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外務省、海外渡航邦人の安全対策を旅行業界と意見を交わす「テロ・安全対策に関する外務省トラベルエージェンシー会合」
外務省海外旅行登録「たびレジ」の普及を目指す
(2015/12/4 19:18)
- 2015年12月4日 実施
外務省は12月4日、11月13日に発生したパリ同時多発テロを受け、海外における邦人の安全対策のための旅行業界との特別会合「テロ・安全対策に関する外務省トラベルエージェンシー会合」を実施した。会合には、主催の外務省 外務大臣政務官 濵地雅一氏のほか、旅行会社と航空会社の14社27名の担当者らが一堂に会し、外務省から旅行業界関係者に対して年末年始の旅行シーズンを控えテロ・安全対策の徹底を働きかけた。
また、外務省は海外旅行の邦人に対し、現地で緊急事態が発生した場合に在外公館から安否確認や日本語で情報を届けることができる海外旅行登録システム「たびレジ」(https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/)の普及を目指しており、旅行業界関係者に「たびレジ」の登録推進にかかる協力を呼びかけ、本会合で意見交換を行なった。
会合の冒頭、濵地氏は「これから年末年始に向けて旅行シーズンが始まります。しかし、国際観光都市でもあるパリで先般、同時多発テロが起きました。私としても大変遺憾であります。これから旅行シーズンを迎えるにあたり、旅行業界、航空業界の皆様のご協力のもと、邦人の海外渡航の安全に万全を期したいと思います。
大切なのは、テロを恐れて内向きにならないことです。海外における危険をまず正しく認識し、危険に備える手段と知識をしっかり身につけることが大切です。そのための第1歩は“正確な情報の把握”です。まず、旅行者の皆様には外務省が発信している『海外安全情報』に注意を頂きたいと思っております。次に万が一に備えまして外務省の『たびレジ』に旅行先と連絡先を登録して頂きたいと思います。このような安全対策を講じたうえで有意義な海外旅行を大いに楽しんで頂きたいと思います。
そのためには、本日お集まり頂いた、旅行業界と航空業界の皆様のご協力が不可欠だと外務省としては考えております。『たびレジ』は、緊急時に外務省から日本語で情報を旅行者に伝えるものです。そして、安否の確認に必要な際の連絡先を登録して頂くという2点が大切なポイントです。先般のパリにおける同時多発テロの際には、実際に『たびレジ』は大きな効果を発揮しました。テロ直後の大混乱のさなか、しかもフランス語で情報が飛び交うなか、『たびレジ』は日本語で正確なテロに関する情報を発信できました。そのことにより、(『たびレジ』に登録していた)邦人の渡航者からは、『どこで何が起きているかを正確に把握することができた』という声を頂きました。緊急時には、やはり日本語での情報の発信が重要です。
この『たびレジ』は、もっと多くの方にご利用頂きたいと思っています。そのためには、旅行会社が主催するツアーの参加者にもこの『たびレジ』に登録して頂きたいと考えています。そのためのシステムとして、ツアーに申し込めば、自動的に『たびレジ』に登録できるような仕組みを検討しております。この点についても、皆様にご説明をしたうえでご理解を頂きたいと思っております」と本会合の趣旨を述べた。
現在「たびレジ」は、渡航者が自発的に登録するものになっているが、外務省は、これをツアーなどを申し込む際に希望すれば自動的に「たびレジ」に登録される仕組みになるよう目指しており、海外旅行関連企業の情報システムとの連携により渡航者を「たびレジ」に一括登録できる機能の整備を進めている。すでに海外旅行関連企業向けの連携インターフェースを11月2日に公開しており、2015年度末までに整備を行なう予定。また、登録の手間を省けるように、メールアドレスと情報を入手したい国を選択するだけで、簡単に登録できる「『たびレジ』簡易登録」の機能も11月25日より開始している。
会合の冒頭以外は報道陣に公開されなかったが(外務省のWebサイトで要旨は公開予定)会合後、インタビューに応じたある旅行会社の取締役は、年末年始の旅行シーズンでの安全対策は万全にするという姿勢を改めて表明したほか、「たびレジ」とのシステム連携に関しては、以下の内容について検討していく必要があると述べた。
・「たびレジ」と自社のシステムが連携できるか技術的な検討が必要
・自社で管理している個人情報を外部に渡すことになるので、プライバシーの問題など顧客にどう説明するか?
・海外旅行時にスマートフォンなど情報端末を持っていない、持っていても料金などの問題で海外ローミングをしていない、現地の回線契約をしていないなど、メールを受信できない場合にどう対応するのか?
旅行会社によって、すでに同時多発テロ発生前から「たびレジ」への登録を積極的に顧客に勧めている場合や、同時多発テロの発生を受けてこれから取り組みを本格化させるなど、「たびレジ」への取り組みに対しては、現在のところやや温度差があるようだが、旅行業界として同時多発テロの教訓もふまえて改めて安否確認や情報提供が重要であるという認識は一致しており、今回の会合での説明をもとに、各社で「たびレジ」をどう導入していくか、今後は現場レベルでの検討が進められていくようだ。