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名門メゾン公認の客室でシャンパーニュを開けつつ世界観に浸れるホテル「Cuvée J2 Hôtel Osaka by 温故知新」に泊まってきた。室料はボトル1本込み

ボランジェルームで提供される「ラ・グラン・ダネ2014」

 温故知新は、世界初のオフィシャル・シャンパン・ホテル「Cuvée J2 Hôtel Osaka by 温故知新」(大阪府大阪市中央区南船場2-6-7)を1月13日に開業した。

 大阪・関西万博の開催を控えた大阪では、インバウンドの増加を見据えたホテルの開業が相次いでいる。しかし、今回オープンするCuvée J2はそれらのホテルとは少々趣が異なる。「シャンパーニュ(シャンパン)」をホテルのコンセプトに据え、Cuvée J2で過ごすことを目的とした、まさに旅の目的地となるデスティネーションホテルを具現化した施設といえる。

Cuvée J2 Hôtel Osaka by 温故知新のホテル正面とエントランスにさりげなく掲げられたロゴ
左はCuvée J2 Hôtel Osaka by 温故知新のプロデューサー 山本一人氏。右はゼネラルマネージャーの佐長東彦氏
3階レセプションカウンター
Cuvée J2 Hôtel Osaka by 温故知新ゼネラルマネージャー佐長東彦氏

 とはいえ、「オフィシャル・シャンパン・ホテル」と聞いてもピンと来ないかもしれない。

 Cuvée J2は地上14階建ての建物に、わずかに11室の客室しか持たず、1階エントランス、2階に鮨レストラン、3階がレセプション、4階~14階が客室で、その客室は1フロアに1室という思い切った作りになっている。

 それぞれ11の名門シャンパーニュメゾン(生産者)が正式に許可した公認客室で、室内は生産者の思いや歴史をビジュアライズしており、その世界観に浸りながら各メゾンの代表作を味わえる。これこそがCuvée J2が「オフィシャル・シャンパン・ホテル」を標榜するゆえんだ。

各部屋で提供する選び抜かれた11の名門シャンパーニュメゾンの代表作

 世界にも類を見ないコンセプトで、実現にはかなりの苦労があったという。ゼネラルマネージャーの佐長東彦氏は、「11メゾン=11企業の厳しいルールがある。そのルールを一つのホテルにギュッとまとめるのは大変でした。各メゾンのリクエストをただ聞くだけではダメで、ホテルとしての統一感も必要。その調整には苦労しました」と当時を振り返る。

各メゾンの許可を得てロゴがあしらわれたホテルオリジナルのルームキー

 筆者はホテルの開業が目前に迫るなか、試泊する機会を得た。建築家の小川晋一氏が手がけた建物は、オフィスビルが建ち並ぶ路地のなかでもひときわ目立っていた。遠慮がちに掲げられた「Cuvée J2」のロゴのあるエントランス。まず一歩建物のなかに足を踏み入れると、「???」。たぶん訪れる人は皆「???」となるに違いない。これはぜひ実際に体験してみてほしいので本稿ではタネ明かしはしないことにする。

ホテルのエントランスは白を基調としたシンプルなもの
エントランスをくぐると「???」
3階のレセプションはラウンジも兼ねている

 受付は3階。一般的なホテルのレセプションを想像していたが、ここはまるでバーのようなしつらえ。ラウンジもかねているそうで、夜はここでシャンパンを楽しむこともできるそうだ。

 試泊に用意された部屋は最上階の「ボランジェルーム」。ボランジェは1829年に創業したメゾンで、英国王室御用達にもなっている老舗。映画「007」シリーズにも登場し、ジェームス・ボンドも愛飲したとのこと(筆者はシャンパンの基礎知識はない)。

 部屋は白を基調に、2面ガラス張りの明るい雰囲気。ベッドスローをはじめ、ラグなどところどころに「ボランジェ」のロゴが。ロゴの使用許可を取り、ホテルオリジナルで作成された備品、これも非常に苦労した点だという。

14F最上階のボランジェルーム。ガラス張りの明るい空間
ホテルオリジナルで作成したブランケットやラグ、ベッドスロー。各メゾンのロゴの使用許諾を得て作成されたもの

 部屋には大型ディスプレイやプロジェクターを設置しており(ボランジェルームのみディスプレイ。ほか10室はすべてプロジェクター)、各メゾンの紹介やメッセージ動画を見ることができる(もちろん通常のテレビ放送や各種ストリーミングサービスも視聴可)。

 そしてディスプレイの前にはシャンパンクーラーが置かれ、「オフィシャル・シャンパン・ホテル」の主役とも言える、各メゾンが選定した特別な1本が冷やされている。このシャンパンは宿泊料金のなかに入っており、好きなタイミングでいただくことができる。ちなみにボランジェルームで提供されるシャンパンは「ラ・グラン・ダネ2014」だ。

テーブルに鎮座するクーラーには冷えたシャンパンが
「ラ・グラン・ダネ2014」。優良な年にのみ作られる。グラン・クリュのピノ・ノワールを主体にシャルドネをブレンド。9年の熟成期間を経て世に出る逸品
コーヒーマシンやトースターなど、必要な備品やアメニティは一通り揃っている。またちょっとしたつまみ類も有料ながら用意されている。なかには大阪ならではのものも
提供されたシャンパンで足りなければ部屋に備え付けられたセラーを開けてみるとよい。シャンパンだけでなく、キャビアまで揃っている
ガラス張りの部屋からみる夜景。建物自体がそれほど高層ではないので見通しがよいわけではないが、雰囲気は十分

 備え付けられた備品やアメニティも必要にして十分だ。そして最初に提供されるシャンパンだけでは飲み足らない愛飲家のために、各客室には専用のワインセラーが備え付けられている。別料金にはなってしまうが、その価格は同じ銘柄をレストランなどでいただくよりリーズナブルで良心的な価格設定になっている。それでも足りなければ客室の電話で「Champagne Please」とコールすればその日のセレクトのシャンパーニュを数種類、部屋までスタッフが届けてくれる(サービスはグラスで)。まさにチェックインからチェックアウトまでシャンパーニュの世界に浸れる空間となっている。

全室共通のデザインのデスク。備え付けのTELで「Champagne Please」とコールすると
「Champagne Please」コールでスタッフがシャンパンを部屋まで届けてくれる

 50歳にリーチのかかったおじさんが1人で試泊、色気もなにもあったものではないが、いただいたシャンパン(この場合はシャンパーニュと言った方がよいのか?)は極上の旨さだった。無類のビール好き、生粋のビール党である筆者が味を云々するのはおこがましいが、1人で1本を軽く空けてしまった。

ゼネラルマネージャーの佐長氏「シャンパーニュの世界を知ると日常はもっと優雅になる」。自身もこのプロジェクトとの関わりがシャンパーニュとの出会いだったそうだ
レストランなどで提供される価格よりリーズナブルで、一般的なリカーショップの価格と大差ない価格設定がされている

 実はこの試泊の話をいただいたとき、ホテル予約サイトなどでざっくりと価格帯を調べてみた。12月末ごろの段階で、おおよそ1人8万前後。決して安くない料金帯だった。そのことをゼネラルマネージャーの佐長氏にぶつけてみると、「逆にすごくリーズナブルだと思います」と返ってきた。レストランなどで同じ銘柄のシャンパンを飲むと1本10万は下らない逸品が、宿泊費のなかに入っている。その逸品をシャンパーニュメゾンの世界観に浸りながらいただくことができる。それがこの価格で提供できるのは決して高くない。シャンパーニュ愛好家の方に泊まっていただくことはもちろん、まったくの初心者にもぜひ泊まっていただきたいと話す。

 向こう半年の予約率は6~7割。まだまだ認知度は低い。「ホテルはできあがりがゴールではなくスタート。ほかのホテル同様たくさんのゲストにお越しいただき、ゲストとスタッフ、人と人が作り上げていくもの。シャンパーニュも同じ人が作っているもの。なぜこんなに美味しいかというと熟成させているからです。ホテルも同じ1年、2年と熟成させて、シャンパーニュのように憧れられるようなホテルにしていきたい」と抱負を語ってくれた。

13階「シャルル・エドシック」
11階「テタンジェ」
9階「ニコラ・フィアット」
8階「ラリエ」
7階「ジャン・ヴェッセル」
4階「ドゥモアゼル」
2階レストラン「AWA SUSHI」はカウンター10席の完全予約制
ランチは1万6500円、ディナーは2万6400円

Cuvée J2 Hôtel Osaka by 温故知新

チェックイン: 15時~
チェックアウト: 11時
開業日: 2024年1月13日
所在地: 大阪府大阪市中央区南船場2-6-7
敷地面積: 156.08m2
規模: 地上14階
客室数: 全11室(37~51m2
料金: 2名1室利用時1名あたり1泊3万5145円~(1室につきシャンパーニュ1本込み)