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西武鉄道、レストラン観光電車「52席の至福」の車両公開と試乗会開催

車窓を楽しみながら埼玉県産の牛肉をテーマにしたコースを堪能

2016年4月14日 実施

2016年4月17日 運行開始

レストラン観光電車「52席の至福」の車両横でレストランクルーと

 西武鉄道は、4月17日に運行を開始したレストラン観光電車「52席の至福」の車両の内外装を、運行開始に先立つ14日に報道陣向けに公開。併せて試乗会を実施した。「52席の至福」は、池袋駅~西武秩父駅と西武新宿駅~西武秩父駅、西武新宿駅~本川越駅間で運行。土休日などを中心に1日1往復(運行日によって運行区間は変更)し、コース内では有名シェフ監修の料理を楽しめる。

 同列車の監修シェフは、総合監修として「つきぢ田村」の代表取締役 田村隆氏、和食担当として「La BOMBANCE」のオーナーシェフ 岡元信氏、洋食担当は、「Restaurant La FinS」のオーナーシェフ 杉本敬三氏、中華担当として「海鮮名菜 香宮」の料理長 篠原裕幸氏となっている。

 全席指定席で、乗車には予約が必要。価格は往路の「ブランチコース」が1万円。復路の「ディナーコース」が1万5000円。どちらもツアーの内容には「西武線1日フリーきっぷ」が含まれる。つまり、普通運賃往復分が含まれるので、この料金で秩父観光を楽しめる。片道レッドアロー号を使う場合には別途料金が必要になる。

ブランチコース

池袋駅10時50分頃発~西武秩父駅14時00分頃着
西武新宿駅10時45分頃発~西武秩父駅14時00分頃着
西武新宿駅10時45分頃発~本川越駅13時15分頃着

ディナーコース

西武秩父駅17時40分頃発~池袋駅20時00分頃着
西武秩父駅17時40分頃発~西武新宿駅20時00分頃着
本川越駅17時15分頃発~西武新宿駅20時00分頃着

 車両は、4000系車両をベースに4両1編成の外装をラッピングし、内装をリメークしたもの。内外装デザインは建築家の隈研吾氏が監修。外装は、沿線の風景に溶け込むような優しい空色をベースに、秩父の四季と、自然豊かな秩父や武蔵野を流れる荒川の水をダイナミックに表現したデザインとなっている。1号車(多目的車両)は芝桜、長瀞の桜を、2号車(客席)は秩父の山の緑を、3号車(キッチン)は秩父連山の紅葉を、4号車(客車)はあしがくぼの氷柱をモチーフとしたデザイン。

 ロゴは、グラフィックデザイナー 古平正義氏がデザイン。秩父の自然をトランプの柄に見立て、スペードを「水」、ダイヤを「紅葉」、クローバーは「緑」と「至福」、ハートには、乗客と気持ちが通う空間と時間にしたい、という思いが込められている。このロゴは車体横に大きく貼られるほか、室内の小物など随所に象徴的にあしらわれている。

52席の至福車両外観
52席の至福車両正面
52席の至福ヘッドマーク
前面行先表示は、52席の至福のオリジナル
52席の至福車両外観全景、4号車から
52席の至福車両外観全景、1号車から
52席の至福池袋~椎名町駅間を走行中(写真提供:西武鉄道)
1号車、芝桜、長瀞の桜
2号車、秩父の山の緑
3号車、秩父連山の紅葉
4号車、あしがくぼの氷柱
1号車と4号車の車両横には大きなロゴが貼られる
車両横の行き先表示板は塞がれている
キッチン車両の3号車の窓はほぼ塞がれている
車両横下部の型式表示には、52とロゴの表示。車両毎にトランプ模様が異なる

 4両のうち2両が26名ずつ(計52名)テーブルのある客席車両で、4名席が4卓と2名席が5卓に振り分けられている。予約は2名、3名、4名で受け付けており、相席になることはない。なお、1名のみの予約はできない。車両の天井が、鍾乳洞や洞窟をイメージした柿渋和紙や、渓流の流れを表現した西川材の格子などで作られ、落ち着いた内装で見応えがある。各テーブルには小さなランプがあり、食事中とても雰囲気がよい。

 キッチン車両には、オープンキッチンとカウンターが設けられていて、盛りつけの様子をうかがうことができる。ビュッフェ形式での提供もここが使われる。また、1号車はフリースペースで利用できる多目的車両となっており、今後披露宴などさまざまなイベントに利用することも考えられている。

 トイレは1号車に男女共用多目的トイレと男性用トイレが各1基備わっている。なお、全席禁煙で喫煙スペースも設けられていない。

車両平面図
1号車多目的車両。多様な利用方法を想定されている
1号車の先には、子供用の眺望ステップと座席が設けられている
テレビが2基壁掛けされている
直管蛍光灯は電球色のLEDに交換されている
車内銘板は木製。製造1989年、改造2016年と書かれている
1号車に男女共用多目的トイレと男性用トイレがある
車いすにも対応する男女共用多目的トイレ
男性用トイレ
2号車客室。天井が柿渋和紙仕上げになっている
2号車客室の4人用客席
2号車客室の2人用客席
4号車客室。天井が西川材の格子仕上げになっている
4号車客室の4人用客席
4号車客室の2人用客席
テーブルセッティングの状態
席には上品な座席番号プレートが置かれる
3号車はキッチン。オープンキッチンも設けられる。天井は杉板の仕上げ
盛りつけの様子をうかがうこともできる
笑顔で料理の解説をしてくれた女性調理クルー
一部分に小さなバーカウンターが用意される
クローズドキッチンには冷蔵庫などが並ぶ
クローズドキッチン壁の通路部分にはパンフレットのディスプレイがある

 運行時間は、ディナーコースが約2時間30分で、ブランチコースが約3時間。その間に順次コース料理が提供される。ブランチコースのみ、芦ヶ久保駅で30分程停車時間があり、散策することもできる。

 4~6月期のメニューは埼玉県産の牛肉をテーマにしたコース。ディナーコースは以下のとおり。

アミューズ

「温かい海鮮茶碗蒸し」(岡元シェフ)

前菜

「至福の12種類の前菜」(田村シェフ・篠原シェフ・岡元シェフ・杉本シェフ)
こんにゃくオランダ煮、鶏のチーズこがね焼き、パイナップルスモークサーモン奉書巻き、笹麩茶巾、さつまいも甘露煮、サーモンチーズボール、大黒本しめじのピクルス、パテ・ド・カンパーニュ、ロースハム、くらげ頭の甘酢漬、長芋湯葉巻き カニフカヒレあんかけ、口水鶏(よだれ鶏)

スープ

「CHICHICON~武州和牛のWコンソメ」(杉本シェフ)

メイン

「里芋リブロース巻黒酢煮込みフカヒレ添え」(篠原シェフ)

ご飯

「鯛ご飯 狭山茶漬け」(田村シェフ)

デザート

「ごまふぇ」(岡元シェフ)

飲み物

コーヒー、カフェラテ、カプチーノ(ネスカフェ レギュラーソリュブルコーヒー 「挽き豆包み製法」使用)または 紅茶(よこぜの美味しい紅茶)

4~6月期のディナーコース全品

 なお、ブランチコースはディナーより品数は少なめだが、デザートはブッフェになっている。前菜はディナーと同じ、関係するシェフ4名全員の12品が並ぶ。

スープ

「鶏団子 蛤のスープ 青海苔の香り」(岡元シェフ)

前菜

ディナーと同じ

メイン

「武州和牛のポ・ト・フ~サプライズ仕立て~」(杉本シェフ)

デザートビッフェ

ケーキ各種

飲み物

ディナーと同じ

4~6月期のブランチコース全品(写真提供:西武鉄道)

 試乗会ではディナーコースが体験できた。車窓を長めながら、一品ずつゆっくりと堪能できる。特にシェフ全員が参加した「至福の12種類の前菜」は、品数も多めでお酒のあてにピッタリなので、お酒を飲めるなら、ぜひ最初のタイミングで頼んでみるとよい。なお、ビール、赤/白ワイン、日本酒など用意されるが、アルコール類は別料金となる。PASMO、Suicaなど交通系電子マネーでの支払いがスマートだ。現金でも払えるがクレジットカード払いはできない。

 全体的に、美味しいモノを少量ずつ楽しむという趣向。友人と歓談しながらゆっくり食べても、じゅうぶん予定した旅程で食べ終われる。

提供予定ドリンクリスト

ソフトドリンク(フリー)
果汁100%オレンジジュース
コカコーラ狭山茶

アルコール(有料)
ビール(サントリー ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム)
日本酒(秩父錦、武甲正宗)
赤ワイン(秩父ルージュ マスカット・ベリーA キュヴェ釜の上 SP、フォルタン カベルネソーヴィニヨン)
白ワイン(秩父ブラン 甲斐ブラン シュールリー、フォルタン シャルドネ)
ウイスキー(イチローズモルト&グレーン ホワイトラベル、サントリー 山崎)
サワー(キリン 氷結)

シルバーなどを含め各所にロゴがあしらわれていて、上質感がある
コースターもトランプの模様。このゴム製コースターは持ち帰りできる
ウェルカムドリンクがふるまわれる
ノンアルコールの地元秩父産メイプルスパークリング
アミューズの「温かい海鮮茶碗蒸し」。ウニ、オクラ、長芋が入ったしっかりした海鮮味
前菜「至福の12種類の前菜」。今回関わるすべてのシェフが参加していて、彩りも鮮やか。お酒が進む
器の中は「長芋湯葉巻き カニフカヒレあんかけ」
揺れる車内での配膳は気をつかう
いつも見慣れた景色も少しちがって見える
スープ「CHICHICON~武州和牛のWコンソメ」。和牛のうまみで濃厚でしっかりした味。ミートパイが添えられる
器にもこだわりが見える。カマチ陶舗の有田焼「Kamachi Arita Japan」シリーズ
メイン「里芋リブロース巻黒酢煮込みフカヒレ添え」。フカヒレは金華ハムと丸鶏、牛、豚を使った上湯スープで煮込まれている
幾重にも巻かれた薄くスライスした武州和牛のリブロースの中から里芋がでてくる。黒酢で煮込まれている
ご飯「鯛ご飯 狭山茶漬け」。最初に少しいただいてから、残りに狭山茶をかけて変化を楽しむ。真鯛としそわかめ、秩父のしゃくしな漬けが乗る
デザートは岡元シェフがオーナーを務める「La BOMBANCE」の「ごまふぇ」。白いコーヒー風味のブランマンジェにプチプチ食感の黒胡麻ソース
ドリンクはコーヒーも選べるが、「よこぜの美味しい紅茶」もお勧め

 最後にディナーコースには、お土産も付く。一般社団法人秩父地域おもてなし観光公社がセレクトした、秩父地域の食や伝統工芸品が用意される。今回は、横瀬町の紅茶を使ったバターカステラ「秩父の恵み Butter Castella」を専用パッケージで装飾したものを、「秩父ちぢみの風呂敷(芝桜と縞模様)」で包んだお土産が用意される。

「秩父の恵み Butter Castella」を「秩父ちぢみの風呂敷(芝桜と縞模様)」で包んだお土産が用意される

【4月19日記事修正】西武鉄道より、当初案内していたお土産の名称誤記がアナウンスされたため当該部分を修正しました。

 紹介したコースの4~6月分日程は以下のスケジュールになる。旅行日の10日前まで申し込みできるが、すでに6月までの分は、ほとんどが予約で埋まってしまっている。2名席より4名席の方が取りやすいようだ。

52席の至福の4~6月分運行日程

 次回夏分(7~9月)の販売が近日予定されているので、メニューは変わるが、そちらを早めに予約を検討するのがよいだろう。詳細は、下記URLにリンクがある「西武 旅するレストラン 52席の至福」のWebサイトで発表される。予約もこちらからオンラインで可能だ。

 首都圏から気軽に行けるショートトリップで、非日常の食事を楽しむのもわるくない大人の休日の楽しみ方だろう。なにかの記念に楽しんでみることも、記憶に残るプレゼントになるのではないかと思う。

(村上俊一)