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沖縄観光コンベンションビューロー、ピーチの那覇~バンコク直行便就航に向けタイ市場戦略セミナー実施

2017年2月14日 実施

ピーチの那覇~バンコク線就航を前に、沖縄県とOCVBが「タイ市場戦略セミナー」を実施

 2月19日にピーチ(Peach Aviation)が、沖縄初のタイ直行便、那覇~バンコク線を就航する。それを目前にした2月14日、沖縄県とOCVB(沖縄コンベンションビューロー)主催で「タイ市場戦略セミナー」が実施された。

 会場には観光関係をはじめ200名あまりが参加。関心の高さを伺わせた。

沖縄県文化観光スポーツ部観光政策統括監 渡久地一浩氏

 セミナーに先立ち、主催者挨拶として沖縄県 文化観光スポーツ部の渡久地一浩氏が登壇。県では、今後増加が見込まれるASEAN地域からの観光客受け入れの取り組みを進めており、「このセミナーが、タイからの観光客受け入れ体制を整えていくきっかけになれば」と期待を述べた。

Peach Aviation株式会社 代表取締役CEO 井上慎一氏

 続いて、ピーチ代表取締役CEOの井上慎一氏が登壇。テーマを「タイ直行便就航直前! Peachの戦略と今後の見通し」として講演を行なった。

 本邦初のLCCとして設立したピーチは、他に類を見ない速さで路線就航を実現しているとし、拠点を本社のある大阪のほか、那覇、仙台、札幌に置き独自の事業展開を図っている。運航率、搭乗率とも高い数値を維持しており、ピーチ運航をきっかけに関空の利用数がアップしたことや、大阪の街が活性化していることなどを紹介した。経営は黒字をキープしている。

 ピーチが重要拠点の一つとしている那覇は、東南アジアへの事業拡大を見越して設定した場所。これまでに那覇発着の国際線はソウル、台北、香港を運航しているが、今回バンコク(タイ)との直行便を就航することにより、企業理念の一つである「アジアの架け橋に」の実現に一歩近づく。

 タイからの訪日観光客は増加傾向にあり、特に20~30代女性が多い。これはピーチの利用客の傾向と重なっている。そのことからも、タイ定期便の就航に大きな期待を寄せる。

 タイと沖縄は、実は600年前から交流があった。泡盛の原料はタイ米である。そういう背景を活かし、文化面でもタイと沖縄をつなげたいとのこと。また、タイと沖縄間の人の行き来にとどまらず、沖縄が他地域からの経由地にもなり得ると考えている。例えば、大阪や東京から沖縄に来て観光を楽しみ、そのあとにタイに渡るといった利用の仕方もできる。その逆も然りだ。

「バンコクから見ると、沖縄は一番近い日本。その先に大阪があり、東京はさらにその先にある」と井上氏。沖縄を東南アジアからの玄関口に、と意欲を見せた。

株式会社GUZEN 代表取締役 佐野ひろ氏

 続いて、GUZENの佐野ひろ氏による「タイの観光客を取り込む秘訣」をテーマにした講演が行なわれた。

 佐野氏はタイ在住で、日本を紹介するテレビ番組「SUGOI JAPAN」のレポーターを務める。同番組は現地でとても人気があるそうで、番組で紹介した場所にタイからの観光客が多く訪れるという現象も生み出している。

 タイ人にとって日本は親近感のある場所だそうだ。一番の影響は日本のアニメ。子供の頃から、タイ語に吹き替えられた「ドラえもん」を普通に見て育ったタイの人たちにとって、アニメのなかの風景が日本の風景として親しまれている。彼らが大人になり日本に訪れたときに、アニメに出てきたような普通の公園で記念撮影をしたりする。

 さらに日本への親近感を高めているのが、小説「クーカム」とのこと。この作品は、日本人の男性が主人公で、タイ人の女性との恋愛を描いたものだそうだ。ドラマや映画にもなり、リメイクも重ねられているためタイではほとんどの人が知っている国民的作品だという。

 日本食文化も広まっており、寿司やラーメン、居酒屋など日本食の飲食店も急増しているとのこと。

 タイ人にとって日本は、一番行きたい外国。実際に日本に訪れたことがある人にインタビューをすると7割がリピーター。もっともよかった場所を聞くと、1位東京、2位京都、3位大阪、4位北海道。続いて5位福岡となっているが、北海道の次に沖縄が来る可能性はあるのではないかと佐野氏は語った。

 日本のどんなところに興味があるかというと、日本ならではの美しい自然がもっとも多い回答だそうだ。タイでは見ることができない雪景色も人気が高い。また宿泊先はホテルよりも旅館に興味があるという。畳の部屋で布団で寝てみたいという回答も興味深い。

 祭りを見てみたい、温泉に行ってみたい、着物を着てみたいなどの意見とともに、ショッピングを楽しみたいという意見も多いのも特徴的だという。

 タイ人は買い物が好きなのだそうだ。佐野氏が感じる日本とタイとの違いは、日本は外国から入ってきた新しいモノは、独自に工夫し日本風にアレンジして作り出していく気質だが、タイの人は、作り出すよりも買うという気質なのだそう。

 タイ人観光客を迎えるにあたって大事なことは、タイの人たちが何を好むのか、何を望むのかを知ることだという。こちら側から自信を持ってお勧めしたものがタイ人にとっては魅力に感じられないこともある。また、習慣の違いについても理解しておく必要がある。特に交通ルールについては日本と違うことがあるので、レンタカーなどでは事前説明が必要だ。

 言語については、タイの人は英語ができるので不安に思わなくてもよいとのこと。逆に、日本でも街なかや施設の表示は少なくとも英語の表記は必要ではないかとのこと。

 また、タイからの観光客は若い女性が多いので、PRには若い男性を起用してみてはどうかという面白い提案もあった。

 沖縄県はタイのトラベルフェアで大きなブースを設けるなどPRに力を入れているので、沖縄への関心も高まっている。直行便の就航により、初めての日本旅行が沖縄という人も増えるのではないかとのことだった。

 なお、OCVBではタイ人観光客受け入れの取り組みとして、タイ語のパンフレット制作、多言語コンタクトセンターのタイ語対応などを実施。タイからダイレクトに沖縄を訪れる人たちが降り立つのも間もなくだ。

OCVBが制作しているタイ語のパンフレット(左)とタイ語のインフォメーションカード(右)