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北陸新幹線「E7系」「W7系」に鉄道友の会からブルーリボン賞を授与

JR東日本、JR西日本両社が白山総合車両所で受賞式を実施

2015年10月24日 実施

鉄道友の会による2015年ブルーリボン賞を受賞した、北陸新幹線のW7系(左)、E7系(右)

 鉄道愛好家団体である鉄道友の会は5月17日、2015年の「第58回ブルーリボン賞」に、北陸新幹線で運行しているJR東日本(東日本旅客鉄道)の「E7系」、JR西日本(西日本旅客鉄道)の「W7系」を選定。これを受けて10月24日、石川県の白山総合車両所において、JR両社が「E7系・W7系新幹線電車 鉄道友の会ブルーリボン賞受賞式」を実施した。

 ブルーリボン賞は、前年に営業を開始した鉄道の新造車両、改造車両のなかから、もっとも優れた車両に授与する賞で、1958年(昭和33年)から始まった。2015年は、鉄道友の会の会員から選抜されたメンバーによる選考委員会が選出したノミネート車両13形式に対して、会員投票を実施。結果、E7系/W7系が1位の得票数となった。これに基づき選考委員会が選考、審議を行なったうえで、E7系/W7系新幹線電車をブルーリボン賞に選定した。

JR西日本の北陸新幹線の車両基地である白山総合車両所
受賞式の会場にはE7系、W7系が並べられた
鉄道友の会 会長 須田寛氏

 石川県の白山総合車両所で実施された受賞式では、冒頭で鉄道友の会 会長の須田寛氏が挨拶。「北陸新幹線は今年の3月に開業し、毎日多くのお客様にご利用いただいているが、車両の開発については北陸線という特別な事情の条件があり、たいへん難しい、いろんな課題を解決した車両である。例えば、非常に勾配が強く、1000分の30の勾配が相当距離ある。電気の周波数が50Hzと60Hzに渡って3度の切り替え点があり、これに対する切り替え装置や両方のサイクルに動作可能なモーターを搭載するなど、そういった工夫がある。そしてまた、豪雪地帯を通っているので、耐雪設備も非常に強化されている。そのような厳しい条件を克服して、こういった車両にまとめられた」とハード面の優秀さを評価。

 加えて、「同時にこの車両のコンセプトは『和』。この『和』には伝統と未来を繋ぐ『和』、沿線の景観や環境と車両を繋ぐ『和』、お乗りになっているお客様と車両を繋ぐ『和』。こういうものが大事だと思う。その点についてこの車両は、『和』に重点を置いて、デザインにおいても設計においても、その美が活かされたものと思う。この車両の開発は、JR東日本、JR西日本、車両メーカー、デザイナーの方などあらゆる方々の努力の結晶であり、それらの方々の努力に心から敬意を表し、お礼を申し上げる。これからますますこの車両を皆様に親しんでいただいて、使命を果たしていただくよう心から念じながら私の挨拶とたい」とデザイン、コンセプトの面でも賛辞を送った。

KEN OKUYAMA DESIGN代表 奥山清行氏

 続いて、来賓祝辞を行なったE7/W7系のデザイン、監修を行なった工業デザイナー、KEN OKUYAMA DESIGN代表の奥山清行氏は、「昨年(2014年)3月15日に長野新幹線においてこの車両が営業運転を始めて以来、いろんなデザインの質問をいただいている。テーマに関しては、“和の未来”をテーマに据えて、日本の様式美、技術の先進性の2つを融合させて、日本の未来を見据えた新幹線の車両を作ろうと、開発に関わる者すべてが心を1つにして車両の完成まで携わってきた。そのなかで、このテーマの話をすると1日いただいても語り尽くせないぐらいの、いろんな技術と、北陸の文化がこのなかに込められている」と車両のコンセプトを紹介。

 続けて、「白が九谷焼の磁器の白であったり、大陸から渡ってきた古来の青銅文化が北陸において花開き、それを象徴する金属文化の象徴としての銅の色。青は太平洋とは違う日本海の青、空の青。これを象徴しているが、実は開発秘話としては、金沢にある成巽閣の群青の間の非常に素晴らしい青に開発陣一同感銘を受け、この青の色をこのなかに込めている」と具体的なポイントを紹介した。そして、「日本の技術を、未来を見据えて車両のなかに込めたつもり。これを成し遂げられたのも、近畿車輛、総合車両製作所、日立製作所、川崎重工業と皆さんと一緒に作ってきたが、現場の皆さんの底力が、世界に胸を張って誇れる車両として結晶したのではないかと我ながら思っている」とした。

 さらに「私事ながら、山形の駅で裏で、保線区のなかで育った。地方の者にとって新幹線が来るというのは、とてつもない夢が実現することであり、山形新幹線が一番最初に吹雪を縫って現われたときの感激というのを今でも覚えている。こうやって地方とあるいは首都圏と金沢とを2時間28分で結ぶ。これによって日本の経済の活性化にほんの少しでも寄与できれば、私ども開発陣にとってこれほどうれしいことはない。デザインをとおして新しい顧客価値を作って、社会貢献をする。これがデザイナーに与えられた使命だと思っている、今後もますます精進してまいりたい。関係者の皆様へのお礼の言葉をもって祝辞の言葉に代えさせていただきたい」と挨拶を締めた。

鉄道友の会 副会長 兼 選考委員長 柚原誠氏

 次に、鉄道友の会 副会長で選考委員長を務めた柚原誠氏が選考過程の報告を行なった。選考委員会では、「利用のしやすさ」「利用者への親切」「デザインと機能性の整合」「乗ってみたいという魅力」「環境対応」「新技術の有効活用」「安全性」「信頼性」といった視点で選考、審議を行なっていると紹介。

 その選定の理由を「E7系/W7系は、運用線区に連続急勾配があり、降雪量が多いという厳しい条件のもとでも安定輸送を確保できるように、安全性と信頼性の高いシステム、機器装置を開発して採用。社内外のデザインでは和風の優れた感覚を取り入れている。世界をリードする我が国の高速列車技術と和風の美しいデザインが調和したE7系/W7系新幹線電車は、安全で快適な日本の高速列車を強く印象付けている。私ども選考委員会はこれらの点を評価し、E7系/W7系新幹線電車を2015年のブルーリボン賞に選定した」と説明した。

 ここで、鉄道友の会の須田会長から、JR東日本 代表取締役社長 冨田哲郎氏、JR西日本 代表取締役社長 真鍋精志氏に表彰状を授与。続けて、鉄道友の会 副会長の久保敏氏、松田清宏氏が、JR東日本 執行役員 鉄道事業本部 運輸車両部 部長の太田朝道氏、JR西日本 鉄道本部車両部 部長の牧原弘氏へ、記念の盾を贈呈した。

鉄道友の会の須田会長からJR東日本の冨田哲郎社長への表彰状授与
鉄道友の会の須田会長からJR西日本の真鍋精志社長への表彰状授与
鉄道友の会の久保敏副会長からJR東日本の太田朝道氏への記念盾贈呈
鉄道友の会の松田清宏副会長からJR西日本の牧原弘氏への記念盾贈呈
左から、JR西日本の牧原弘氏、真鍋精志社長、JR東日本の冨田哲郎社長、太田朝道氏
東日本旅客鉄道株式会社 代表取締役社長 冨田哲郎氏

 JR東日本 代表取締役社長 冨田哲郎氏は受賞に対し、2点強調したいことがあるとした。1点目は「JR西日本とJR東日本の2社が協力して、お互いのこれまで培ってきた技術や経験を融合させたこと。未来に和の技術、和の未来という話があったが、まさに日本の未来の技術を、2社のこれまでの経験、技術を活かして融合させた。この点に大きな意味があると思う」として、車両製造メーカー各社や奥山氏への感謝の意を示した。

 2点目は「日本の新幹線の技術は1964年の東海道新幹線開業以来、51年の積み重ねがある。この蓄積のなかで、E7/W7は存在している。私どもの新幹線の現在の技術、そして地域に根付いた新幹線は、多くの先人達のたゆまぬ努力の積み重ねから生まれたものであると改めて感じている。おかげさまで開業以来多くの方にE7系/W7系新幹線を利用いただいている。これからもさらにJR全体の新しいお客様の流動を作ることによって、地域を活性化し、日本全体が元気になるよう目指していきたい」と述べた。

西日本旅客鉄道株式会社 代表取締役社長 真鍋精志氏

 JR西日本 代表取締役社長 真鍋精志氏は「北陸新幹線を開業して半年が過ぎたが、大変好調。東京から金沢、大阪、そして大阪から金沢と、この大きな三角形が2時間半の時間距離の正三角形になった。そのことがもたらしたインパクトは、北陸にとっては、人の動きとして大きなインパクトあるものであったと思っている」と開業の意義を改めて紹介。

 続けて「おかげさまで昨年(2014年)に比べて、首都圏行きの便は3倍ほどの量になっており、想定よりご好評いただいている。また、半年の間に、本日もそうだが、天皇皇后両陛下にもご利用いただき、北陸に2回、この新幹線をご利用いただくという栄誉に浴した。JR東日本さんと一緒に運転させていただいているが、このような新しいお客様の財産をきちんと普及をし、盤石で快適な新幹線にさせていただくことに、この受賞の栄誉を機にさらに努力していきたい」と決意を表わした。

 最後にJR東西両社長と奥山氏、鉄道友の会、車両製造メーカー各社の来賓によるテープカットを実施。赤い尾灯を点灯して背後に待機していたE7系、W7系が、テープカットの瞬間にタイフォンを鳴らし、前照灯へ切り替えるという演出も行なわれ、ほかの列席者による大きな拍手のなか受賞式は幕を閉じた。

JR東西両社長と奥山氏、鉄道友の会、車両製造メーカー各社の来賓によるテープカット
テープカットの瞬間、後方のE7系/W7系新幹線電車がタイフォンを鳴らし、前照灯を点灯
フォトセッション
JR東日本(写真左)、JR西日本(写真右)への表彰状

(編集部:谷川 潔/編集部:多和田新也/Movie:石岡宣慶)