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ハワイ州観光局、「アロハ」の真の意味を説明する「Aloha」セミナーを開催

日本とハワイの文化と精神性に基づいた新しいツーリズムの姿を提案

2016年5月26日 開催

「アロハ」の意味を説明した、オアフ経済開発委員会 社長兼最高経営責任者 ポノ・シン氏

 ハワイ州観光局は5月26日、ハワイの歴史や文化を学ぶ「アロハプログラム」のアドバイザーでありオアフ経済開発委員会 社長兼最高経営責任者のポノ・シン氏を招いて、「アロハ」の意味を説明し、ハワイと日本の文化のあり方について示したセミナーを開催した。

 会の冒頭、ハワイ州観光局 局次長 ミツエ・ヴァーレイ氏が挨拶し、今回のセミナーの主旨を紹介。「新しい観光戦略も出まして、とくに日本とハワイの関係を観光産業だけではなくリレーションシップをもっと深めていく。エデュ・ツーリズム(教育や文化を目的としたツーリズム)もそうですし、今後の姉妹都市提携もそうですし、そういった大きいビジョンで考えたときにもっと精神的な部分も歴史的な部分も文化的な部分も含めていろんなシェアリングをしていこうということになりました」と、従来の観光だけのつながりにとどまらない日本とハワイの関係性を深めるきっかけである旨を説明した。

ハワイ州観光局 局次長 ミツエ・ヴァーレイ氏

「アロハ」の本当の意味とは?

 セミナーではハワイ州観光局キャラクター「Shakaちゃん」によるアロハについての映像を紹介。内容は、都会で忙しく働いて気持ちが閉塞したMr.グーがハワイに行って、ハワイでの出来事からアロハの精神を知り、Shakaちゃんに生まれ変わるまでを描いたものだ。

 Mr.グーはハワイでの生活の中で、AKAHAI(アカハイ/思いやり)、LOKAHI(ローカヒ/協調性)、'OLU'OLU(オルオル/喜び)、HA'AHA'A(ハアハア/謙虚)、AHONUI(アホヌイ/忍耐)という5つの精神を学んでいくが、それぞれの頭文字を順につなげていくと「ALOHA」になる。

動画でMr.グーがハワイでアロハの精神を理解していく様が紹介された
5つの精神の頭文字をつなげたものがアロハだ

 そしてポノ氏から、自身の伯母に教わったというアロハの神髄も合わせて説明された。同氏の伯母はハワイの社会の中では大変に有名な伝承者である長老ヒラピ・パキであり、彼女からアロハという言葉を通してハワイアンの考え方を学び、アロハの精神を研鑽し続けてきたという。

 アロハは通常、AKAHAI、LOKAHI、'OLU'OLU、HA'AHA'A、AHONUIの順番で並ぶが、ポノ氏は、ヒラピ・パキの教えでAHONUI、HA'AHA'A、AKAHAI、'OLU'OLU、LOKAHIの順で神髄を伝承されたとのこと。

 ヒラピ・パキによるとAHONUIは「常に観察力を持って、瞬間を待つこと」、HA'AHA'Aは「始まりのために息を吐きだして自分を空っぽにすること」、AKAHAIは「白手袋をつけて人を触るような、人を汚さない気づかいのある優しさ」、'OLU'OLUは「赤ちゃんを包み込んで落とさないように抱くような、内に秘めた強さを伴った優しさ」、そしてLOKAHIは「アンブロークンで人とつながる」ことであるという。

 ポノ氏はアロハを「瞬間があって、その瞬間が来た時に自分を空っぽにし、白い手袋の清潔さと強さを秘めた優しいタッチで、つながること」と学んだといい、「武術を学ぶときのように教えられました」と語った。

 ポノ氏が語ったヒラピ・パキの話では、アロハをシェアするのは「これがアロハだ!」「これがハワイの文化だ!」と言って強制するものではなく、アロハをハワイのスタイルで見て感じて、心の中で共鳴してつながるもの、であるとのこと。

ハワイの伝承を守る長老ヒラピ・パキ
ポノ氏が伯母のヒラピ・パキから教わったアロハの意味

日本とハワイに共通するのは多文化を受け入れる柔軟さ

 ポノ氏は2011年にハワイで開催されたAPECでハワイを紹介するために作ったという動画を紹介。映像では、日本や中国、ポルトガル、フィリピンといったさまざまな国から移民がやってきて、多様性のある文化や人種があつまり、古くからのハワイの文化・人と交わり、ハワイの文化と人が生まれていった経緯が説明された。

 そしてポノ氏は「ハワイはいろいろな人種の血が1つになっている所だと分かっていただけたらと思います。ハワイは常にいろいろな人種の方が一緒に共存してきました。最初に自分でこのビデオを作った時に、日本語の字幕を入れてもらったのですが、それを最初に見たときに気がついたことがあったんです。日本ではひらがな、カタカナ、漢字、ローマ字といろんな言語を使うのでしょう?」と会場に問いかけ、「日本は中国から漢字が渡ってきて、あとから英語も入り、いろんなものが共存する中でさまざまなものができています。日本と似ていませんか? ハワイは」と語った。日本とハワイは多文化の上に自身特有の文化を形成してきた点で共通する点を示唆。

 ほかにも日本ではフラダンスを習う人が170万人いることについて、ポノ氏は「ハワイの人口より多い」と驚きつつも、「潜在的に中にあるものを見い出したい、もしくは感じたいというそういった気持ちがあるのでは。フラに日本の文化や伝統の奥深くにあるフィーリングとか感情といったそういったものを無意識的に感じているのではないでしょうか」と日本とハワイに共通するものを日本人がフラに見い出しているのではないか、と指摘。そして、「自分が忘れている感情を、ハワイに来た時に何となく思い出すのかな、と思います」と日本人がハワイにひかれる理由に対しての考察を述べた。

これからの目指すべき社会・共同体の姿として紹介されたハワイの「アフプアア」と、アフプアアと同様の概念を持つ日本の「里山」

 セミナーではハワイからアロハの精神が失われつつあるという危惧も語られた。ポノ氏は「私は先週、『おもてなし』という言葉を学びました。そして私は久しぶりに日本に来て、そのおもてなしをいたるところで見ます。私たちはアロハ、そしておもてなしという言葉の意味を本当に考えていかないと混乱してきます。ハワイの人もアロハの本来の意味というのは忘れかけています。私たちはアロハとおもてなしを継続していかないといけませんし、伝承していかないといけません」と話した。

 ポノ氏はここでハワイの航海術の話を紹介した。ハワイの民族は世界で初めて航海術を実践したのにもかかわらず、長い年月でそのスキルが失われ、ミクロネシアにただ1人いる伝承者に教えを請うことで復活したという。しかし、ミクロネシアの伝承者も後継者がいないためハワイの人に教えたという事情があったとのこと。

「ハワイの人がミクロネシアの伝承者に教わったことで、ミクロネシアの人はかつての自分たちの航海術をハワイの人に教わることができるようになった」と語る。そして「アロハというものがハワイから失われ始めています。多分、ハワイの方々はそれを将来、ほかの地域の人、国の人、日本から学ぶことになるでしょう。皆さんがハワイのアロハというものを感じていただいて伝承いただいて、そしてまたハワイに返してくれると思っています」と、外国の方へ観光を通してハワイの文化や精神を受け継いでいく必要性について話した。

 また、ポノ氏はフードツアーをしている友人に、日本人向けとしてタロイモを叩いて主食のポイにする「パウンディング・ポイ」の体験ができるツアーを企画してくれないかとお願いしているという。「ハワイの人はポイを食べることだけにしか眼中になく、作ることを忘れている」とポノ氏は語る。ツアーの内容は、日本の人にパウンディング・ポイでタロイモを叩いて食べる体験をしたあとに今度はお寺で餅つきをする体験を行なうというもので、日本とハワイの文化が似ていることやお互いの文化体験を通して、自国の文化を再認識させるという意図だ。

 ポノ氏は最後に「お互いにお互いの忘れているものを気づかせるために、ハワイと日本の関係というものはもっと強くなるべきです。日本はハワイにとってスペシャルな国なので、ハワイで今、お話ししたようなプログラムをどんどん作っていけたらと思います」と語った。

 セミナーの終わりにヴァーレイ氏は、「(日本とハワイは)経済的にも、文化的にも、今後の国際交流的にもどんどんつながりが強くなっていく。これをベースに、私どもの方ではエデュ・ツーリズムもそうですし、いろんな形でツーリズムの形というものがありますが、ハワイならではのものを、もっとリレーションシップや『つながる』をベースにやっていきたいというのがひとつあります」と、従来の観光にとどまらない形のハワイにおけるツーリズムを目指すとコメントした。

 また、ヴァーレイ氏は「マーケティングのブランディングやもしくはさまざまな数値、そういうところも意識はしています。ただ、観光客の人数を追うだけではなく、その旅行者の質やお互いのリスペクトやお互いの国からのリレーションシップ。これがないと観光業が継続していきません。トップの方々がそういった認識を持って観光戦略を作っているということですので、今までのハワイと違った観光業の今後の発展の仕方という意味合いでは、これからいろんな形のプログラムが生まれていくと思います」と、新たな観光のあり方を示唆する形で会合を締めくくった。

(丸子かおり)