ニュース
大分県、県内観光地の現状と今後を紹介するイベントを開催
「坐来サロン2016」と題し、別府・由布院・日田の取り組みを説明
2016年7月19日 18:12
- 2016年7月15日 開催
大分県は、「坐来サロン2016~別府・由布院・日田のいま、そして、これから~」と題したイベントを、東京都内で開催した。この坐来サロンは2016年1月にも開催しており、「由布院のこれまで、そしてこれから」と題して、由布院について紹介されたそうだが、平成28年熊本地震を受けて、再度開催されることになったという。
4月14日以降発生した平成28年熊本地震により、大分県も大きな被害を受けた。なかでも、大分県最大の観光地である別府や、全国的に人気の高い温泉地、由布院では、宿泊施設や観光施設、周辺道路などにも被害が発生し、震災以降かつてないほど観光客が減少しているという。
今回のイベントには、その別府と由布院に加えて、大分県の温泉地、日田から関係者が参加し、現状を説明するとともに、今後の取り組みについて説明された。
イベントには、別府からはおんせん県観光誘致協議会の会長で、ホテル白菊代表取締役社長の西田陽一氏、由布院からは由布院温泉観光協会の事務局長の生野敬嗣氏、そして日田温泉からは日田温泉小京都の湯 みくまホテルの若旦那、諫山泰崇氏が参加し、まずそれぞれの温泉地の現状を説明した。
イベントの冒頭、大分県 企画振興部 観光・地域局 観光・地域振興課 課長の阿部万寿夫氏によって、各地の現状が報告された。
熊本地震では、別府と由布院という、大分県の2大観光地が被害を受けたものの、それ以外の観光地はほとんど被害を受けていないという。また、温泉についても、湯量などまったく変わっていないそうだ。
ただ、風評被害が非常に深刻な問題となっているという。実際、2016年5月では、別府で39.8%減、由布院で61.6%減、日田温泉で33.4%減と、大幅に観光客が減少したそうだ。ただ、九州内からの観光客は大きく落ち込むことはなく、関西や関東からの観光客減少が大きく影響しているとのこと。
そういったなか、「九州ふっこう割」が7月1日より開始、九州全体で180億円支給される交付金のうち、61億円が大分県に割り当てられた。大分県および熊本県への旅行については最大70%引きになるなど、被害の大きかった大分県と熊本県は特に手厚い内容となっており、観光客回復の起爆剤になると期待するとともに、一気にV字回復させたいと意気込んでいるという。
別府の取り組み
別府は、温泉の源泉数、湧出量ともに日本一としておなじみの温泉地だ。また、泉質の多さも特徴とのことで、日本各地の温泉地と同じ泉質の温泉を同時に楽しめるのも特徴という。別府は、熊本地震で大きな被害を受けたが、5月の大型連休時期には、ほとんどの旅館やホテル、温泉施設が元気に営業していたそうで、現在では112施設中111施設が営業しているとのこと。
その現状を知ってもらうために、まず大分県内の人に向けて、大型連休時期に「Go Oita」キャンペーンを立ち上げた。「今なら、温泉で泳げます。(でも、本当に泳いではいけません)」、「今の別府にとって、お客様は(マジで)神様です。」というキャッチコピーで地元新聞に広告を展開するなどしてアピール。
続いて、九州地域に向けたキャンペーンとして、6月に福岡県の福岡新聞に10日間連続でカラーの広告を出すとともに、福岡市天神から別府までの往復高速バスチケットと、別府の路線バスの1日チケットなどをセットにした「神様チケット」を販売するなどして、観光客の回復を目指してきた。
今後は、九州ふっこう割も加えて、夏には対前年比100%、秋以降は対前年比130%の観光客数を目指してキャンペーンを繰り広げる計画とのこと。そして、今回の地震は大変なピンチではあったが、これを大きなチャンスに変えていきたいという。
由布院の取り組み
由布院は、「全国あこがれ温泉地ランキング」で10年連続1位を獲得するほど全国に知られる温泉地だ。以前はそれほど有名ではなかったが、1975年4月に発生した大分県中部地震の後、地震から復興し元気に営業していることを知らせるために、辻馬車を走らせたり、音楽祭や映画祭を実施するなどのさまざまな取り組みを通して知名度が高まり、現在のような人気温泉地へと成長したという。
今回の熊本地震では、幸い人的被害はほとんどなく、由布院駅駅舎のガラスが割れるなど一部施設にも被害はあったが、それも大きなものではなかったそうだ。現在は、まだ一部施設で営業できていない所もあるそうだが、街の観光はまったく問題が無い状況だという。そういった中、由布院では、同じく地震の被害を受けた熊本県の中で、比較的被害が軽微だった阿蘇の黒川温泉とコラボレーションし、「黒川×由布院 夢つなぐ200日」と題したキャンペーンを実施している。第1弾としては、6月20日から8月31日までの期間、黒川温泉と由布院で連泊した場合に、2泊目の宿泊料金が1割引きになったり、一部施設を無料で利用できるといった特典を用意したとしている。また、来年(2017年)春には、由布院駅の横に、観光インフォメーションセンターもオープン予定になっている。また、大分県内だけでなく、近隣県の温泉地や観光地などと広域で連携して取り組んで行きたいという。
さらに、今回の地震を機に、観光協会や旅館などだけではなく、地域の商店も巻き込み、地域全体で観光客をおもてなしするキャンペーンを、7月11日から9月末まで実施する予定。そして、この地震を契機として、ピンチをチャンスにするとともに、41年前の大分県中部地震からの復興とは違う、新たな発見を由布院で感じてもらえるようにしたいという。
日田温泉の取り組み
日田温泉は、大分県の東寄り、三隈川のほとりに位置する温泉地だ。幅の広い三隈川と、三隈川に浮かぶ屋形船で懐石料理が楽しめるという点が魅力という。また、九州南部から福岡方面へと向かう交通の要所として、古くから栄えた街だ。
日田温泉では、熊本地震の影響はほぼなかったそうで、熊本や由布院、別府などから近いということもあって、地震直後は復興事業の関係者が多く詰めかけ、例年を上回る成績だったという。ただ、5月以降はかなり観光客数が落ち込んでおり、別府や由布院に遅れつつ、観光客回復に向けた取り組みを開始したという。
まず、すべての温泉宿で襖や障子を張り替えるなどして、部屋を綺麗にしているという。また、漫画「進撃の巨人」の著者、諫山創氏が日田出身ということで、諫山氏書き下ろしイラストを印刷したTシャツを製作し販売。
ほかには「元気倍(ばい)!日田キャンペーン」と題して、7月1日より一部観光施設を無料開放したり、9月まで花火を打ち上げたり、10月以降は三隈川に浮かぶ屋形船で夕日を見ながら日田の地酒やワイン、シャンパンが楽しめる屋形船バーを実施する計画もあるという。
日田温泉から今回の別府や由布院の活動を見ると、すごいという印象が非常に強いそうで、別府や由布院の背中を改めて実感したという。そして、これをきっかけに、日田温泉も別府や由布院に負けない温泉地になると決意し、さまざまな取り組みを行なっていくとともに、10年、20年後の姿を楽しみにしてほしいと締めくくった。
なお、九州ふっこう割が開始となったことで、2016年7月から8月にかけての予約状況は好調に推移しているという。施設によって差はあるそうだが、別府では対前年比100%を達成。由布院では7月は対前年比100%をやや下回っているそうだが、8月から9月は対前年比100%を超える水準で推移。日田温泉では、7月は70~80%ほどの水準、8月も80%ほどとのことだが、9月は110%ほどになっているという。
このほか、7月19日より、全国のセブン-イレブン、ローソン、ファミリーマート店頭で、大分県内の宿泊施設で利用できる5000円の宿泊券が2500円で購入できる旅行クーポンが販売予定となっており、さらなる上積みも期待しているとのことだ。
また今回のイベントでは、別府、由布院、日田温泉のご当地グルメの試食も行なわれた。これらご当地グルメを味わえるのも、大分県の観光地の大きな魅力となるので、温泉はもちろん、グルメ目的でもぜひ大分県に足を運んでほしいと締めくくられた。