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日本政府観光局、「10連休は訪日旅客数が減少、オリンピックも要警戒」

体験重視の訪日客向けに100の魅力を紹介する冊子を作成

2019年6月26日 発表

JNTO(日本政府観光局) 企画総室 総室長の金子正志氏

 JNTO(日本政府観光局)は6月27日、報道関係者向けの説明会を開催し、5月までの訪日旅客数動向などを説明した。

 10連休となったゴールデンウィークの状況を交え、訪日旅客数の動向や、新たに作成した外国人向けの冊子、クルーズでの訪日旅客の動向などが順番に説明された。

中国と欧米豪は好調、アジアは苦戦

 JNTO 企画総室 総室長の金子正志氏は、5月までの訪日旅客数の動向について「あまり伸びていない」と振り返る。5月の実績としては、過去最高の277万3000人を記録したが、東アジアでは韓国、台湾、中国、東南アジアではシンガポール、インドネシアが前年割れとなった。

 韓国については、経済の停滞もあり、2018年から下降トレンドとなっているうえ、ベトナムや中国などの競合国への旅行者の流出もあるという。台湾については、上がり基調にも見えるが、ベトナムやタイ、韓国など、安価に旅行できる地域へ流出しており、この先ガクンと下がる可能性もあるとする。

 一方、中国と欧米豪については好調を維持している。金子氏は、引き続きこうした地域へのアプローチを強化しながら、訪日旅客の絶対数が多いアジア地域のテコ入れを図っていく必要性を強調した。

10連休は日本人旅行者が訪日旅客数の減少要因に

 10連休となったゴールデンウィークの動向としては、海外に出かける日本人が増え、航空券の予約が取りづらくなるとともに、宿泊料金が高騰し、こうした状況を敬遠する形で訪日旅客が減少する結果となった。航空券については、日本人の出国ラッシュと重なり、帰国便の座席を確保できないといった事情で、すでに連休前から影響が出ていたことも確認されている。

 同氏は、オリンピックが開催される2020年にも同じことが起きる可能性があると警笛を鳴らす。こうした「クラウディング・アウト」と呼ばれる現象は、ほかのオリンピック開催国でも起きており、国内外からの旅行者が東京に一極集中することで、全体としての数が減ってしまう可能性があるという。

体験を重視する観光客向けに日本の100の見どころを紹介する冊子を作成

 JNTOでは、伸びている欧米豪市場を念頭に、体験を重視する訪日旅客をターゲットにした冊子「100 Experiences in Japan -Find the Japan of your Dreams!-」を作成。国内外の商談会などで配布していく。

 同冊子は、2018年10月~11月にかけて、全国の地域観光促進団体(DMO:Destination Management/Marketing Organization)や自治体から、外国人が参加可能で、英語のWebサイトを持つアクティビティや施設の情報を募集し、それらを厳選・整理したもの。

 集まった約2100件の中から、すぐに活用できる約300件を絞り込み、さらにその中からTradition、Outdoors(Mountain/Marine)、Cuisine、Cities、Nature、Art、Relaxationの7つのテーマやストーリーに沿った形で100件を抽出し、外国人有識者の手を借りて冊子の形にまとめた。

 今回の冊子は欧米豪をターゲットとするため、英語で作られているが、集められた情報をフィードバックしたり、ブラッシュアップしたりしながらほかの地域向けにも発信していけるように検討を進めていくという。

クルーズやMICEの誘致を積極的に

 最後に金子氏は、日本発着のクルーズについての状況を説明した。

 法務省入国管理局の調査によれば、2018年時点でクルーズで日本に入国した訪日旅客は244万6000人で、訪日旅客全体の7.8%に相当する規模になっている。前年と比べると3.3%減となっているが、その多くを占める中国発が7.0%減の202万人となったことが響いた。

 減少の背景には、マーケットが急拡大した結果、配船が急増し、競争が過熱し、調整局面に入ったことが挙げられるという。2019年も調整局面が続くことが見込まれるが、同氏は2020年には持ち直すと見ている。

 中国以外では、欧米豪からのクルーズ観光客が堅調に推移しており、地方を訪問するきっかけにもなるため、JNTOとしてもMICE(Meeting Incentive Convention Exhibition)の誘致とともに積極的にアプローチを図っていく意向だ。