に航行時のエアー圧でタービンを回し、エンジンへの混合気の過給圧を高める。

 この「JAL工場見学~SKY MUSIUM~」はインターネットからの予約が必要。JALの西岡氏に聞いたところ「予約受付開始は、見学日の6カ前の同一日9時30分からとなっているが、土日祝日はすぐに定員に達してしまうほどの人気ぶり」とのことだったが、展示エリア+航空教室+格納庫見学まで含めたコースなので航空機に興味を持っている方はぜひともとも足を運んでみてほしい。

「JAL工場見学~SKY MUSIUM~」にはファーストクラスのシートはもちろん、航空機に関するさまざまな展示がある。興味深いのはCAの歴代コスチューム。こんなに短いスカートだったのか、と記憶を辿ってしまうほど

日本を代表し世界の頂点を目指す錦織選手をサポートする

 長期契約締結時にも報道されているが、JAL広報部 メディアグループ 西岡秀訓氏にあらためて聞くと、錦織選手の特徴的な攻撃型プレースタイルと、テニスに対して真摯に取り組み、世界の頂点にチャレンジする姿勢は、JALが掲げる「チャレンジ」「プロフェッショナル」に通じることからパートナー契約を行なったとのこと。また、「JALブランドに対する世界的な認知と信頼性を高め、世界で一番お客様に選ばれ、愛される航空会社になれるようチャレンジしていく」とも。またJALは、男子テニスの国別対抗戦「デビスカップ」と女子テニスの国別対抗戦「フェドカップ」の日本代表チームのスポンサーでもあり、各大会開催地への移動をはじめ、公式ウォームアップおよびゲームシャツに社名ロゴ(JAL)を掲出し、日本代表チームを応援している。

 この「JET-KEI」は、3月4日のJAL43便(羽田空港~ロンドン・ヒースロー空港)で就航予定。その後、主に羽田、成田を発着する長距離国際線を中心に利用される予定だ。錦織選手のファンならずとも、日本のアスリートを応援する方はその姿を眺めてみてはいかがだろうか。

「JET-KEI」(画像提供:JAL)

(酒井 利)