荒木麻美のパリ生活

パリから1時間半、磨き岩を巡るトレッキングで新石器時代にタイムトリップ

 パリ南部にある、Fay-les-Nemoursという地域に行きました。ここに新石器時代に使われた、石器を磨くために使われた岩がたくさん残されていると聞き、ぜひ見たいと思ったからです。

磨き岩探しマップ(Fay-les-Nemours提供)

 スタート地点となるBagneaux-sur-Loin駅までは、パリのリヨン駅からパリ近郊を走る電車に乗り、1時間半ほどです。

Bagneaux-sur-Loin駅

 駅から最初の磨き岩までは、畑や森のなかを1時間ほど歩きます。平坦な道ですし、朝もやの幻想的な景色も美しかったのですが、雨が降った翌日だったため、足元はなかなかのぬかるみ具合。トレッキングシューズは必須です。

 1番目の磨き岩に到着です。ここには2個の岩があり、くぼんだ所に触れてみると、想像以上につるつるで、これはまさに研ぎ石! 参加者たちは思い思いに岩の写真を撮ったり触れたりしながら、新石器時代の暮らしを想像します。

 1番目をあとに、また1時間ほど歩くと2番目に到着です。この岩には8本の溝があるのが特徴です。3番目と4番目も近くにあり、3番目には溝が5本、4番目には12本の溝と2つのくぼみがあります。石器の形により、溝部分では刃先を研ぎ、くぼみ部分で表面を磨いたようです。

磨き岩の近くにはこのような標識が出ているので分かりやすいです
2番目の岩
3番目の岩
4番目の岩

 スタートしたBagneaux-sur-Loin駅の方に戻り、反対側に行くと5番目に到着です。この磨き岩が一番有名で、直径130cmと大きく、溝が10本、4つのくぼみがありました。

馬術クラブの横や真っ白なスノードロップの密集地を見ながらスタート地点方面に戻ります
5番目
食べられそうにはないけれど、ベニチャワンタケっぽい美しい赤いキノコ
ツメゴケの一種と思われる不思議な見た目の植物

 5番目から30分ほど歩くと6番目の磨き岩です。2つのくぼみがあります。7番目には4つの溝と、くぼみが1つ。大きな突起があるのが特徴です。最後となる8番目には溝が1つ、くぼみが2つ、そして6つのくぼみがあります。

6番目
7番目
8番目

 以上の8つで磨き岩探しは終了です。よく見るとそれぞれの岩に特徴があって、予想以上に楽しい磨き岩探しトレッキングでした。

 スタート地点の駅に再度戻ります。ここからパリに戻ってもよいのですが、もし余力があれば、さらに1時間ほど歩いたところにあるイル・ド・フランス先史時代博物館にぜひ行ってください。

スタート地点の駅に戻る途中にある、お城、教会、運河

 小さな博物館ですが、先史時代の200万点を超える展示品を所蔵しており、石器時代から鉄器時代までの 2500点が常設で展示されています。研ぎ岩で作られた武器や道具も多数展示されているので、実際に見てきた研ぎ岩でこのような多種多様のものができるのかと、とても興味深かったです。

イル・ド・フランス先史時代博物館は森のなかにあります

 期間限定の企画展もあり、学校の引率で来ていると思われる、小学校低学年くらいの子供たちもたくさん来ていました。

 イル・ド・フランス先史時代博物館まで行った場合は、帰りはNemours Saint-Pierre駅からとなりますが、駅までの途中にある、運河越しに見える町並やお城の風景もすてきです。

 文献的史料がないからこそイメージも膨らむ先史時代。自然とともに町の景色も楽しめる8つの研ぎ岩探しトレッキング、お勧めです!

荒木麻美

東京での出版社勤務などを経て、2003年よりパリ在住。2011年にNaturopathie(自然療法)の専門学校に入学、2015年に卒業。パリでNaturopathe(自然療法士)として働いています。Webサイトはhttp://mami.naturo.free.fr/