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JAXA、超音速旅客機に向けた低ソニックブーム設計試験機の第3回試験を6月より実施

2015年5月12日 発表

D-SEND#2超音速試験機「S3CM」

 JAXA(宇宙航空研究開発機構)は5月12日、低ソニックブーム設計概念実証プロジェクトの第2フェーズ試験(D-SEND#2)の3回目試験を6月29日から実施すべく、その準備作業に入ったことを発表した。

 同試験は、JAXAでは超音速飛行時に発生し、地上に爆音を発生させてしまう衝撃波「ソニックブーム」の低減技術を開発する「静粛超音速機技術の研究開発」の一環。JAXA独自の「低ソニックブーム設計概念」の実現性を飛行実証により示すとともに、ソニックブームの国際基準検討に貢献可能な技術やデータ獲得、その提供を目的とする。

 ソニックブームの低減技術は次世代の超音速旅客機を実現するための最重要課題の1つとされており、2016年のICAO(国際民間航空機関)のCAEP(航空環境保全委員会)総会では、将来の超音速旅客機の実現を想定してソニックブームに関する国際基準策定に向けた検討状況が報告される予定であるという。

 JAXAにおいては、第1フェーズ試験で、係留気球を用いた「空中ブーム計測技術」を獲得。現在進めている第2フェーズでは、低ソニックブーム設計概念を用いて設計した「S3CM」と呼ばれる航空機形状の超音速試験機をスバル(富士重工業)と共同開発。これを気球に吊り下げて高度30kmまで上昇。そこから落下させることで超音速飛行(マッハ約1.3)、経路角50度で滑空させ、地上に設置したブーム計測システム上を通過する際に発生するソニックブームの波形を計測することにしている。

 2013年8月に実施した1回目試験では、気球から分離した超音速試験機の機体姿勢が不安定となり、想定していた飛行状態でのソニックブームを計測できなかった。また、2014年8月に実施を予定した2回目試験は、期間中に試験実施可能な気象状態を満たさなかったため気球を飛ばせず終了した。JAXAはこれらの対応策に取り組み、再試験に向けた準備の目処がたったとしている。

 試験はスウェーデン・キルナ市のスウェーデンエスレンジ実験場で実施。期間は6月29日~8月31日で、気球を運用するスウェーデン宇宙公社との調整の上、実施を判断する。

D-SEND#2試験の流れ
(編集部:多和田新也)