井上孝司の「鉄道旅行のヒント」

紙のきっぷ発券はなぜ混んでる・難しい? 指定席券売機と受取専用機を使いこなすには

「えきねっと」で申し込みをかけて発券した、紙のきっぷの例

 近年、鉄道事業者各社ともネット予約サービスの導入が進んでいる。ただ、運賃・料金の仕組みは根本的には変わっていないし、全面的にデジタル化するわけにもいかないのが実情。結果として、「ネットで予約してから紙のきっぷを発券、それを使って改札を通る」パターンが多くなっている。すると、その紙のきっぷをスムーズに受け取れるかどうかが問題になる。

受け取りの方法は大きく分けると2種類

 ネット予約したものを紙のきっぷで受け取る場合、その方法は大きく分けると2種類ある。有人窓口と指定席券売機である。

 ところが近年、有人窓口の混雑が話題にのぼる場面が増えてきた。もともと、あれこれ相談しながら買う人がいるなどの事情から、有人窓口は時間がかかりやすい傾向がある。そこにネット予約の受け取り利用や外国人旅行者が加わり、しかも有人窓口の数か減っているから、ますます混雑がひどくなったということであろうか。

 新大阪駅で、有人窓口は行列ができているのに、指定席券売機の方はさほどでもない、という光景を見かけたことが複数回あった。ただし、これがそのとき限りの現象なのか、一般的な現象なのかは分からない。

新大阪駅で。左の有人窓口と比べると、右の指定席券売機は行列が短い

 理想を言えば、「乗車当日ではなく事前に発券しておけばいいのに」ということになる。しかし、遠隔地、例えばJR九州のネット予約サービスを使い、「江戸で長崎のきっぷを買う」となれば、そうもいかない。また、JRの駅が近くにないのに、JRの駅まで行って指定席券売機で発券するのも、費用と手間がかかる話である。

 そうした事情を受けたものか、新幹線のみならず、最近は在来線特急でもチケットレスサービスを導入する事例が増えつつある。利用できるものなら、そちらにするのも手だ。

 ただしこの手のサービスでは、乗車券と特急券がワンセットになっていることがある。すると、列車ごとに区切って購入することになり、「乗車券をできるだけ長い距離にして安くあげる」が成立しなくなる。

受け取りの穴場はないものか

 では、紙のきっぷを発券するとして、受け取りの穴場はないものだろうか。

 分かりやすいのは「ターミナル駅ではなく、その近所の駅」だが、まず「どこの駅に指定席券売機があるか」を調べる手間がかかる。しかも、その駅までの移動に要する手間と時間は無視できない。列車の本数が多ければいいが、少ないと現実的ではなくなる。

 では、1つの駅で離れた場所にいくつも出札機器が設置されている場合はどうか。例えばJR新宿駅だと、地下の中央西口にある指定席券売機は、ほかと比べて空いていることが多いようだ。そもそも、この改札自体が新宿駅にしては空いている。

 そして受取専用機である。その名のとおり、ネット予約の発券に機能を絞ったものだ。大きなターミナル駅で見かけることがあるが、利用している人は少ないように見受けられる。筐体が小さく、目立たないからかもしれない。

JR西日本が設置している受取専用機の例(姫路駅)
その受取専用機の画面。予約・決済済みのきっぷを受け取る機能に特化している様子が分かる。JR西日本の新幹線駅に設置されている受取専用機では、JR西日本の「e5489」に加えて、JR九州のネット予約サービスも受け取れることがある。山陽新幹線と九州新幹線が直通運転を行なっている関係であろうか

 なお、受取専用機と同じ筐体を持つ、クレジットカード専用機の設置事例もある。機能的には一般の指定席券売機と同じで、ネット予約の受け取りも可能、ただし支払の手段をクレジットカードに限定したものだ。このクレジットカード専用機もまた、比較的空いている傾向がある。

 実は、クレジットカード専用機も受取専用機も、JRシステムが開発した「MV60」という機器で、ソフトウェアの設定だけ変えているものと思われる。

東海道新幹線では、改札口の近くなどにクレジットカード専用機を設置している場面をよく見る(東京駅)
JR北海道では、「話せる券売機」と「クレジットカード専用機」の組み合わせを見かける(北見駅)
そのクレジットカード専用機の初期画面。通常の指定席券売機(MV50型)と同じ機能を備えていることが分かる

機械の操作にもなじんでおきたい

「どうも指定席券売機はよく分からない、有人窓口で相談しながら買う方が安心できる」という向きもあると思われる。だが、人手不足問題などの事情はそう簡単には変わらないから、機械化、そしてネット予約へのシフトは止まらないだろう。指定席券売機や受取専用機の操作に、なじんでおくに越したことはない。

 そこで1つハードルがあるとすれば、画面構成がバラバラなことだろうか。設置場所に合わせたカスタマイズがなされているため、最初に表示している画面の内容が「全国共通」になっていないのだ。

 また、最初に「どこからどこに行きたい」を指定するのではなく、券種(指定席や自由席、乗車券など)あるいは購入形態(ネット予約の受け取りや、乗り換え案内を使うか否か)を選ばせるところも、難しく思われる原因であろう。

 特急券を購入する場合、操作中の指定席券売機が設置されているエリアとそれ以外を分けて、後者は乗り換え案内機能を利用する形になっているようだ。例えば、東京23区内の駅に設置されている指定席券売機で、北海道や近畿圏や四国や九州の特急券を購入する場合には、乗り換え案内から列車を検索する形になっている。

JR東日本の在来線駅における、一般的な「指定席券売機」の初期画面
対してこちらは、姫路駅の在来線・新幹線乗り換え改札付近に設置されている指定席券売機。初期画面が、在来線から新幹線に乗り換える場面に特化した内容にカスタマイズされている
東室蘭駅の指定席券売機。JR北海道は近距離の乗車券について専用機を置かずに、指定席券売機に集約していることがある。そのため、初期画面は近距離券が主体になっている
こちらは北見駅の指定席券売機。画面の構成は東室蘭駅と同じだが、近距離券の駅名表示は違いがある

 JR各社ではWebサイトで指定席券売機の使い方について解説しているので、利用に際して不安があれば、事前に目を通しておくとよいかもしれない。なお、JR西日本とJR四国では「みどりの券売機」と呼んでいるが、モノはJR他社と同じだ。

 JR東日本のWebサイトでは、主な購入商品ごとに画面がどう変化していくかを示すコンテンツを用意しており、これがもっとも分かりやすそうだ。

 なお、指定席券売機は新規購入だけでなく、購入した指定席の変更もできる。この話はまた、回を改めて取り上げてみたい。