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日本政府観光局、コロナ後の訪日誘客に向けた道筋を説明。金子理事「国内観光の回復が最優先」

2020年6月24日 実施

JNTO理事の金子正志氏が最新の訪日旅行者統計や今後の見通しについて説明した

 JNTO(日本政府観光局)は6月23日、最新の訪日旅行者統計を交えたコロナ禍における取り組み、今後の見通しについて説明した。登壇したのは理事の金子正志氏。

 先日のニュースリリース(PDF)ですでに発表済みだが、2020年5月の訪日旅行者数は1700人(前年同月比99.9%)で、単月の数字としてはJNTOが統計を取り始めた1964年以降で過去最少という。

 2019年10月から8か月連続で前年比を下回っているが、1月まではマイナス成長でも1桁に収まっていたところ、2月は58.3%減、3月は93.0%減、4~5月は99.9%減というのが直近の状況になっている。

2020年5月までの状況

 UNWTO(世界観光機関)の予測では、コロナによる国際観光客の減少は2020年全体を通して60~80%で、観光客数の損失は8.5~11億人、観光による輸出収入の損失は9100億~1.2兆ドル、観光雇用の影響を受けるのは1~1.2億人という見通しを立てている。一方、航空便の視点では、IATA(国際航空運送協会)が「2019年水準への回復時期」について、国内線の見通しを「2022年まで」としたのに対し、国際線は「2023~2024年」と慎重な予測になっている。

 欧州ではEU内・シェンゲン協定加盟国同士などの渡航制限が解禁されており、アジアでも厳格な条件のもとにビジネス利用限定で入出国規制を緩和する「ファストトラック」「ファストレーン」と呼ばれる制度が中国を中心に進んでいる。こうした動きはあるものの、感染状況が国・地域によって異なるため、渡航制限の解除は相手国の様子を見ながら判断する必要がある。

入出国規制の緩和に向けて

 こうした状況下でJNTOとしては、誘客プロモーションを停止する一方、オウンドメディアによる情報発信を続けている。「将来の訪日」に向けて、VR動画や4K/8K映像などを通じて疑似訪日体験を提供しているが、JNTO本局が全世界的に情報発信を行なうと対象が広くなりすぎてしまうので、世界各地のJNTO海外事務所が現地に向けて情報発信することで、特定地域にフォーカスしたアピールをしているという。この背景には「情報発信をやめてしまうとすぐ忘れられてしまう」という懸念があるためだ。

 金子氏は「発信の継続が大事」としながらも、日本と海外現地では感染状況が異なるため、現地の人々の心情に配慮した内容にすること、ソーシャルディスタンスが保たれていない写真は使わない、文章はニュートラルな表現を心がける、旅行の予約・購入を促すのではなく認知向上を目的にするなどと、発信内容をかなり吟味していることを明かし、「観光庁と相談して非常に気を使っている」と説明した。

海外政府観光局の発信事例

 当然、プロモーションの再開はコロナの収束や渡航制限の解除など、物理的な条件が揃ってからになる。また、日本国内で外国人旅行者を改めて受け入れるためには、各地域で受け入れ体制を整えて、機運を醸成していく必要があり、そのためにも「国内旅行の回復が前提にある」という。加えて、以前から日本は「清潔・清掃されている」というイメージを持たれているが、そういったトリビアレベルではなく、実際に基準を作って安心・安全情報の発信することが肝要であり、「訪日の誘客プロモーションはそれから」と説明した。

スライドを示す金子氏。コロナからの復興を機会に、混雑情報の発信や予約制の導入などでオーバーツーリズムの解消も可能なのではないかと説明する