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JAL 宝本聖司支店長に聞く、オーストラリア観光の今。早朝着のJAL便は「フェリーでのんびり」がお勧め

2019年9月30日 実施

日本航空株式会社 オーストラリア・ニュージーランド支店長 宝本聖司氏

 JAL(日本航空)は9月30日(現地時間)、東京~シドニー線の開設50周年を祝う祝賀会をオーストラリア現地で開催した。

 JALのシドニー線は1969年9月30日に初便を就航、当時は東京(羽田)~香港~シドニーを週2往復で結び、1975年4月からは直行便化。現在はボーイング 787型機で週7便を運航している。

 このシドニー線を含むオーストラリアの現況について、JAL オーストラリア・ニュージーランド支店長の宝本聖司氏に話を聞いた。

――2017年9月にJALがメルボルン線、今年9月にはANAがパース線を開設しており、オーストラリア各地への新規路線が増えています。豪州全体、またシドニーではどんな影響が出ていますか。

宝本氏:総需要が増えたと感じています。新しい路線ができると日本人はもちろん、オーストラリア現地の人からも注目が集まりますし、結果的に総需要が増えて、弊社にも恩恵があります。

 90年代は9対1くらいの割合で日本人が主な利用者だったのですが、今は半々あるいはオーストラリアの方が多いこともあります。これは非常によい流れです。この路線は季節変動が大きく、例えば8月は日本の夏休みなので日本人が増えて、8割くらいは日本人利用者になります。一方で、12月~1月になるとオーストラリアの方が日本へスキーに行くので、7~8割の利用者がオーストラリア人になるのです。このように、双方向で需要があると年間通してバランスが取れるので、我々には大変ありがたいわけです。

 ですので、メルボルン、パースと路線が増えれば双方向の需要がそれだけ太くなるので、いいことずくめだと思います。羽田の発着枠も増えるので、ますますネットワークを強化できるのでは。

――日本発便は早朝に現地着(JL771便は6時10分着)なので、ホテルの使い方が難しそうです。シドニーに到着してからのお勧めの過ごし方を教えてください。

宝本氏:ツアーの場合、到着後すぐにブルーマウンテンズやハンターバレーといった空港から離れたところにバスで行くケースが多いようで、この場合は車内でゆっくり休むことができます。個人手配の場合はそうもいかないのですが、私のお勧めはフェリーです。

 観光船のように見えますが定期船で、5~7オーストラリアドル(約365~511円、1オーストラリアドル=約73円換算)で乗船できます。湾内を周遊するものもありますし、マンリービーチという人気のビーチまで行くものもあります。こうしたフェリーに乗ってウトウトしてもらうのもよいのではないでしょうか。

――少しシドニーから離れますが、ノーザンテリトリーはウルル(エアーズロック)の入山終了(2019年10月26日以降は観光入山が禁止)で誘客に困っていると聞きました。誘客を伸ばしつつ観光素材を守るのはバランスが難しそうですが、先住民の文化や豪州固有の動植物を守るためにエアラインとして取り組んでいることはありますか。

宝本氏:実はウルルを登ろうとするのは日本人がほとんどで、オーストラリアや他国の方は「見て楽しむ」の方が多いのです。今後は登るのではなく、ウルルの周りを自分の足で歩いたりセグウェイツアーに参加したり、さらに言うとオーストラリアはヘリコプターの料金が安いので、空からウルルを見る、というのも日本の感覚より安価に楽しめます。ですので、登山以外でウルルを味わってもらうことをお勧めしていきたいですね。

――豪州への外国人訪問者数はそれほど多くない(2017年に世界40位、888万人)にも関わらず、国際観光収入では上位(2017年に世界7位、417億米ドル)でした。現地消費が増える理由はどんなところにありそうでしょうか。

宝本氏:オーストラリアはいろいろな文化がミックスしています。食だとステーキやシーフードが有名ですが、多国籍な食文化があるので、食事にお金を使う人が多いというのが一つ。あとは自然遺産に興味を持つ方が多いので、シドニー近郊ならブルーマウンテンズとか、ハンターバレーのワイナリーとか。そうしたエリアでヘリコプターや気球に乗るのがはやっていたりします。あとはハーバーブリッジを登るツアー(ブリッジクライム)のような、少し変わったアクティビティがシドニーに限らずメルボルンやパースにもあります。こういったところで消費が増えるのではないでしょうか。

――2年前(2017年9月)に開設したメルボルン線は、現在プレミアムエノコミークラスがなくなっています。廃止した理由を教えてください。

宝本氏:メルボルン線だけ廃止したというわけではなく、東南アジアでも同じ機材が飛んでいるのですが、エリアによってはプレミアムエノコミークラスの販売が苦しいこともあり、よりエコノミークラスの多い仕様に変えています。

 ただ、実はオーストラリアの方はプレミアムエノコミークラスも積極的に利用するんです。今ちょうどスクールホリデーに入っていますが、子供を連れて家族で旅行に行く文化が定着していますし、旅行にはコストをかけるという国民性のようで、普通の家族旅行でビジネスクラス/プレミアムエノコミークラスを使うということも珍しくありません。これは私がオーストラリアに来て驚いたことの一つです。

 ですので、メルボルン線単体でいえばプレミアムエノコミークラスを残しても十分採算が取れたのですが、東南アジアを含む機材繰りの事情のなかで現在はなくなっている、という状況ですね。

――豪州の都市は「住みやすい」という形容をされることが多いですが、支店長自身がシドニーで実感するところはありますか。

宝本氏:大きく三つあります。一つは気候です。シドニーは冬も寒くないですい、夏はたまに40℃といった日もありますが、空気が乾燥しているのであまりつらくないんですね。非常に過ごしやすい気候です。

 もう一つは人柄です。オーストラリアは多文化で、誰でもにこやかですし、下手な英語でもきちんと聞こうとしてくれるんですね。多文化ゆえに多様性を受け入れる土壌があるのです。

 最後は食が美味しいこと。高いものから安いものまで、美味しいものがたくさんあるのがいいところですね。