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ANA総合研究所、アルザス・欧州日本学研究所と協力覚書を締結

日本とアルザスの友好促進イベント「ふれあいウォーク」も開催

2015年11月9日 実施

 11月9日、ANAグループにおいて航空事業の調査研究を行なっているANA総合研究所がフランスのアルザス・欧州日本学研究所(略称:CEEJA)と協力覚書を締結。都内で共同記者会見を実施した。また、企画されているアルザスを歩くウォーキングツアー「フランス・アルザスふれあいウォーク」の概要についても紹介する。

CEEJAとの提携の意義を語るANAホールディングスの片野坂真哉 代表取締役社長

 今回の記者会見ではまずANAグループからCEEJAについての説明が行なわれた。CEEJAとは日本とフランス・アルザス地域圏の経済や学術、文化交流を推進するために、地元であるオ・ラン県とアルザス地方政府主導で2001年に設立された機関。ANAグループの説明では、ヨーロッパでトップクラスの日本学研究を行なうだけでなく、日本企業の進出や経済活動を支援しており、フランス、ヨーロッパ、日本に100以上の協力関係機関があるとのこと。

 説明のあと、ANAホールディングスの片野坂真哉 代表取締役社長が「ボンジュール!」と挨拶。最初に「ANAとCEEJAとは中部経済連合会(中経連)の欧州訪問を通じて接点が生まれました。その後、関係が発展しまして本日になったわけです」とANA総合研究所とCEEJAの両研究所が協力関係に至ったきっかけについて述べた。

 また、片野坂社長はCEEJAのあるアルザス地方が、地理的に欧州大陸の中央に位置していること、文化面において「欧州の心の中心」と言われていること、そしてフランスのパリ、ドイツのフランクフルト、ミュンヘン、デュッセルドルフ、ベルギーのブリュッセルといったANAが乗り入れている都市の中間地点にある重要な拠点だと指摘。「ANAグループとこうした欧州の各地の知見や地理的なネットワークを活用し、多面的な繋がりが一層深まっていくものと期待しております」と語った。

 今回発表された両研究所の覚書の内容は4項目。ヨーロッパにおけるANAグループの知名度向上と日本におけるアルザス地方の知名度向上に繋げる「日欧間の相互理解促進と認知度向上」。CEEJAとANAグループが日本、ヨーロッパ間における産品輸出入を促進するために行なう市場調査に協力する「産品輸出入の促進」。アルザス地方の学生を日本に、また日本の学生をアルザスに派遣して研修を行なう「学生の研修プログラム」。ANA総合研究所の日本地方ネットワークを活かしてヨーロッパと日本の橋渡しを行ないつつ、CEEJAはANAグループのヨーロッパにおける観光促進プロジェクトに協力するという「日本の地方とアルザス地方の橋渡し」だ。

 片野坂社長は「CEEJAや欧州の若い学生さんから見た日本の魅力、あるいは今度は日本の方から日本の良さをCEEJAや欧州の大学を通じて発信。結果として日本各地へのインバウンドの増加、お互いの文化や物流の促進に繋げたいと考えております」と、今回の締結によって、訪日客の増加や文化交流、物流の拡大へ取り組む旨を語った。

 また、CEEJAにはヨーロッパ市場への参入や事業拡大を目指している日本企業向けの制度として、研究員の受け入れや事務所提供、日本語対応が可能なスタッフによる協力などを行なう「ビジネスインキュベーター制度」が用意されている。片野坂社長はこの「ビジネスインキュベーター制度」を活用して、ANAグループの取り組みを加速させたいという。

CEEJAの協力でアルザスを歩く「アルザスふれあいウォーク」も企画

アルザスの豊かな自然と文化が堪能できる「アルザスふれあいウォーク」も企画

 今回は協力覚書の締結だが、本提携に先駆けて、アルザスを歩くウォーキングツアーも発売する。CEEJAの協力のもと、ANAグループのANAセールスで「アルザスふれあいウォーク」を新規に企画。アルザスのCEEJAを出発し、ヨーロッパの美しい村30選に選ばれたリクヴィル市までの約6kmを、日本語を学ぶ現地の学生とともに自然や街並みのなかを歩いていくツアーだ。

 ANAによるとCEEJAの協力で現地での開催準備やルート選定が行なわれ、企画が実現したという。ブドウ畑や中世の色合いが濃く残る街並みを2.5~3時間かけて歩き、歩いたあとはアルザスの地方料理やワインが楽しめる夕食を予定しているとのこと。実施日は2016年9月4日で、ツアーの発売は2016年1月中旬を予定。また、送客目標人数は200人として企画販売していくという。

意外にも長い日本とアルザスの交流の歴史

日本とアルザスの交流について説明するオ・ラン県議会のエリック・ストロマン議長兼知事

 片野坂社長に続いて、アルザスのオ・ラン県議会からエリック・ストロマン議長兼知事がスピーチを行ない、アルザスと日本の長く密接な関係について説明。

 ストロマン議長兼知事は「アルザスはヨーロッパのなかでも最も早く日本と直接交流を持った地域の1つでございます。古くは19世紀の後半にさかのぼり、すでに1863年から大阪の反物業者さんがアルザスの繊維業者、とりわけ素材では当時の世界的都市だったミュールーズの業者とコンタクトを取りまして、日本市場向けに私どもの地域で和柄をプリントした毛織物の生産を依頼したのです」と歴史の深さを語った。

 また、経済面においてもストロマン議長兼知事は、この30年の間にソニー、シャープ、三菱重工業などといった日本企業がアルザスに進出したことを話し、日本とアルザスの結びつきの深さを強調。文化交流についても「オ・ラン県の県議会では1980年代に名古屋市近郊の犬山市にある野外民族博物館『リトルワールド』にアルザス地方の家を寄贈し、ストラスブールには日本館を設立しました」と述べた。

 ほかにも、アルザスと日本との結びつきの深さを示すトピックを紹介。アルザスの伝統織物を受け継ぐボーヴィレが近日中に東京にブティックをオープンすること、アルザスのワイン街道と岐阜県・飛騨地酒ツーリズムとの友好宣言を取り交わしたこと、日本旅行業協会のフランスを代表する魅力ある街としてアルザスのリクヴィル市が選出されたことなど挙げた。

片野坂社長が手にしているのはボーヴィレ社のテーブルクロスとアルザスの始まりのシンボルであるコウノトリのぬいぐるみ
記者会見ではアルザスの名産品であるワインがふるまわれた

調印式後はアルザスのワインで乾杯

 ANAホールディングスの片野坂社長とオ・ラン県議会のストロマン議長兼知事の挨拶が終わったところで調印式へ。式にはANA総合研究所の長瀬眞 代表取締役社長とオ・ラン県議会のオリビエ・ベシュト副議長兼副知事も参加して調印を行なった。

調印書にサインをするANA総合研究所の長瀬眞 代表取締役社長
オ・ラン県議会のオリビエ・ベシュト副議長兼副知事もストロマン議長兼知事とともに調印
片野坂社長もサインし、無事に調印式は終了
調印後、片野坂社長からストロマン議長兼知事にANA機のモデルプレーンが贈呈された
「アルザスふれあいウォーク」のゴール地点であるリクヴィル市について説明するダニエル・クラッグ市長

 その後、フォトセッションではリクヴィル市のダニエル・クラッグ市長とティエリー・ダナ駐日フランス大使も登壇。

 クラッグ市長は「リクヴィルはアルザスのブドウ畑の中心に位置していまして、その中世的な様相を完全な形で残している街。イベントもたくさんございまして、ワイン祭りや最も有名なのがリクヴィルのクリスマスという催しで、たくさんの人が来ています」、とリクヴィル市の魅力を語った。

乾杯の音頭を取るティエリー・ダナ駐日フランス大使

 そして、調印式の締めとしてフランス流にワインで乾杯の運びに。アルザスのワイン「ヒューゲル・ジョンティ」は取材陣にもあらかじめグラスで配られていたが、会場の登壇者にもふるまわれた。このワインは片野坂社長いわく「非常にしっかりとした酸味でスッキリとした味わいが素晴らしい」とのこと。今年の3月からANAの国際線のビジネスクラスで提供されているという。

 ワイングラスを手にしたダナ大使が「日本とアルザスのために、さらに日本の方々がいろんな目的でフランスにおいでになることを祈念いたします」と音頭を取り、会場全体で乾杯。

 その後、質疑応答でヨーロッパからの訪日客の増加について聞かれた片野坂社長は「前年比でプラス80%」とコメント。「ヨーロッパの人は日本の歴史や文化を大変興味深く、日本のそういうゆかりの地に、地方も含めて足を運ぶと言われております。こういった意味で、今回の提携にふさわしい流れは特にヨーロッパは期待できると思います」と述べた。

 これまでも日本とアルザス間の経済、学術、文化における交流や推進を行なってきたCEEJA。今回の連携でANAを使った訪日客の増加はもちろん、物流への効果、ANA日本グループ主体での文化の発信などANAグループのメリットになるところは大きいだろう。またヨーロッパから日本へだけでなく、提携によってアルザス地方へのチャンネルやツアーが確立されれば、将来的にアルザスに行きたい日本からの観光客にとってANAを利用する動機にも繋がりそうだ。

登壇者はもちろん会場全体で乾杯

(丸子かおり)