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東京メトロ、総合研修訓練センターを公開

模擬駅3駅を含む訓練線を備える

2016年4月1日 開所

東京メトロ 総合研修訓練センター

 東京メトロ(東京地下鉄)は3月24日、2016年4月1日に開所する総合研修訓練センター(東京都江東区)を報道陣向けに公開した。

 新木場車両基地に隣接するこの施設は、これまで中野富士見町など各所に点在していた各部門の研修施設を統合したもの。敷地内には5階建ての研修棟に加え、同社では初となる「営業線に準じた訓練線」を備えているのが特徴。

 これまで人身事故やポイント故障、脱線から復旧といった訓練は車両基地を使用していたため、営業終了後から翌営業開始までの深夜に、限られた時間内でしかできなかったが、今後は時間的・空間的な制約を受けることなく訓練が可能となる。加えて、各部門が連携して複合的かつ総合的な訓練が行なえるようになったのも大きなメリットとなる。

 また、研修棟には安全意識の高い企業風土を築くことを目的とした「安全繋想館」(旧「事故に学ぶ展示室」)を併設。資料展示やヒューマンエラーの疑似体験を可能としている。

 東京メトロ 代表取締役社長 奥義光氏はビデオメッセージで「すべてのお客様に安心してご利用していただくため、決して忘れてはならない日比谷線列車脱線衝突事故はもちろんのこと、過去の事故の貴重な教訓を風化させることなく、安全確保への強い思いを未来につなぐことで、さらなる安全意識の高い企業風土を築き上げていくことを目的に開設」、そして「我々鉄道事業に携わるものは安全確保に関して大変重い責任を担っていること、また、一度事故を起こせば取り返しのつかないことになることを、目で、耳で、そして心でしっかりと受け止めていただきたい」とコメントしている。

 東京メトロでは総合研修訓練センターの開設により「鉄道員として広い視野と最新技術に対する高度なスキルやノウハウを習得した人財を育成することを目指し、当センターで日々の研修や訓練を重ねるとともに、部門間の連携を深めることで、東京メトログループの総合力を高めていく」「国内外の鉄道事業者と交流を深め、鉄道業界全体の発展のために知識や安産性を共有する場として本センターを活用することで、さらなる鉄道業界の発展に貢献」「当センターを最大限活用し、人財の育成を通じてお客様にさらなる安心を提供」するとしている。

 同社では職員の56%が日比谷線列車脱線衝突事故後に入社しており、そうした世代に事故の教訓を伝えていくという意味でも、重要な施設となる。

施設概要

敷地面積:約2万7000m2
延床面積:約1万9000m2
訓練線:総延長700m
模擬駅:3駅
総工費:約200億円(研修棟82億円、訓練線81億円、その他40億円)

研修棟に隣接する「センター中央駅」。ホーム長は3両分
駅名票
案内板。上野付近を想定しているようだ
簡易タイプの案内板
トンネル壁面の駅名票
エレベータやエスカレータが完備。1番線側にはホームドアも
エスカレータは下部が透明で構造が見える
標識やカメラなども装備
列車用の案内板
センター東駅方面。実際には駅はない
2番線側はホームドアなし。奥には架線のない側線がある
センター西駅側から入線してくる訓練列車
訓練列車は専用車ではなく綾瀬~北綾瀬間で使われている車両
行先表示も用意されている。路線名はKunrenの「K」?
車内表示も専用
訓練線といっても見た目は普通の駅そのものだ
ホームドアも備わっている
センター西駅。こちらは行き止まりの終端駅
出発信号機もちゃんとある
奥には架線のない非通電エリアが広がる
10両編成対応の模擬駅もある
総合研修訓練センターの隣は新木場車両基地
センター中央とセンター西駅の間には延長180mのトンネルがある。ここでは軌道の検査やレールの交換、脱線復旧、架線の張替えといった訓練を想定
トンネル内には両渡り線(ダブルクロッシングポイント)が設けられている
地下を想定した出入り口も
トンネル内からセンター中央駅方向を望む
保線車両の奥にあるコンクリートの塊がトンネル外観
ダルマと呼ばれる手動式の転轍機もあった
訓練用橋りょう。鋼製トラス、鋼製プレートガーター、コンクリートRC、コンクリートPCの4タイプが用意されている
橋りょうを支える支承の実物。落下の心配なく橋りょうの構造を学べるようになっている
スプリンクラーを利用して豪雨や洪水時の地下ホームを再現。止水の訓練などが行なえる
訓練棟内のサインは英語表記も。社員の国際化だけでなく海外からの研修なども想定しているためだという
3階にある電気教習室
ポイントの制御訓練が行なえるスペース
制御用のコンソール
液晶ディスプレイに表示するタイプもある
電車の運行に欠かせない電力系の設備も用意されている
シミュレータ教室
16000系と7000系の2タイプがある
16000系のシミュレータは運転士と車掌が一度に訓練可能
車掌側には客室部分もある
運転席からの眺め。地下駅に停車中
運転席からの眺め。地下区間を走行中
車外からモニターの配置を見る
7000系のシミュレータ
シミュレータの制御卓
後方の様子はモニターに映し出される
ホーム部分。ホームドアやバリアフリー設備も透明の板が貼られ、中が見える構造
シミュレータ室には教材として車両のパーツも設置。こちらはパンタグラフ
シングルアームタイプのパンタグラフ
床下機器も一緒に見ることができる
台車も設置
2ハンドル運転台のモックアップ
さまざまな機器が並ぶ
建物の構造を見ることができるスケルトン教習室
床部分。音や振動が伝わりにくい構造を確認できる
天井まわり
トイレの研修設備
配管も確認できる
駅構内を再現したSSC(ステップアップステーションセンター)
券売機や改札など実際の駅そのものだ
鉄道事故の資料などを展示する安全繋想館

(安田 剛)