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“痛飛行機”機内初公開&フライトに同行! 「フライトキャラバン 八尾空港」で空撮ミッションに密着した

2017年6月4日 実施

イー・フライトアカデミーの「エロマンガ先生」「俺の妹がこんなに可愛いわけがない。」“痛飛行機”

 6月2日から6月5日にかけ、九州から東海エリアでフライトキャラバンを行なった、イー・フライトアカデミー(佐賀県佐賀市)の「エロマンガ先生」「俺の妹がこんなに可愛いわけがない。」“痛飛行機”。6月3日の愛知県営名古屋空港での一般公開を終え、6月4日には名古屋空港~八尾空港~高松空港~岡南飛行場のフライトを行なった。そのうち八尾空港での動きに密着取材した。

 10時19分、パイパー PA-46型機の“痛飛行機”が八尾空港に到着。イー・フライトアカデミーや同代表の船場太氏がTwitterで到着予定時刻を告知していたこともあり、滑走路の南側には大勢のギャラリーが集まって痛飛行機の着陸を撮影していた。

痛飛行機の着陸を撮影しようと、八尾空港の外周には大勢のファンが集まった
八尾空港に着陸、駐機スポットに移動する痛飛行機
イー・フライトアカデミー代表の船場太氏

 痛飛行機は左舷に「エロマンガ先生」、右舷に「俺の妹がこんなに可愛いわけがない。」(ともに伏見つかさ原作)のキャラクターが描かれているもので、イー・フライトアカデミーとアニプレックス、KADOKAWA、アスキー・メディアワークス各社がコラボレーションして実現した。痛車ではなく痛飛行機は珍しいとあって、航空ファン、原作ラノベファン、アニメファンといった幅広い層の注目を集めた。

左舷は「エロマンガ先生」
右舷は「俺の妹がこんなに可愛いわけがない。」

 イー・フライトアカデミー公式サイトによると、痛飛行機はエクステリアだけでなく、インテリアも「エロマンガ先生」のメインヒロイン、和泉紗霧の部屋のイメージを再現してあるとのこと。内装品は同社の近藤瑞紀氏による手作りで、小型飛行機の機内とは思えない仕上がりになっているという。痛飛行機仕様が間もなく終了するタイミングで、内装も撮影させていただいた。

PA-46型機(マリブ)のドアは胴体中央左側にある。撮影用に機内を整えてもらった。船場氏はオリジナルTシャツを着用
機内後方から前方を見る。PA-46 マリブは6人乗りで、コクピットに2席、客席は向かい合わせに計4席
客席前方から後方を見る。キャビンの後方は荷室として使える
一部の窓はキャラクターのステッカーで覆われている。機内を覗かれているようだ
「紗霧ちゃんのお布団のイメージで仕上げました」と説明する、インテリア担当の近藤瑞紀氏
頭に紗霧のリボンをつけた近藤氏。内装はすべて彼女の手作り
近藤氏と船場氏。マリブの機内は狭いながらもリビングのようだ
マリブのコクピット。左が機長席で、操縦桿についているモニタはGPS

 さて、ここからは痛飛行機に同乗して大空のプロフェッショナルの仕事を間近に見たので紹介しよう。行なわれたのは飛行機の空撮。どのように行なわれているかをぜひ追体験していただきたい。

 この日、八尾空港では痛飛行機の空撮が予定されていた。撮影機を飛ばすのは大阪航空(大阪府八尾市)。同社は遊覧飛行やチャーターなども行なう航空機使用事業会社で、取材した日も飛び込みで遊覧飛行に訪れるカップルや家族連れが数組あった。イー・フライトアカデミー代表の船場太氏は大阪航空の関係者らと手早く挨拶を済ませ、すぐに撮影機のパイロット、空撮を担当するカメラマンとの打ち合わせを始めた。

 船場氏は元航空自衛隊のパイロット。主力戦闘機F-15Jで第一線に立っていたほか、初等練習機T-7の開発時にはテストパイロットを務め、さらにT-7や中等練習機T-4で教官として長らく後進への教育を行なった経験がある。航空自衛隊では編隊飛行は基本技術の一つで、船場氏にとってはお手のものだ。打ち合わせでは、撮影機のパイロットには一定の高度、速度で直進してもらい、位置の微調整は撮影機のカメラマンからのハンドシグナルを見て船場氏が行なうこととなどが確認された。フライト時間は最大1時間の予定となった。

空撮のルート、撮影機との位置関係、緊急時の対応などを確認する船場氏

 撮影フライトは12時15分に機体に搭乗し、12時30分の離陸となった。撮影機は大阪航空のセスナ 172型機で、パイロット、カメラマン2名、イー・フライトの社員1名の計4名が搭乗する。痛飛行機パイパー PA-46 マリブに搭乗するのは船場氏と筆者だ。

 最初に撮影機であるセスナ 172型機が八尾空港を西向きに離陸し、撮影開始ポイントに向かう。PA-46 マリブはセスナ 172型機より速いため、痛飛行機は撮影ポイントに到着するまでに追いつく。阪神高速5号湾岸線の甲子園浜IC(インターチェンジ)付近で揃って左旋回、針路を南東に向け、撮影を開始した。

計器をチェックし、エンジンを始動
管制塔と連絡を取る
操縦桿に取り付けたGPS端末を起動
タキシング(地上を移動)。走行中は操縦桿は使わない
フライトプランを再確認
最大推力で上昇中。船場氏は撮影機から目を離さない
あべのハルカス、大阪市の中心部、淀川の河口付近を望みながら、西宮市の南海上に向かう
撮影機に追いつく。撮影機のパイロットからの無線指示で左旋回し、撮影開始
撮影機は高翼で痛飛行機は低翼のため、撮影機より低い位置を維持する

 撮影は兵庫県西宮市から大阪府富田林市にかけての直進飛行で行ない、右旋回で折り返す。船場氏は撮影機から見て順光になるように機体の位置を変え、再び西宮市方向に向かって直進しながら撮影する。ルート上は伊丹空港や関西国際空港の特別管制圏が迫る複雑なエリアもあるため、そこにかからないように高度を1000ft(約300m)としていた。パイロットからすれば非常に低く感じる高度帯だ。

 また、この日は快晴に恵まれたが、対流が激しく機体は大きく揺れた。日常生活では横からの風しか感じないが、実は上下にも激しく動いているのだ。船場氏は撮影機をにらみつけたまま、左手で操縦桿、右手でスロットルを微調整し編隊を維持した。

大阪府南部上空へ
富田林市上空。背後に見えるのは大平和祈念塔
遅いセスナに合わせるため、エンジン出力を絞る。機内はときおり速度低下の警報が鳴っていた

 再び西宮市の南の海上まで戻ってきたところで「撮影終了」の連絡が入る。船場氏は操縦桿を小刻みにゆすって翼を振り、右に大きく機体を傾けて右ラダー(方向舵)ペダルを踏み込み、一気に撮影機から離れた。船場氏のこわばった表情がいつもの笑顔に戻る。「いやー、キツい乱流でしたね。マリブの操縦桿は重いから、かなり疲れましたよ!」。

 八尾空港への着陸は、風向きが変わっていたため離陸時とは逆方向となっていた。痛飛行機の帰りを待っていたファンたちも、この変化を知り撮影位置を変えているのが空からも見えていた。

カメラマンからの撮影終了の合図に、ハンドシグナルで答える船場氏
右へ45度バンクの急旋回。Gで腕やカメラが重くなり、構えるのがつらくなる
八尾空港。撮影機が着陸する間、大きく旋回して間隔を広げる
地上に戻ると、笑顔でギャラリーたちへ手を船場氏
計器をチェックしエンジンを停止。エンジン始動から59分だった
撮影機のパイロットやカメラマンと談笑。後ろでは痛飛行機に給油作業を行なっている
給油の明細にサイン。この日はこのあと高松を経由して岡南飛行場に向かった

 大阪航空の待合室に戻り、船場氏はカメラマンと画像を確認する。満足できる内容だったようで、笑顔がこぼれた。しばし談笑したあとはすぐに次のフライトの準備。チャート(航空図)を見ながら必要な情報を用紙に書き込み、高松空港までのフライトプランを作成、航空局に電話して伝える。船場氏はこのフライトプランに、八尾空港を離陸後にいったんローパス(低空飛行)を行ない、その後、高松空港に向かうことを伝えていた。

フライトプランを電話で伝える。「(機体のカラーは)ホワイト…ウィズ、キャラクター?」

 14時。駐機場に出て機体の点検を開始。エンジンや動翼などに異常がないか、目視と手で動かしてみてチェックする。準備ができ、近藤氏とともに乗り込むとすぐにエンジンを始動、GPSなどのセッティングを行なう。14時15分に駐機場を出発、同21分に八尾空港を離陸した。離陸後はフライトプランどおりローパスを行ない、空港周辺に集まっていたファンに翼を振って、そのまま高松空港に向かった。

機体を点検し、最後に両手を大きく振ってお別れ
八尾空港の駐機場を出発し、滑走路へ
離陸した痛飛行機は低空で空港上空に戻り、大きく翼を振って挨拶、そのまま高松空港に向かった

 痛飛行機はこの日、高松空港を経由し、岡南飛行場に到着した。高松や岡南でもファンたちが撮影し、Twitterなどに投稿している。その翌日、6月5日の最終日は急きょ予定を変更して山口宇部空港にも立ち寄ることになり、、岡南飛行場~山口宇部空港~佐賀空港のコースでキャラバンフライトのファイナルを締めくくった。

「エロマンガ先生」×イー・フライトアカデミーによる痛飛行機の運航はこれで終了となり、キャラクターたちが描かれたステッカーも剥がされた。しかし、船場氏によると「これからも、空が楽しく思ってもらえるような企画をしていきたい」とのこと。今後も同社の動向に注目だ。