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首都高、2017事業年度の事業計画概要などを説明、工事通行止め時間拡大の可能性

晴海線の開通、板橋熊野町JCT間および堀切小菅JCT間改良の完了を予定

2017年5月25日 開催

首都高速道路株式会社 代表取締役社長 宮田年耕氏

 首都高(首都高速道路)は5月25日、定例会見を実施し、2017事業年度(平成29事業年度)の事業計画の概要などを説明した。すでに発表された一般国道17号(新大宮上尾道路・与野~上尾南)の事業着手のほか、2017年事業年度は晴海線の開通、板橋熊野町JCT(ジャンクション)間および堀切小菅JCT間改良が完了する。また、中央環状線の完成により迂回に柔軟性が出たため、工事通行止めの区間や時間帯に従来にない試行を検討していることが明らかにした。

晴海線の開通、板橋熊野町JCT間や堀切小菅JCT間の改良が完了

 会見では主に首都高 代表取締役社長の宮田年耕氏が説明、2017事業年度の事業費は高速道路事業で3223億円、高速道路以外の事業は294億円。そのうち、高速道路事業では、横浜環状北西線などの新設と板橋熊野町JCT間改良などの改築に1043億円、東品川桟橋・鮫洲埋立部等の大規模更新に143億円、首都高速道路318.9kmの維持・修繕に1365億円、池尻・三軒茶屋出入口付近等の大規模更新、大規模修繕に672億円とした。

 主な事業では、一般国道17号(新大宮上尾道路・与野~上尾南)の事業着手で、8kmの区間のうち、与野JCT(仮称)付近が有料道路事業、上尾南出入口までが公共事業として施工する。工事予算は全体で2000億円で有料道路事業が450億円となっている。

2017事業年度(平成29事業年度)の事業計画の概要
一般国道17号(新大宮上尾道路・与野~上尾南)の事業着手
最近の通行台数状況

 晴海線の開通、板橋熊野町JCT間や堀切小菅JCT間の改良、東品川桟橋・鮫洲埋立部等の大規模更新はネットワーク整備・ボトルネック対策・更新事業の推進として説明した。

 晴海線は2017年度内に開通予定。横浜北西線は2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでの開通を目指しており、順調に掘削を始めているという。板橋熊野町JCT間の改良は橋脚工が完了。西側の拡張工を実施しており2017年度内に4車線化とノージョイント化工事が完了する予定。

晴海線は2017年度内に開通予定
横浜環状北西線の工事は順調
板橋熊野町JCT間の改良は2017年度内に4車線化とノージョイント化工事完了予定

 堀切小菅JCT間改良は、2016年秋に小菅出口の通行止めが解除予定だったが、工法を変更して延期、2017年6月解除予定となった。4車線化の完了は2017年度内としている。また、中央環状線の機能強化となる小松川JCT新設は2019年度完成予定だが、2017年秋から7号小松川線と中央環状線の上空をまたぐ桁架設を実施予定で、2017年度は夜間通行止めを計8回実施予定という。

堀切小菅JCT間改良は2017年度内に4車線化完了予定、小菅出口通行止め解除は6月
小松川JCT新設、完成予定は2019年度
高速1号羽田線の東品川桟橋・鮫洲埋立部等の大規模更新

 東品川桟橋・鮫洲埋立部等の大規模更新は高速1号羽田線の迂回路を設置し、上下線を順に更新していく。2017年度は上り線の迂回路を供用開始予定。なお、東京オリンピック・パラリンピックの開催時には、上り線が作り変えられて、下り線は迂回路を使用する予定で、社長の宮田氏は「古い道路は通らない」と説明、工事は順調であると述べた。

i-DREAMsを2017年7月から運用開始予定

 安心・安全の取り組みでは、新たなスマートインフラマネージメントシステムのi-DREAMsを2017年7月から運用開始予定。構造諸元、点検・補修、維持管理支援、そして、インフラパトロールによる点検、赤外線による点検が行なわれる。これは全線にわたって導入する。

i-DREAMsの概要

 インフラパトロールは、180度の高精細画像を記録するカメラを付けたクルマを走らせ、常時録画し、映像をクラウドで共有するシステム。常時録画することにより、点検における見落としや撮り逃しがなくなり、点検員が記録にとらわれることなく損傷発見に集中できる。また、一部は画像処理で損傷を自動検知する。

安心・安全への取り組みでは、i-DREAMsを運用開始する
インフラパトロールの開発
記録する車載カメラ
巡回中に損傷を発見した場合にボタンを押すとすぐ映像が送信される
取得した映像。場所や振動を記録する加速度センサーの状況も同時に記録
損傷検知システムの概要

 点検中に損傷を発見した場合はボタンを押すことで、詳細な情報をすぐに共有。さらに損傷の状況によって「緊急」などのボタンを押した場合は撮影した画像が即座に送信され、画像や位置情報、加速度センサーによる道路の凹凸も記録される。

 そのほかの安心・安全対策では、事故削減に向けたもので、事故多発地点を中心に注意喚起カラー舗装、歩行者立ち入り対策として大型注意喚起看板や路面矢印の設置を実施、歩行者立ち入り対策はすでに完了している。また、立ち入り・逆走検知・警告システムの設置を進める。2016年度は11カ所に設置したが、2017年度は28カ所設置して合計39カ所とする。

事故削減に向けて安全対策を強化する
地震防災対策の推進として、軽量段差修正材とFRP渡し材を開発・配備

 地震防災対策として、地震で生じた橋脚継ぎ目の段差や目開き箇所を通行可能とするため、人力で運搬できる通常の5分の1の重さの土嚢やポリスチレン製のスロープといった軽量段差修正材と、0.5m程度の目開き箇所に対応するFRP渡し材を開発して、高架下や基地に配備する。

知的財産権の活用も引き続き推進

 首都高では知的財産権の活用も盛んに行なっている。会見では、新型カラーコーンの「ステイコーン」、LED情報パネル、3D矢印パネルの紹介が行なわれた。

知的財産権の活用状況
安全対策技術として使われている首都高グループの知的財産

「ステイコーン」は規制コーンが車両接触や衝突で転がったり、車両下に巻き込んだまま持ち去られる問題の対策として開発。ウレタン樹脂の薄肉コーンと廃タイヤチップを成形したもので、衝突時にはすぐに折れ曲がるため飛び跳ねや転がりが少ないとしている。

右がステイコーン、左が従来のコーン
ステイコーン衝突があった場合でも倒れず折れ曲がる
従来のコーンは衝突があれば、すぐ倒れてしまい車両下へ巻き込みの可能性もある

 また、LED情報パネルは通信による遠隔操作で情報表示をし、表示する情報の即時性や的確性を高める。3D矢印パネルは、吸音材と一体化、吸音材のぶんが大型となり、ドライバーの視認性を高める。

工事通行止めの時間を拡大する可能性

 会見では、宮田氏から今後の工事通行止めについて時間の拡大をする可能性が示された。中央環状線の完成により1カ所を止めても迂回路ができるようになったことから、これまでは不可能だった大規模な通行止めを行なった工事ができる段階になってきたという。

 宮田氏は「お客さまの円滑な通行が第一」という前提を示しながらも、これまでのような曜日や時間を固定した工事ではなく、今年度は対象路線ごとの交通状況を見ながら時間を拡大するなどの試行を検討していることを明らかにした。