ニュース

成田空港、「空の日フェスティバル2016」でボーイング 787-8型機と綱引きなど実施

オシュコシュ製ストライカー 6×6ベースの新型化学消防車登場

2016年9月19日 開催

ANAハンガー前の綱引き会場。今回は、ボーイング 787-8型機を引くことに

 成田国際空港は9月19日、毎年恒例となった「空の日フェスティバル2016」を開催した。誰でも入場可能な中央広場でのイベントも実施されたが、本稿では、成田空港のWebサイト上で事前に募集され、抽選で参加できるジェット機との綱引き大会と、空港用化学消防車見学ツアーをリポートする。

ジェット機との綱引き大会&空港見学ツアー

 毎年好評のツアーで、空港の普段見ることのできない場所の見学、ジェット機との綱引き、航空機格納庫内でのイベントといったプログラムとなっている。対象は小学生で、小学生1~2名と保護者1名のグループでの応募となり、今回は、126組304名(小学生178名、保護者126名)が参加した。

 参加者は数組に分かれてバスに乗車し、空港中央広場~貨物地区~A滑走路周辺~花時計と見学。整備地区のANA(全日本空輸)ハンガー前で実施される綱引き会場へと到着した。参加者が整列する目の前にはすでに、綱引きで対決するボーイング 787-8型機が鎮座し、太い綱を伸ばして参加者の挑戦を待っている。

前輪と左右の後輪に綱が結ばれている

 綱引き大会の開催にあたり、ANA成田空港支店 副支店長の丸山晴久氏が「待ちに待った空の日。あいにくの曇り空ですが、ジェット機との綱引きをする日がやってきました」と挨拶。参加している小学生たちに「ボーイング787は今、日本の航空会社で、最も新しい飛行機です。この飛行機は、どれくらいの重さか知っている人はいますか?」と問いかけると、「ハイ!」という元気な声と共に手が挙がった。

 小学6年生の男子が「160トンくらい」と答えると、丸山氏も「なんで知ってるんですか?」と驚きながら、「だいたい160から200トン。クルマで例えると150~200台くらい。これを今から綱引きしてもらいます」と、飛行機を引くことの大変さをアピール。さらに、「力と気持ちを一つにしないと、きっと動きません。皆さんの気持ちを一つにしたいと思います」と、参加者同士で手をつないでもらい「エイ、エイ、オー!」と気合いを入れ、これから始まる挑戦を盛り上げた。

綱引きに参加する126組304名の参加者も会場に到着
綱引き大会開催にあたり、ANA成田空港支店 副支店長の丸山晴久氏が挨拶
ボーイング 787型機の重さを答え、丸山氏も「なんで知ってるんですか?」と驚く
ANAのチアリーディングチーム「SUPER FLYERS」が参加者の応援に登場

 続いて、ANAスタッフのチアリーディングチーム「SUPER FLYERS」が登場。パフォーマンスを披露し、参加者を応援した。いよいよ、綱引きの時間となり、ボーイング 787型機から伸びる綱に各チームが移動する。前輪は、トーイングバーを介して、後輪は左右に1本ずつ、直接綱が結ばれている。3本の綱にそれぞれ参加者たちがスタンバイ。まずは、小学生のみが綱を引き、保護者は応援に回った。

「SUPER FLYERS」が元気よくパフォーマンスを披露
いよいよ綱引きとなり、グループごとに綱の前へと進む
前輪はトーイングバーを介して綱が結ばれている
後輪には直接、綱が結び付けられている
3本の綱それぞれに、参加者の配置が完了
飛行機も参加者も、どちらも準備は整った

「それでは、スタート!」と合図があり、小学生178名は必死で綱を引くが、機体は動く気配がない。2回挑戦するが、1mmたりとも動かなかった。続いて大人も加わり、総勢304名でチャレンジとなった。

まずは小学生から、合図ともに178名が綱を引っ張る
2回挑戦したが、小学生だけの力ではまったく動く気配はなかった

 スタートの合図で、一斉に縄がピンと張る。さすが大人の力だけあり、小学生だけで挑戦したときよりも、縄のテンションが高いようだ。何度か気合いを入れ直しながら綱を引くと、タイヤがわずかに動いた。気を抜かず綱を引き続けると、徐々にタイヤが回り始める。その勢いのまま引き続け、重い機体が人が歩く速さほどまで加速していった。最終的には25mほど移動。「そこまで!」の合図で綱を離し、一息ついた参加者たちから、自然と拍手がわき起こった。

大人も加わり、総勢304名で綱引きにチャレンジ
ジワッと機体が動き始めた
段々と勢いが増し、160トンを超える機体がどんどん動いていく
後輪のある場所が、もともと前輪のあった位置。25mほど移動した
綱引きは大成功。自然と拍手がわき起こった
グループごとに、飛行機の前に並んで記念撮影

 今年初めて参加したという飛行機好きの小学生は、「最初は動くと思わなかった」「動いたときはびっくりした」と興奮気味だった。保護者として参加した母親も、「みんなでやれば、あんなに動くんですね」と驚いた様子だった。最後は参加者全員で万歳をし、健闘をたたえ合った。

空港用化学消防車見学ツアー

ガレージに展示される新型化学消防車

 2015年に好評だったツアーで、今年は、6月から導入されたHRET(高位置対応伸展型放水銃)を装備した空港用化学消防車を間近で見学できるのが特徴。129組344名の応募のなかから、26組78名が参加(大人45名、子ども33名)。このツアーは綱引きと違って、大人だけのグループでの応募も可となっている。

 バス2台に分乗した参加者たちが、A滑走路の脇、花時計の近くにある消防西分遣所に到着した。ガレージでは、2016年6月1日に配備されたばかりの新型化学消防車が参加者たちを出迎えた。

消防西分遣所では、敬礼をして空港用化学消防車見学ツアーの参加者を出迎えた
空港消防の仕事を説明するNAFS 警備消防センターの泉谷佳輝氏

 この新型車両は、多くの空港や自衛隊などで導入されている米・Oshkosh(オシュコシュ)製の「ストライカー 6×6」がベース。全長12.36m、全幅3.10m、全高3.80m、総重量3万4885㎏。水積載容量は1万500リットル、薬液積載容量は880リットル、粉末消火剤220kg。最大の特徴は、国内の空港で初となる高位置対応伸展型放水銃「HRET(エイチレット)」が装備されていることだ。この西分遣所には、2台導入されたうちの1台が配備されている。

 参加者に空港消防の仕事について「毎日、25名体制で交代しながら、365日飛行機の運航を見守っています」と説明するのは、NAAセーフティーサポート(NAFS)警備消防センターの泉谷佳輝氏。この西分遣所は目の前にあるA滑走路を管轄しており、化学消防車が2台配備されている。この西分遣所と同様に、化学消防車はB滑走路の東分遣所にも2台、空港敷地のほぼ中央にある暫定待機所にも1台の合計5台が配備、そして予備車が1台あるという。ほかに、救助する車両、薬品を積載している車両、指揮をする車両など、成田空港では17台の車両を所有している。

 泉谷氏はまた、「毎日700回ほどの離着陸があり、航空機のパイロットと管制官のやりとりを無線で聞き、異常がないかを判断している。消防の仕事は、未然に防ぐということの方が多い。私たちが活躍するということは、とんでもないことが起きているということなので、活躍しないことを願って、ずっと見守る仕事でいたい」と語った。

普通の消防服とは装備が違うという特殊防火衣の着用体験
消火器を使った消火体験
運転席に座って記念撮影できる新型化学消防車の乗車体験には長い列ができた

 ガレージでは、新型化学消防車の乗車体験(運転席に座って写真撮影などできる)や、特殊防火衣の着用体験、消火器を使った消火体験などで、参加者が楽しんだ。乗車体験では長い列ができたが、ひととおり参加者の乗車が終わると、いよいよ化学消防車による放水のデモンストレーションとなった。

放水のデモンストレーションのためガレージから出てくる新型化学消防車
2015年まで主力だった化学消防車(左)と新型化学消防車(右)

 ガレージから新型化学消防車のストライカーが出庫し、2015年まで主力だった化学消防車(ローゼンバウアー製のパンター)と並ぶ。まずは、パンターの放水からスタート。5秒前から、参加者が声を揃えてカウントダウン。「……3、2、1、0!」の声と同時に、パンターの上部、前部の2門の放水銃(タレットノズル)から、勢いよく放水された。

 上空に向かって勢いよく放水された水は風にあおられ、ちょうど参加者のいる場所に降り注いだ。突然のアクシデントに、はしゃぐ子供たちと逃げ惑う大人たち。参加者は身を以て、放水銃の性能を知ったようだ。

化学消防車。ローゼンバウアー製のパンター
カウントダウンをして放水がスタート
放水銃(タレットノズル)から、勢いよく放水されていく
上部、前部の2門からの放水。風にあおられ、こちらに水が向かってくる
突然のアクシデントが参加者たちに降り注ぐ

 気を取り直して、続いて新型化学消防車の放水となる。放水の前に、改めてHRETの説明があった。HRETは、伸縮するアームの先端に放水銃が付いており、車両(操作員)から、かなり前方または高低位置からの放水が可能となっている。放水銃には、カメラと、熱を感知もできる赤外線カメラが装備されており、モニタを見ながら遠隔操作をすることが可能となっている。また、クイのような鋭い装置があり、この「穿孔ノズル」を機体に貫通させて、燃焼している航空機を内部から消火できるようになっている。

放水の前に、HRETの説明となった
伸縮するアームの先端に放水銃があり、カメラ、赤外線カメラを見ながら遠隔操作が可能
機体に貫通させて、燃焼している航空機を内部から消火できる「穿孔ノズル」
最大15.2mの「ハイアタックポジション」

 新型化学消防車の放水はさすがに2回目とあって、参加者は少し離れた場所へ退避したり、傘を差したりと自衛策をとってカウントダウンを開始。先程のパンターの放水では、上に向かって放水すると、どんどん水が広がっていったが、HRETで高い位置から放水するとあまり広がらず、水が直進していく感じだった。高位置からの放水は「ハイアタックポジション」と呼ばれ、最大15.2mの高さから放水が可能。逆に低い位置「ローアタックポジション」は、風の影響を受けずに消火活動ができるという。

放水が開始。参加者はの多くが少し離れた場所へ退避していた
穿孔ノズル
穿孔ノズルからの放水は、先端部分から散布するように水が広がっている
新型化学消防車の前に並び記念撮影

 最後に、穿孔ノズルからの放水となった。穿孔ノズル先端には無数の穴が空いており、そこから広い範囲に放水される。放水銃のように狙った場所に届くように放水するのではなく、貫通した機内に水を散布するような放水だ。風にあおられて降り注ぐ水も、細かい霧のカーテンのようで、子供たちも水を浴びてテンションが上がっていた。

オシュコシュ製のストライカー 6×6をベースにした新型化学消防車。全長12.36m、全幅3.10m、全高3.80m、総重量3万4885㎏
新型化学消防車の運転席
ツアーが終了し、手を振ってバスを見送る

ハンガー内イベント

ANAハンガー内では、体験や展示などのイベントが行なわれた

 ジェット機との綱引き大会&空港見学ツアーでは、ANAハンガー前で行なわれた綱引きのあと、ハンガー内でさまざまな体験ができるイベントが開催された。コンテナの中に綺麗にダンボールを積み込む貨物積み込み体験、マーシャラー体験、CA(客室乗務員)のスカーフ巻き体験など。

 なかでも盛り上がっていたのは、ライフベスト着用体験。普段、飛行機を利用する際、映像やイラストでしか見ない“膨らませる方法”を体験する。つまり実際に膨らませるのだ。エアバッグのようにボンっと膨らむのではなく、シューッとゆっくり膨らんでいく様子に、ライフベストを着用した子供も、それを見ていた保護者も「こんな風になるんだ!」と、楽しそうだった。

パズルのように、ダンボールをコンテナに積み込んでいく貨物積み込み体験
見慣れない工具が展示されている整備体験コーナー
機内食サービス体験コーナー
画面の指示に合わせて指示を出すマーシャラー体験
紙飛行機を折り、飛距離を競う紙飛行機体験
整備員やCA(客室乗務員)など、さまざまな職種の撮影用衣装が用意された制服体験
CAのスカーフの巻き方も体験
実際に膨らませるライフベスト着用体験

 ハンガー入口には、トーイングカーやベルトローダーといった空港内で働く車が展示され、運転席に座ったり、ベルトローダーのベルトを歩いたりと、なかなかなできない貴重な体験を参加者が楽しんでいた。

 ハンガー内イベントは時間に余裕もあり、先ほど綱引きをしたボーイング 787-8型機も近くにあるということで、機体に触れてみたり、近くで写真を撮ったりする参加者も数多くいた。

フードローダーやトーイングカーなど空港内のさまざまな働くクルマを展示
運転席に座ったり、ベルトやデッキに登ったりできた
ボーイング 787-8型機の近くまで寄って、撮影したり触ったりと飛行機好きには貴重な時間となった