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岩谷産業、燃料電池フォークリフト用の「関西国際空港 産業車両用水素インフラ」開所式実施

トヨタの燃料電池トーイングトラクターが新登場

2017年4月11日 開催

4月11日、「関西国際空港 産業車両用水素インフラ」の開所式で代表者によるテープカットが行なわれた

 岩谷産業は、環境省の「平成26年度CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」で採択された「燃料電池フォークリフトの実用化と最適水素インフラ整備の開発・実証事業」に参画した。同社は、関西国際空港内で使用する燃料電池フォークリフトに水素を供給する設備の開発及び設置を担当している。

 この事業では、2015年2月に圧縮シリンダーを用いた小規模の水素供給設備を設置していて、これまで実証実験を進めてきたが、液化水素で水素を貯蔵する大規模の水素インフラを完成させたことを受けて、4月11日に「関西国際空港 産業車両用水素インフラ」の開所式を開催した。その模様を報道陣に公開し、加えて施設の公開も行なった。

水素ガスヤード
式典は関空の国際貨物地区にある水素ガスヤード内で開催された
岩谷産業株式会社 代表取締役社長の谷本光博氏

 式典は、関空内にある水素ガスヤードに作られた特設会場で行なわれた。最初に挨拶をした主催者代表である岩谷産業 代表取締役社長の谷本光博氏は、「この産業車両用水素インフラは環境省の『燃料電池フォークリフトの実用化と最適水素インフラ整備の開発・実証事業』において、建設費の補助などの支援を受けながら推進させていただきました。本事業は関西エアポートが推進する『スマート愛ランド構想・水素グリッドプロジェクト』の一環で、関西エアポート、豊田自動織機、トヨタ自動車、そして大阪府と共に空港内における水素サプライチェーンのモデル構築を目指しているものです」という概要の説明があった。

 続けて「空港内の産業車両用水素インフラはほかに例がなく、全国初の試みとなります。関西エアポートからは土地のご提供、豊田自動織機にはFCフォークリフトの開発、トヨタ自動車にはFCスタックの開発、当社は水素インフラの整備という役割です。そしてこの度、液化水素を用いた大規模な水素インフラを完成させました。この装備ではディスペンサーを3台設置しており、FCフォークリフトを同時に複数台、連続して水素を充填させることが可能になっています。さらに水素供給設備からディスペンサーまでの約100mの距離を40MPaという高圧水素配管で供給することでFCフォークリフトを使用しているヤードで直接水素を充填することも可能とし、利便性を大きく向上させました。今後、関空内で数百台のFCフォークリフトが導入されると期待されています。

 また、羽田空港を始めFCフォークリフトやFCトーイングトラクターの導入が全国各地で検討されていますが、ここ関空がそのモデルとなり牽引していく場になればと考えております。現在、日本全国で約1700台のFCVが走り、89カ所の水素ステーションが整備されています。そして水素燃料電池戦略ロードマップでは2020年までに4万台のFCVが普及し、160カ所の水素ステーションが整備される予定となっております。当社は引き続き水素ステーションの整備を画策してまいりますが、それと並行してFCフォークリフト、FCトーイングトラクターの導入を推進することが水素社会の実現に向けた大きなうねりとなることは間違いありません」と語った。

環境省 水・大気環境局 自動車環境対策課 課長の高澤哲也氏

 続いて、来賓挨拶で登壇したのは環境省 水・大気環境局 自動車環境対策課 課長の高澤哲也氏だ。高澤氏は挨拶のあと「本日開所した産業車用の水素インフラと環境省の関係を簡単にご説明いたします。環境省では、平成26年度CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業を行なっています。それに岩谷産業、豊田自動織機、トヨタ自動車による共同研究にて、燃料電池フォークリフトの実用化と最適水素インフラ整備の開発実証事業を行なっていただきました。

 それ以降3年間にわたって大阪府、関西エアポートのご協力のもと、関空において国内初めてとなる高圧水素配管にて離れた場所にあるディスペンサーへの供給などさまざまな課題の解決に取り組んでいただきました。環境省としても、実証事業のもう1つの成果である燃料電池フォークリフトの市販モデルの導入支援を昨年度から開始しておりまして、今年度は新たにトーイングトラクターなども対象にした技術開発の実証事業などに力を入れているところです」ということだった。

 さらに「地球温暖化対策への取り組みの重要性が年々高まっていると感じています。昨年5月に閣議決定された地球温暖化対策計画での2030年に26%削減という目標に向けて着実に取り組むこととしています。さらには、2050年までに80%の温室効果ガスの排気削減を目指すこととしています。これらの目標を達成するためには再生可能エネルギーの最大限の導入が必要です。引き続き関係者の皆さま方の連携のもと、取り組みを拡大していただき、またPRに努めていただきまして水素社会実現に向けて先導的な役割を果たしていただくことを期待しています」と語った。

大阪府副知事の新井純氏

 2人目の来賓挨拶をした大阪府副知事の新井純氏は、「地元自治体として挨拶させていただきます。水素は地球上に無尽蔵に存在し、エネルギーとして利用しても二酸化炭素を出さないことから究極のエネルギーとして世界中が期待しているものであります。ここ関空は、世界最高水準の環境性と安全性を兼ね備えた環境先進空港にするため、協力企業各社の皆さまが連携し空港における大規模な水素活用事業として世界に先がけて進められてきました。

 大阪府としても、引き続き大阪府域における自動車用水素ステーションの環境整備や、関空の水素グリッドプロジェクトの実現に向けた支援や協力をつうじて、大阪の水素事業の充実を図ってまいりたいと考えているところであります。企業の皆さまにはそのような水素社会に向けた取り組みをさらに進めていただき、大阪、関西から全国へ、そして世界に向けて大きく発信をしていただきたい」とのことだった。

関西エアポート株式会社 代表取締役社長の山谷佳之氏

 次に、事業者代表として関西エアポート 代表取締役社長の山谷佳之氏が挨拶。山谷氏は「事業者として一言ご挨拶をいたします。実証実験でありながらこのような素晴らしい施設を作って頂いたことに感謝しています。関空では国や大阪府の支援のもと2012年にKIX水素グリッド委員会を立ち上げました。このプロジェクトに参画されている皆さま方と連携して、空港におけるクリーンエネルギー利用促進のため、水素エネルギーの活用を推進しています。これらの取り組みは、関西エアポート株式会社が掲げている環境宣言のなかの1つでありまして、空港事業から排出される温室効果ガスの低減に向けた取り組みです。

 国の基本計画において水素エネルギーは将来、中心的な役割を期待されております。関空では2015年に国際貨物のエリアにて国内では初めてとなる燃料電池フォークリフトと水素充填設備の実証実験を開始いたしました。3分程度で水素を充填させることができ、さらに排ガスも出さないという作業環境の改善もできます。現場では医薬品倉庫で活用し、ハンドリング業務の品質向上に結びついていくと考えております。燃料電池フォークリフトや燃料電池トーイングトラクターなど、多くの産業用車両が空港で活動し、空港での温室効果ガスの排出低減に貢献できるとともに日本の水素エネルギー活用の技術が関空から世界に発信され、水素エネルギーが普及していくことを期待したいと思っています」と結んだ。

株式会社豊田自動織機 専務役員の大西敏文氏

 最後に登壇した豊田自動織機 専務役員の大西敏文氏からは、「私どもは2020年に向けたビジョンにおきまして、エンバーロメント、エコロジー、エナジーの3つのEの文字を掲げ、環境に配慮した製品開発に取り組んでまいりました。燃料電池は高い環境性能に加え、僅かな時間での燃料の充填が可能なものです。CO2排出量の低減やエネルギーの多様化にも対応技術として、とくに自動車において実用化開発が進み、私どもはトヨタ自動車のMIRAIと同じシェルを使用いたしまして、フォークリフトに適した小型高効率なフォークリフト専用の燃料電池システムの開発を進めてまいりました。

 4年前の2013年の『スマート愛ランド構想・水素グリッドプロジェクト』に参画し、2014年からは環境省からの『CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業』の採択を受け、実用化開発に取り組んでまいりました。FCフォークリフトの実証車両を関空の国際貨物地区に段階的に投入し、航空会社の物流倉庫で現在5台を稼動していただきながら、CO2削減効果などの検証を行ってまいりました。そして昨年の1月に、市販車両の1号車を関西エアポート株式会社に納入させていただきました。

 FCフォークリフトは、お客さまの物流ニーズにお応えする新たなフォークリフトとして、私どもは大きな期待を寄せています。関西エアポート株式会社が目指す、我が国初となる空港施設での大規模な水素エネルギー導入、活用に向けまして物流事業者の皆さまに積極的な導入をしていただけるよう、当社も引き続き小型FCフォークリフトやFCトーイングトラクターの開発をはじめ、普及、促進の取り組みをさらに強固に進めてまいります」と語り、式典は終了した。

 なお、関空の国際貨物地区に作られた水素インフラの概要は、液化水素貯槽から水素を供給するオフサイト方式を採用。液化水素は蒸発器でガス化したあと、圧縮機で40MPaまで昇圧し、蓄圧器に貯蔵される。そして、高圧水素ディスペンサーへ送られ、FCフォークリフトに搭載された水素貯蔵タンクとの圧力差を利用して充填を行なうというもの。

 液化水素の内容積は24m3、圧縮機は吐出量300Nm3/hが2基、蓄圧設備は内容量300Lの容器が3本。高圧水素ディスペンサーは3台設置している。これらは同時充填、連続充填が可能なものだ。この高圧水素ディスペンサーのうち1台はスタンドから離れた倉庫の敷地内に設置されていて、水素ガスヤードからは約100mの高圧水素配管を通じて供給されている。これらの設備は、写真で紹介しよう。また、登壇者の発言にも出てきた豊田自動織機のFCトーイングトラクターも試作車が展示されていたので、そちらの写真も掲載する。

代表者によるFCフォークリフトへの充填セレモニーも行なわれた
高圧水素ディスペンサーはスタンド内に2基、物流倉庫に1基設置されている
高圧水素ディスペンサーの液晶パネル。撮影時は機能停止をさせているので充填不可の状態。モニタには水素圧力、流量、充填量と充填に掛かった時間を確認できる時間表示もある。モニタのほかにもランプの点灯で運転状況が確認できる
現状、FCフォークリフトへの水素充填はスタンドにいる専門のスタッフが行なう。といっても簡単、安全に充填できる操作系になっている。充填前は静電気除去シートにタッチ。ディスペンサーのホースの先端はチャック式になっていて、車体側のチャックの押し込むことでロックされる
走行するとFCV同様、水が生成されるが、FCフォークリフトは清潔な倉庫内で使用するので水とはいえ車外に放出できない。そこで貯水タンクも装備していて、水素充填時に専用ホースをつなぎドレンから排出。生成水は排水溝へ流される
豊田自動織機のFCフォークリフト。現在は6台の燃料電池フォークリフトが活用されているとのこと。フル充填での稼動時間は4時間ほどとのことだが、これはおそらく走行のほかにフォークの上げ下げを頻繁に行ったときのものだと思うので、使用環境によって稼動時間は変わってくるはず
参考出品されていた豊田自動織機の燃料電池トーイングトラクター
機械的なメーターはなくモニタのみ。車体左右には外部への給電リッドが設けてあった
スタンドに裏にある水素ガスヤードの全景。タンクの貯蔵量は24m3。これはフォークリフトの約1500台分の燃料に相当するとのこと
銀色で冷却フィンが付いているのが熱交換により液体水素をガス化させる蒸発器。そのあと、圧縮機で40MPaまで昇圧させる。蒸発器の下のみ砂利が敷き詰められているが、これは液体水素が蒸発する際に周辺の空気や窒素が凍ることがあり、それが下に落ちると一気に蒸発するなどの危険があるので砂利を敷いているという説明だった
白い横長の装置が水素貯蔵用の蓄圧器。3本入っていて、高圧水素ディスペンサーで同時、連続充填も可能になっているとのこと