ニュース

ハワイ州観光局、日本とハワイの旅行業界を結ぶ商談会「Hawaii Summit 2016」開催

2020年に200万人を目標。JTB、H.I.S.、楽天によるディスカッションも実施

2016年4月11日~15日(現地時間)開催

 ハワイ州観光局は、米国ハワイ州オアフ島のハワイ・コンベンションセンターで、日本の旅行業界と、現地のサプライヤーによる商談会「Hawaii Summit 2016(ハワイサミット2016)」を4月11日~15日(現地時間)の日程で開催している。

 Hawaii Summitは今年初めて開催されるもので、旅行代理店をはじめとする日本の旅行業界、ハワイ現地のホテルやアクティビティ提供会社などとの商談会ならびに懇親会、ハワイの隣島への研修ツアー、アクティビティ体験などを行なうことで、日本の旅行会社にハワイ商品企画や販売、営業活動のヒントを得てもらうことを目的としている。

ハワイの伝統儀式に則って幕開け

 本格的な幕開けとなる12日には基調講演が行なわれ、ハワイ・ツーリズム・オーソリティ プレジデント/CEOのジョージ D.シゲティ氏が、「ステークホルダーである皆さまが力を合わせて、旅行業界の皆さまにとってエキサイティングでよいものにしたい。今回初めての試みなので楽しみにしている」と挨拶。「日本とハワイは友情、親善で成り立つ深い関係がある。日本の影響はハワイの日常、食生活、ファッションなどでも見られる」と日本のハワイの関係を紹介し、自身も母親が福岡出身で、現職に就いて最初に訪れたのも日本であったことを紹介した。

ハワイ・ツーリズム・オーソリティ プレジデント/CEO ジョージ D.シゲティ氏
ハワイ・ツーリズム・オーソリティ COOのランディ・ボルディモア氏

 続いて、ハワイ・ツーリズム・オーソリティ COO(最高執行責任者)のランディ・ボルディモア氏が、ハワイ観光促進のための取り組みを紹介。ハワイのことを学習できる「アロハ・プログラム」、新たにスタートした「有休ハワイ」といったプロモーションキャンペーンのほか、モバイルに特化したWebサイトやVR(仮想現実)を使ったアプリなどハワイのことを効率的に伝えられるプラットフォームを作って行くことを説明した。9月に行なわれるハワイ・ツーリズム・カンファレンスでは、パートナーなども含めて、情報提供に関するさらに新しいアプリなどが紹介される見込みだ。

 ハワイの観光については、4年連続で訪問客が増えており、外国では日本人がもっとも多く「我々にとってあなたがた日本人はとても大切な顧客」と謝意を示した。

ハワイの情報提供を行なうためWebサイト、アプリ、VRで新たなデザインなどを取り入れる
ハワイを学習できる「アロハ・プログラム」
現在進行中のキャンペーン「有休ハワイ」
ハワイへの訪問者数などのデータ
国別ハワイ訪問者数
ハワイ州観光局 局長 エリック高畑氏

 次に、日本からハワイ州観光局 局長のエリック高畑氏がハワイの日本市場について説明。2016年2月の実績で、日本からの渡航者数は前年比103.6%。消費額は1日あたりで93.9ドル、全体で95.2%と若干落ち込んだが、これは為替レートの影響も大きいとした。座席提供数は94.8%と微減。滞在日数は101.4%となった。

 競合訪問先のデータとして2016年1月のデータが紹介され、ベトナム、香港、台湾が二桁のパーセンテージで伸びており、ハワイの6.4%を上まわった。ハワイ州観光局では、JATA(日本旅行業協会)と結んだMOUのなかで、2020年に200万人のハワイ訪問客を目指すとしている。一方、日本から海外への全渡航者数は2015年は1600万人台となっているが、これを2000万人とする目標も立てられている。2016年1月の実績で、ハワイへの渡航者シェアは9.31%となっており、これを10%に引き上げることで、2020年に200万人の目標達成を果たしたいとの考えを示した。

 また、今回が初開催となったハワイサミットについては、来年以降も毎年開催したいとの意向も示している。

旅行業界のキーマンによるパネルディスカッション

 主催者代表による挨拶に続き、基調講演が行なわれた。基調講演の前半は、JTB、H.I.S.、楽天の代表者3名が参加したパネルディスカッションで、トラベルボイス代表取締役社長の鶴本浩司氏をモデレータに「ハワイ市場を(さらに強くする)3つのキーワード」と題し、「いま起きていること」「これから起きること」という大きく2つの議題で各社の考えが語られた。

モデレータを務めた株式会社トラベルボイス代表取締役社長 鶴本浩司氏
パネルディスカッションの議題

いま起きていること

株式会社JTBワールドバケーションズ代表取締役社長 井上聡氏

 まず触れられたのが「いま起きていること」で、ハワイの旅行市場を議題にした。JTBの井上氏は訪問者数、島別来島者数などのデータを紹介。2015年の日本人のハワイ訪問者数は2000年に180万人近かったが、現在では150万人ほど。2011年から2015年にかけてやや伸びている傾向にあるが、一方で全体渡航者数は1800万人台から1600万人へと下がっており、そのなかでハワイは人数を維持していることを紹介。

 島別来島者数はマウイ島、ハワイ島などで減少傾向。これは2008年にアロハ航空が撤退し低価格なインターアイランド便がなくなったこと、JALがコナ線から撤退しオアフ島以外への日本からの直行便がなくなったことを理由として挙げた。

 このほかコンドミニアムやタイムシェアの利用者が増えているほか、旅行会社利用比率が2000年では9割ほどだったのに対し、2015年には68.4%とFIT化が進行。支出額もそれほどは変わっておらず、「日本人のハワイに行く意欲は低下していないし、ハワイで支出もして楽しまれているところを見て取れる」とまとめた。

株式会社エイチ・アイ・エス代表取締役社長 平林朗氏

 H.I.S.の平林氏は、中国、韓国が政治的に難しい市場になり、東南アジアでも大きな市場だったタイがやはり難しくなっており、「そんななかでハワイは安定的かつ返金販売単価が高い市場」とし、毎年高額な広告費をかけ、専門店を開設するなど注力していることを紹介。

 現在は、スポーツやMICEなどでの団体客に力を入れており、エコツーリズムのリソースも豊富なことから需要喚起に投資をしているという。「今年も夏にハワイを中心に据えて大きなキャンペーンをやる。日本からの海外旅行全体は厳しいが、ハワイは毎年上がってきているので、この市場を伸ばせるよう頑張る」とした。

株式会社楽天 執行役員 トラベル事業長 山本考伸氏

 楽天の山本氏は「羽田国際化などで海外旅行が身近になって特別なことではなくなっている。東京からハワイは3泊4日で来られる」という海外旅行そのものに対する認識の変化に加え、「スマホやSNSがあるのは大きく違う。Googleマップにアクセスできるか、SNSで気軽に聞けるか、それのない海外旅行がどうなるかが想像しにくくなっている」という周辺環境の変化に言及。

 現在は海外旅行に行くことそのものではなく、「なにをするか、どんな写真をFacebookやInstagramに上げられるかが大事。日本人の海外渡航者が伸びないなかでハワイはキープしており、ほかの海外旅行先と比べてよい体験をして、リピーターにつながっている」とした。

これから起きること

 続いて、これから起きそうなトレンドや流れについて議論。モデレータの鶴本氏はこの議論に対し、「プレシニアなどの新しいセグメント」「スマホが旅行を変えており、旅前、旅中、旅後のうち、以前は旅前に手配がほぼ完了していた傾向が、旅行中に情報にアクセスできるスマホの普及で旅中での手配も広がっている」といったキーワードを挙げた。

 H.I.S.の平林氏は「これからシニアになるプレシニアに力を入れていく。我々の取り扱いのなかで、シニア層にはヨーロッパに毎年2~3回行かれる活発な層があり、こういう方々にハワイに来てもらえるように仕掛けをしていきたい」と説明。

 続けて、「言い方はよくないかもしれないが、終活という言葉が流行っているが、家族、孫全員を連れてきて、盛大に人生最後の旅を楽しんでいただこうという考えがある」と紹介。モデレータの鶴本氏も「葬式がエンタメ化しており、故人の動画を流したりする。生前の元気な姿で家族に囲まれた映像を作るうえで、絵になるハワイは優位性が高い」と共感した。

 楽天の山本氏は、「メインのお客さまは20~40代の夫婦やカップルが多い。その方達にどれだけこだわって楽しんでもらうか、部屋のアップグレード、バルコニーでなにをするかといった体験が重要で、至れり尽くせりなサービスはないが、滞在中の経験をよくするための電話窓口を設けている。これもスマホがあるからこそできるサービス」とし、旅行中により経験を高めるための動きに対応できる体制であることを紹介した。

 JTBの井上氏は、「リピーター率が上がっており、コンドミニアム、タイムシェアを使う人が増えており、ハワイをよく知った人が増えている。エアラインが航空券を直販して、ホテルをWebで売る。そういう流通が増えているので、このFIT化に対してどのような商品を売るかが旅行会社にとって重要と考えている」としたうえで、「ハワイをMICE訪問先とするトレンドが増えると思う。また日本で重要なのは若者が海外に出にくくなっていることで、10代の若いうちに海外を経験していただくためにもハワイを中心とした教育旅行を考える」と、今後の形成していくトレンドを説明した。

 ここで鶴本氏から「オンライン化」について、それぞれの考えが問いかけられた。

 楽天の山本氏は「オンライン専業から入ったからかもしれないが、Webサイト上だけでなく、電話という人の声でつながるサポートの価値が上がっていると思っている。Webサイトで予約している人に楽天を選んだ理由のアンケートを取ると、24時間サポートセンターが電話であることもよく挙がる。こちらからのプッシュはないが、困ったときに聞いてくださいというサポートは重視したい」とした。

 H.I.S.の平林氏は「ハワイでは(ポイントシステムの)レアレアポイント、GPSで位置情報が分かるレアレアトロリーも走らせており、滞在中に楽しんでもらえるよういろいろなことをやっている。楽しいことを提案させていただき、FacebookやInstagramに進んでアップされることでより広まる」と、滞在中の体験向上にスマホなどの新しいデバイスを活用する考えを示した。

 JTBの井上氏は「日本の市場ではまだまだパッケージ旅行が多く、ほとんど紙のパンフレットで展開しているところも多い。おそらく早々に紙は限界に達する。紙には動画も載せられない。スマホ対応した旅前情報の提供もより重要になる」とほか2名とは異なる視点でのWebの重要性に言及した。

ハワイを(さらに)強くする3つのキーワード

 最後に、各社それぞれが「ハワイを(さらに)強くする3つのキーワード」を紹介した。

 H.I.S.の平林氏は「環境変化への対応力」としてスマホやSNSといったものが普及し、これは避けては通れないので、環境変化にともなった新しい提案をしていくこと。紙のパンフレットや現在305店舗を展開している店頭販売もいつまで続けられるかの危機感から「変化の継続」をすること。そして、お金も時間もあるシニア層への注力など「旅行非検討層へのアプローチ」の3点を挙げた。

 楽天の山本氏は、特別な体験をするためにハワイへ行き、その結果として部屋やアクティビティなどに投資をして単価がどんどん上がっていることから、「【あこがれ】から【こだわり】へ」を1つ目のキーワードに挙げた。

 2つ目は「データの活用」で、一例として、データを収集することで、複数名の女子による旅は海外では韓国によるショッピング、国内では東京23区内への旅が多いことを紹介。朝食で贅沢をするなど、時間をみんな楽しめるという“クセ”が分かり、こうした層にハワイを訴求したいとした。

 3つ目は「【口コミ】の活用」。サービスへのフィードバックを顧客目線での口コミについて、Web専業ならではの「お客さまを使ったマーケティング」とし、この活用を集客につなげる。

 JTBの井上氏は、「隣島」「企画力」「主体性」を挙げた。

 隣島については、リピーター率が上がったことでオアフ島で旅中を充実させる人が増えたことや、日帰りのオプショナルツアーが減ったこと。そして最大の理由がアロハ航空撤退で運賃が上がったことを挙げ、「それぞれの島のよいところ、個性を出してブランディングし、旅中を充実させたい層にオアフ島以外の魅力を伝える必要がある」とした。

 企画力については、1980~90年代のハワイに行ければよかった時代はホテルなどを仕入れて組むだけ、そして、少し進んで、ホテルの部屋や食事、アクティビティなどをパンフレットにまとめるのが企画であった時代を経て、現在は旅中をどう充実させるかの企画が重要になっているとし、「製造業は技術力が重要だが、旅行業の技術力は企画力」と例えた。

 最後に挙げた主体性は、旅行会社は航空会社やホテルから提供される価格やスペースを右から左へ流すだけではいけないと提起。特にハワイはほとんどがレジャーであり、「レジャーを知り尽くしているのは旅行会社。旅行会社が主体的にマーケットを引っ張る必要がある。例えば、航空会社がシーズナリティを決めているが、そうではなく我々がパッケージにしたシーズナリティを提供する。そのために一定の量を我々に任せていただければちゃんと売っていきます、というリスクを取る覚悟も必要」と強い姿勢を見せ、旅行会社が牽引してのハワイ市場形成に意欲を示した。

(編集部:多和田新也/Photo:安田 剛)