荒木麻美のパリ生活
モン・ドールから始まるオーヴェルニュの夏休み、火山と湖と温泉と(後半)
2026年10月17日 08:00
今年の夏はフランス中部、オーヴェルニュ地方にあるモン・ドール(Mont-Dore)に滞在し、ここを中心にあちこち見てきました。
モン・ドールからクルマで40分ほどのところにあるラ・パヴァン湖(Lac Pavin)は、神秘的な火山湖です。火山湖とは火山の爆発によってできた巨大な穴に水が溜まった湖で、サンシー山地の火山活動の最後の時代にできた、フランス本土では最も新しい火口湖とされています。
ラ・パヴァン湖の最大深度は約90mもあり、中央部が黒に近い青に見えます。昔の人々は、この神秘的な湖の底に悪魔や怪物がいる、石を投げると嵐が起きるといった伝説を作りました。科学的な調査の結果、深い部分では水の循環が起こりにくく、酸素の少ない層が形成されていることが分かりました。そのため湖底には過去の環境変化を記録した堆積物が残り、科学研究の対象になっています。
モン・ドールからクルマで40分ほどのところにピュイ=ド=ドーム山(Puy de Dôme)があります。標高約1465mにあるピュイ=ド=ドーム山は、現在は活動していない火山です。周囲には約80もの火山が連なっています。
徒歩で登ることはできますが、環境保護のため自家用車では山頂までは行けません。山頂へは登山鉄道が運行しており、約15分で山頂近くまで行けます。徒歩で登る場合は片道1時間くらいですが、私は往復を登山鉄道にしました。車窓からオーヴェルニュの火山群を眺めながら、あっという間に山頂に到着です。
山頂に着いて最初に目にするのは地上から約85mの送信塔です。その周辺によく整備された散策路があり、誰でも気軽に火山群や美しい自然を360度のパノラマで見ることができます。散策路を送信塔に向かって進むと、メルクリウス神殿跡が。この神殿は、2世紀ごろに建てられた、ローマ時代のガリア地方最大級の山岳神殿です。予想される往時の姿をイラストで見ながら、約2000年前に、この山頂にこれほど大きな神殿が建ち、多くの人が巡礼に訪れていたということを想像するとわくわくしました。
モン・ドールからクルマで1時間ほどのところにあるボルヴィック(Volvic)に行きました。日本国内では買うのが難しくなりましたが、水の商品名ボルヴィックで有名なところです。
Grotte de la Pierre de Volvicは、中世以降に採石のために掘り進めてできた採石場です。採石場跡地は現在体験型ミュージアムとなっています。私が行った日は子供向けの音と光のショーで、採石場跡が精霊の力でよみがえるというおとぎ話の世界を楽しみました。
Volvic O' riginesでは、ボルヴィックの水がどう生まれるかを、パネルとバーチャル工場見学で学び、最後に新製品を含めた試飲会に参加できます。
モン・ドールからはクルマで1時間半とちょっと遠いのですが、中世の美しい町並みが残るサレール(Salers)に行きました。牛肉とチーズが有名で、住人は300人ほどの小さな村ですが、この日はいつにもまして多くの観光客がやってきます。というのも1年に1回の「牛祭り」の日だから。祭り当日は牛たちが村のなかを練り歩き、町の広場に到着すると、牛についての紹介がありました。サレール牛は美しい赤褐色の毛色で、山岳地帯の厳しい環境に適応した立派な体に大きくカーブした角を持ちます。その迫力ある姿を近くでじっくりと眺めました。
サレール牛の乳はチーズに、肉は山の草で育った風味豊かな味だそうで、祭りの日は地元の人たちが用意したハンバーガーが販売されていました。ハンバーガーは大人気で行列がすごかったので購入を断念しましたが、旅行中は各地でじゃがいもとチーズを炒めたトリュファード、ステーキ、加工肉のシャルキュトリーといったこの地方の料理を十分に楽しみました。
楽しかった1週間の休暇もあっという間に終わりが近づき、お土産探しです。フランス有数のチーズの産地なので、サン・ネクタール村が産地のクリーミーな牛乳のチーズ、牛祭りで行ったサレール村の名を冠した硬めで力強い味のチーズ、私の好きな山羊乳のチーズ、それからこれもこの辺の名産であるミルティーユ(野生のブルーベリー、小粒で酸味が強い)を使ったビスケットを買いました。
休火山、ローマ時代の神殿、中世の城と、1週間で何千年もの時を感じる夏休みとなりました。






















































