車中泊の拠点 RVパークを訪ねる

SLも走る秩父鉄道の真横でたき火と車中泊を楽しむ埼玉・長瀞のRVパークに泊まってきた

RVパークsmart 長瀞 ~川とSLの郷~

3月からはSLの運行も始まる。ほか貨物列車、ラッピングトレインなどバラエティに富んだ列車が通過する秩父鉄道の真横にあるRVパーク。キャンプのようにたき火や外調理ができるのもうれしい

 今回行ってみたのは、1月にオープンしたばかりの「RVパークsmart 長瀞 ~川とSLの郷~」(埼玉県秩父郡長瀞町野上下郷1567-1)だ。

 長瀞とは埼玉県秩父郡にある長瀞町のこと。都内からは関越自動車道の花園ICから秩父方面に約30分ほど走ると到着する。長瀞は山に囲まれた地形で、町内を流れる荒川は岩畳などダイナミックな地形のなかを流れる渓谷となっているので、地形を活かした観光も盛ん。また、山へ向かえば日帰り温泉施設が複数あり、食に関しても人気のお店が多いエリアである。

埼玉県秩父郡長瀞町にある「RVパークsmart 長瀞 ~川とSLの郷~」
長瀞運輸の雨宮氏。新規事業としてRVパークを開設した。RVパークsmartは予約から入退場までを無人で行なえる設備を持っており、埼玉県のRVパークsmartはこの長瀞だけ

 本施設は無人で運営する「RVパークsmart」という形態になっている。このタイプのRVパークはネットで予約を行ない、予約完了後に発行されるQRコードを使うことで施設への入場やチェックイン、電源の利用などができるというもので、施設側は人員を配置する必要がないし、利用者のチェックインが夜遅くになるような場合でも対応できる。また、入場後の外出、再入場も時間に縛られず行なえるなど、施設側・利用者の両方にメリットがある。

 近隣に食事処や温泉施設が多いエリアだけに、施設スタッフに気兼ねすることなく出かけられるこのシステムに魅力を感じる人は多いだろう。

国道140号を花園IC側からくると左手に「アメミヤ興業」の看板が付いた建物があり、それを過ぎてすぐにRVパークへの案内板がある
秩父側からくるとこの看板。看板の後ろはアメミヤ興業の車両置き場があり、右奥にアメミヤ興業の建物が見える
国道140号を曲がるとすぐに秩父鉄道の踏切があり、それを渡ると左側にRVパークへの入口通路がある
黄色いゲートの奥がRVパークへの通路。照明がないので夜間に到着したときは分かりにくいかもしれない
通路を進むとRVパークのゲートがある。ゲート周辺は照明があるので夜間でも明るい
ゲート前にある読み取り機に、予約完了後に発行されたQRコードをかざすとゲートが開く。出かけるときもQRコードをかざすだけ

 場内は未舗装の路面だが整地されているので平坦。駐車スペースは8つあり、1番と8番はサイズが約10×7mと広く取られているので、大型車両でも余裕で駐められる。

 なお、1番のスペースは秩父鉄道の線路沿いなので、鉄道が好きな人であればある意味、一等地。そして8番はドッグラン(あとで紹介)の前なので、愛犬と一緒の人に向いた場所になっている。

 そのほか2番~7番も約7×7mという広いスペースだが、敷地形状の都合で4番と5番のスペースは写真を見て分かるように変則的なカタチ。ただ、実際にクルマを入れてみたところ、クルマの駐め方次第では2番、3番、6番、7番よりも広く使える感覚だったので、あえて4番と5番のスペースを選ぶのもアリだろう。

 利用料金は1番と8番が4500円、2番~7番が3500円。すべて電源使用料込み。チェックインは13時からでチェックアウトは翌11時とゆっくりできる設定。

 予約は公式サイトから行なうようになっていて、受け付けは利用したい前日の23時までだ。つまり当日予約はできないので、その点は注意してほしい。

 なお、施設内や歩いて行けるところに飲料水の自動販売機やコンビニはないので、飲み水などは事前に用意しておくとよい。

予約したスペースにもQRコード読み取り機があり、ここに読み込ませることで電源を利用できる
電源ソケット。電源使用料は施設使用料に含まれている。2番から7番はスペースの奥(荒川側)に電源がある。1番は秩父鉄道沿いの横面、8番は7番寄りの横面に電源がある。区画が広いので延長コードを用意していった方がいいかも
1番から8番まで、各スペースの配置図
1番スペース。サイズは約10×7m。電源の位置は線路側の後方。利用料金は4500円
1番スペースは秩父鉄道の線路の真横なので、列車通過時は迫力ある走行音が聞ける
2番と3番のスペースは7×7mのサイズ。トイレや水道に近いため人気になっているという。利用料金はどちらも3500円
このように広さは十分にある。荒川側は背の高い柵や木がないので見晴らしもいい
4番と5番は敷地の形状の都合、荒川側の辺が斜めになっている。こちらも見晴らしはいい。利用料金はどちらも3500円
横から見るとこんな感じ。表記では7×7mとなっているが、実際はもっと広いかも
6番と7番も7×7mの正方形。利用料金はどちらも3500円
一辺が約7mあるので大型のキャンピングカーも駐められる
今回は8番のスペースを借りた。サイズは約10×7m。入口やトイレ、水道から一番遠くとなるスペースになので、プライベート感の確保はしやすい。とはいえトイレまで歩いて1分も掛からないので不便さはない。利用料金は4500円
8番の後ろはドッグラン(無料)なので、犬連れの人にも向いているスペース
各スペースの間には仕切りがないので、隣のスペースに利用者がいるときはクルマをお隣さん側に駐めて「壁」作るといいかも
通路と駐車スペースでは路面の作りを変えている。駐車スペースは細かくした砂利を固く敷き詰めている。また、区画の仕切りには鉄道の線路に使う枕木(コンクリ製)を使用するというユニークな作り

基本的な設備は揃っていて、直火OKのエリアも用意されている

 RVパークsmart 長瀞の設備を紹介しよう。まずはトイレ。入口ゲート横にトレーラーに乗ったトイレを設置している。男女別で男子用は小便器×1、個室×1。女性用は個室×1となっている。トイレ内には手洗いと鏡を備えている。電気はドアを開けたところにあるスイッチで点灯、消灯する。

 洗い物などに使える水道は3つあり、スペースは囲いと屋根があるので雨天でも濡れずに利用できる。照明があるので夜間も不便はない。

 洗い場とトイレの間には、キャンピングカーの汚水を処理できるダンプステーションもある。

 ゴミ捨て場はあるが利用するには有料ごみ袋を購入する必要がある。ゴミ袋は1枚100円で、ゴミは可燃ゴミと不燃ゴミに分けるので基本的に2枚必要だ。

 なお、シャワーやお風呂はないが、クルマで約15分のところに日帰り温泉があり、そちらの利用を勧めている。日帰り温泉では食事もできるとのこと。地元の名物である秩父豚みそ丼やわらじかつ丼などもあるので、入浴だけでなく夕飯も済ませてしまうのもいい。

 あと、触れておきたいのが陽当たりについて。写真を見て分かるようにRVパークsmart 長瀞は敷地内外に背の高い木などないので、どのスペースも陽当たりはいい。この環境はいいところでもあるけど、気温が高くなってくる時期では日陰が欲しくなるのも事実。そのため車中泊であっても車外にイスやテーブルを展開するのなら、オーニングやタープなど日よけになるモノを持っていった方がいいだろう。RVパークsmart 長瀞ではスペース内に収まるサイズであればオーニングなどの展開はOKとしている。

トイレはトレーラーに載せてある
男性用トイレ。個室は暖房便座に温水洗浄便座付き
手洗いに鏡がある。ドアの横に電気のスイッチがある
洗い場には横長のシンクと3つの水栓がある。お湯は出ない
酒類販売の資格を取得している。販売しているのは秩父エリアのお酒でビール、日本酒、ウイスキーとある。有名なイチローズモルトも在庫している
金曜限定で販売しているお弁当。地元でも人気の「武島屋のいなり・のりまき」で、近所の人も買いに来るという。武島屋は秩父にあるお店で、そこから取り寄せている
濃いめの味つけが特徴の復刻鳥新弁当。秩父で人気だった「鳥新」というお店(現在は閉店)のから揚げを、仕出し弁当屋である「こいずみ」が復刻したもの。から揚げ以外には鶏レバーの甘辛煮、ご飯が入っている。どちらのお弁当も5個以上の注文があれば、金曜以外でも販売してくれるという(RVパークsmart 長瀞へ事前予約を)
たき火台とたき火シートを使用したたき火はOKなので、RVパークsmart 長瀞の事務所(アメミヤ工業の建屋内)では薪の販売もある。パーク内には灰用の捨て場もありこちらの利用は無料
施設の紹介に戻ろう。ゴミ捨て場はあるが、利用するには有料ごみ袋を購入する。1枚100円。可燃ゴミと不燃ゴミは分別するので両方のゴミを捨てる場合は2袋必要。ゴミ入れの隣にあるのはたき火用の灰捨て
入口ゲートの横には直火OKのエリアが作られている。ここは共有スペースとなる
8番のスペースの後ろは無料のドッグラン。利用可能時間は8時30分~17時。この時間外は入口扉は施錠される
ドッグランの地面は砂敷きとなっている。広さも十分ある。ドッグラン利用時は必ず飼い主も一緒にドッグラン内に入って犬の管理をすること
鉄道と反対側は長瀞渓谷。渓谷へ降りる道もあるが、地形が険しく流れも速い危険な場所でもあるため降りるのは厳禁
川へ降りる道には注意看板がある。ほかにも降りれそうな道はあるがすべて進入禁止

3月からはSLも運行。秩父鉄道の列車を見るのも楽しい

 RVパークsmart 長瀞は秩父鉄道の真横に沿った立地のため、秩父鉄道の列車が走り抜けるのを間近で見ることができるのも特徴だ。

 秩父鉄道は埼玉県の羽生から三峰口までを結ぶ路線で、旅客輸送のほかにセメントを運搬するため、私鉄としてはめずらしい電気機関車によるセメント貨車輸送が行なわれている。

 また、通常の旅客電車も地域PRを行なうラッピングトレインを数種類走らせているし、3月からは「SLパレオエクスプレス」という蒸気機関車による客車の運行も始まるなど、鉄道ファンはもちろん、詳しくない人でも見て楽めるバラエティに富んだ内容になっている。

 なお、SLパレオエクスプレスは運行日が決まっているので、SLが見たいのなら秩父鉄道のWebサイトで運行日を確認してほしい。

 ちなみに列車通過時の音はそれなりに迫力があるものだが、旅客電車は2両や4両編成が主なのですぐに通り過ぎる。そのため「うるさい」とは感じなかった。貨車については編成は長いが速度がゆっくりで貨車自体には動力がないからか、夜間であっても音は気にならなかった。これは意外だった。

セメント輸送を行なう電気機関車。デキ300形という車両
秩父エリアが舞台の人気アニメ「あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。」のラッピングを施した「超平和バスターズトレイン」
通過する列車の姿はRVパークからこのように見える。走っているのは秩父鉄道沿線のPRを行なうフルラッピングトレインの「彩色兼備」
こちらは秩父ジオパークトレイン
23時過ぎまで列車は走っているが、編成が短くすぐに通過してくれるから「うるさい」と感じない。朝の始発が走り始めても音で目が覚めることはなかった。ちなみに光の帯として映っているのが列車。夜間なのでスローシャッターで撮ると4両編成もこんなに長い編成に写る
線路の向こうは国道140号線。こちらを走るクルマの音も聞こえるが気になるものではなかった。夜は通行量がグッと減るのでなおさら音は気にならない
荒川側は灯りがない。取材日は半月くらいの月齢で夜でもそこそこ明るかったがそれでも星はこれだけ写った
もう少し撮るかと思っていたらこの日は曇り予報だったので予報どおり曇ってしまった。ただ、空は広く見えるし周辺は明かりがあまりないので、天気がよければ鉄道見学のほかに星空鑑賞も楽しめる
たき火台とたき火シートを使えばスペース内でたき火もOK
販売している薪は大きめなので、たき火台が小さい場合はノコギリや鉈など持っていった方がいいかも

 RVパークsmart 長瀞はオープン間もない施設だが、ほかのRVパークとは違った魅力を持つだけに、SNSなどでいい評価が広まっているよう。そのためすでに週末の予約は取りにくいらしいので、気になった人は早めに予約を入れてみることを勧める。

 なお、平日は余裕があるので、まわりに人が少ない環境でのんびり過ごしたい人は平日を選ぶと満足度もより高いだろう。ちなみに取材も平日に行ったが、ご覧のとおりほかに利用者がいない貸し切り状態だった。

電気、水道、トイレなし、野営地的なキャンプ場も運営

 さて、最後に長瀞運輸が運営するキャンプ場も紹介しておこう。それがRVパークsmart 長瀞からクルマで5分ほど走った山のなかに作った「1日1組限定」のキャンプ場「ナガトロキャンプベース」だ。

 ここは水道も電気もトイレもなにもない「ただの山のなか」なので、それなりにキャンプに慣れた人向けの場所である。また、普通のキャンプ場のように消灯時間がないので、深夜まで談笑していてもOKな場所でもある。

 現在はユーザーの声を参考にテントを張るのに具合がいいよう、重機を入れて地面を平らにしている最中なので一時的に予約が取れない状態だが、3月過ぎに再び予約ができるようになる予定。ナガトロキャンプベースの予約方法はRVパークsmart 長瀞のWebサイトを参照してほしい。

 こちらのキャンプ場は車中泊ユーザーでも利用できるが、未舗装の道と敷地なので2WDのクルマだとスタックの恐れもある。雨の日や雨上がりなどの利用のときは特に注意が必要で、路面状況をよく見ながら入場し、駐車位置も路面がしっかりしていそうなところを見きわめた方がいいだろう。

RVパークsmart 長瀞からクルマで約5分ほど走ったところにあるキャンプ場。1日1組しか入れていない
木のないエリアもあるので星空を見ながらキャンプをしたいならこちら
杉林のエリアもある。木をうまく使えばハンモックも張れるし、軍幕などの展開もできる。ナガトロキャンプベースはオープンして間もないがすでにリピーターが多いそうだ