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ANA株主総会、初の売上高2兆円超。飲酒問題やエンジン問題の対策・進捗を報告

2019年6月21日 開催

ANAホールディングスが第74回定時株主総会を開催

 ANAホールディングスは6月21日、第74回定時株主総会を開催し、グループ各社で発生した飲酒問題や、ボーイング 787型機のエンジントラブルに関する対策などについて報告した。来場株主数は1972人で、2018年度の定時株主総会の1714人を200人以上上回った。

 連結業績については、集客が伸び悩んだ旅行事業で減収減益となったものの、国内線旅客や国際線旅客、LCCなどの航空事業、地上支援などの航空関連事業、部品調達や輸出入、売店などの商社事業が堅調に推移し、売上高は2兆583億円、営業利益は1650億円、経常利益は1566億円。売上高が2兆円を超えたのは同グループ初となった。

飲酒問題は「検査の厳格化」と「意識改革」を推進

 2018年から2019年にかけ、同グループでは、ANA、ANAウイングス、エアージャパンの3社において運航乗務員の飲酒問題が立て続けに発覚した。これについて、ANAホールディングス代表取締役社長 片野坂真哉氏は改めて謝罪の言葉を述べるとともに、ANA代表取締役社長の平子裕志氏が今後の防止対策について説明した。

 まず、同社グループでは問題発生以降、「ANAグループアルコール対策委員会」を設置して再発防止策を推進してきたとし、その具体的な方策として「検査の厳格化」によりアルコールの影響下にある運航乗務員を絶対に乗務させないこと、乗務員ら一人ひとりの「意識改革」と自己管理を徹底すること、という2本柱を掲げた。

「検査の厳格化」については、「アルコールを少しでも検知したら、絶対に乗務させないという厳しい基準」を設定し、「世界中の空港に配置するアルコール検知器をより厳格に計測できるストロー式の検査機」へと切り替えた。また、「運航乗務員以外の第三者が必ずアルコール検査に立ち会うことにより、抜け漏れなど不正のない確実な検査」も実施しているとした。

「意識改革」では、より一層の社員教育の拡充を図る。パイロット育成段階からアルコールの基礎教育を施し、毎年定期的に教育を繰り返すことに加え、実演を用いたビデオ教材の充実、パイロット全員へのアルコール検知器の貸与、アルコール依存症の相談窓口の設置などを実施する。

 また、「会社からのトップダウンだけでなく、現場からのボトムアップ活動が大切」であるとし、面談など職場でのディスカッションを積み重ね自覚を促す活動も行なう。一連のアルコール対策については、運航乗務員以外の客室乗務員、整備士、運行管理者にも適用していく。

 さらに、平子氏が会長を務める定期航空協会において、業界共通のアルコール検査体制の開発を進めており、同社がリーダーシップをとり、業界一丸となって対策を進めていくと述べた。

ボーイング 787型機のエンジン改修は年度末までに完了へ

 2018年秋、ロールス・ロイス社が製造するボーイング 787型機のエンジンに設計上の問題が見つかり、同機を採用するANAにおいても緊急の点検・改修により大規模な欠航につながった。この問題に関して、これまでの取り組みと今後のスケジュールについて報告があった。

 平子氏によると、問題の原因は、ボーイング 787型機が装備するジェットエンジンの前後に設けられている圧縮機とタービンそれぞれにおいて「特定部品の劣化が想定以上に早く」進んだことだという。そのため、エンジン内部の繰り返し点検を行なうことに加え、部品の使用時間を制限し、一定時間使用したものを早めに交換・廃棄する作業を強制的に行なった。さらに、「点検回数の追加や交換期限の前倒し」で改良型部品の率先導入も実施しているという。

 点検開始時期を前倒しし、その後、点検対象を追加するという2度にわたる点検プログラムの強化を実施するなどして積極的な改修に取り組んだ結果、タービンについては改修型部品の導入を進めたうえで2019年1月に全機の改修が完了。圧縮機についても2019年2月より改修を開始し、2019年度末までに全機の改修を完了する予定となっている。

 これに関連して国内線の夏ダイヤで約1800便、国際線の冬ダイヤで約380便が欠航。旅客収入においても少なからず影響があり、夏ダイヤでは60億円前後の減収につながったとしているが、製造元のロールス・ロイス社から「当社がこうむった損失を十分にカバーできるレベル」の補償を受けたと報告。一方、冬ダイヤや2019年度以降における収益への影響については、現在もロールス・ロイス社との補償交渉中とのことで明らかにしなかった。

茶室も備える総合トレーニングセンター「ANA Blue Base」

 このほか、ANAグループが4年かけて建設し、2019年4月から稼働したという総合トレーニングセンター「ANA Blue Base」を紹介。運航乗務員のトレーニングに用いるフライトシミュレーターや、実際のエンジンを使って訓練を行なえる整備士用の設備に加え、客室乗務員のリアルな訓練を可能とする客室用のシミュレーターを設置しているという。

 客室用シミュレーターは、機体の揺れを再現できる「モーションモックアップ」で、日本の航空会社での導入は初とのこと。これ以外にも、「日本の伝統文化である茶道を通じて、さまざまな国籍の客室乗務員がおもてなしの精神を学ぶ」ための設備として、世界中の航空会社で初となる茶室も設置。「特別な茶室という空間で、訓練生一人ひとりが改めて自分自身の心の状態と向き合い、改めて見つめ直すことで、これから先、ANAらしいおもてなしにつながっていく」ことが期待できるとした。

 今後は、空港のカウンターを再現した旅客係員用のシミュレーション施設、グランドハンドリングスタッフの安全作業技術を高めるVR技術を用いた訓練施設などの設置を進めていくという。