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ジョルダン、乗換案内アプリの機能拡張で会見。モバイルチケットサービス組み込みへ

英Masabiが開発した「Justride」を利用

2019年3月26日 実施

5月から提供を始めるモバイルチケットサービスの発表を行なう、ジョルダン株式会社 代表取締役社長 佐藤俊和氏

 ジョルダンは、5月から提供を始めるモバイルチケットサービスの発表会を開催した。

 サービスは自治体や観光施設、交通事業者などを対象に提供されるもので、イギリスのMasabiが開発したモバイルチケットサービス「Justride」を利用し、列車やバスを利用するためのきっぷの販売から改札までをスマートフォンだけで実現する。

 チケットの確認は、予約客のスマートフォン画面上に表示する、QRコードに似た独自の二次元コード(Aztecコード)を改札口などに取り付けたリーダーで読み取るか、画面に表示されたチケット内容を目視することによって行なう。鉄道やバス単独のチケットだけでなく、観光や買い物、飲食などを含めた企画きっぷの提供も可能となっている。

 なお、同サービスを組み込んだスマートフォン向けアプリの提供は5月を予定しているが、実際にサービスを利用する交通事業者や地方自治体は現時点で明らかにされていない。

 発表会冒頭で、ジョルダン 代表取締役社長の佐藤俊和氏は、グローバルにおいて「MaaS(Mobility as a Service)」の流れが到来していると指摘し、その一例として経路検索からチケットの予約、決済までをサポートするMaaS Globalの「Whim」というサービスに触れ、「電車、バス、タクシー、レンタカー、レンタサイクルをまとめて利用できるマルチモーダルのサービスで、スマートフォンのアプリだけで移動が完結する点が新しい流れだと驚いた」と紹介した。そして、「世界は今、スマートフォンで移動のすべてを完結しようと動き始めた」と述べ、モバイルチケットサービスの提供に踏み切った背景を説明した。

ジョルダン株式会社 戦略企画部 部長 佐藤博志氏

 モバイルチケットサービスの概要を説明した、ジョルダン 戦略企画部 部長の佐藤博志氏は、東京オリンピック・パラリンピックなどによって増加するインバウンドへの対応を考えたとき、きっぷ販売の窓口対応などでさまざまな言語に対応することは難しいと指摘した。そして多言語に対応している「乗換案内」と、スマートフォンでチケットの購入から改札までが可能になるMasabiのモバイルチケットサービスを組み合わせることで、「増加し続けるインバウンドにもバッチリ対応できる」と自信を見せた。

佐藤氏は、Justrideが北米やヨーロッパを中心に幅広く使われていると説明した

 また、Masabiを使ったモバイルチケットサービスのメリットの1つとして、スマートフォン画面に表示された二次元コードを読み取る端末か、あるいはスマートフォンのカメラでコードを読み取れば、きっぷの利用状況や利用者が多い曜日や時間帯、スマートフォンのOSやそのバージョンなど、さまざまなデータを取得できる点がある。

 こうして取得したデータはジョルダンが独占するのではないと話し、「我々は非独占的な企業体連合『J MaaS』という仕組みを作った。交通事業者や通信キャリア、旅行事業者といった方々と組み、データも利益も分かち合っていきたい」と説明する。そして「まずは企画きっぷから街の活性化を狙う。それを乗換案内が広告塔になって発信していく。アニメの聖地巡礼など新しい企画を次々と展開し、日本のおもしろいところをどんどん発掘したり作ったりして、日本全体の活性化を狙う」と展望を語った。

二次元コードを読み取るリーダーがなくても、目視でチケットを確認できる
さまざまなデータが取れることもJustrideのメリットと説明
データは独占するのではなく、J MaaSという企業連合体で共有すると話す

 続いて登壇したジョルダン 執行役員 法人本部長の結川昌憲氏は、モバイルチケットサービスを組み込んだスマートフォンアプリについて説明。「1つのアプリで経路検索から企画きっぷの予約決済までが可能になる。事業者はこの仕組みを利用することで利用者数が増加し、売り上げに貢献できる。こういったものをジョルダンとして企画し販売していきたい」と語った。

ジョルダン株式会社 執行役員 法人本部長 結川昌憲氏

 モバイルチケットサービスを組み込んだアプリは、5月の提供開始を予定している。このアプリでは、電車と食事、観光などがセットになった企画きっぷの販売や乗換案内との連動、シームレスな経路探索などが可能になるという。またキャッシュレスで旅行を楽しめること、多言語でインバウンド需要に対応できることも特徴として挙げられた。

出発地から目的地までのさまざまな手段を利用した移動のチケット、さらには施設の利用券や食事券までカバーする
ジョルダンのオンラインチケットサービスを利用するまでの流れ

 Masabiからは、アジア事業開発担当責任者のジャコモ・ビジェーロ氏が同社の事業などについて説明した。まず同社の事業規模について「現在Masabiでは年間825億円の売り上げがあり、月間800万回の乗車を処理している」と説明した。サービスが成長した理由については「簡単かつ直感的なユーザーインターフェースを開発したことにより、高い利用率を実現できた」と話す。

モバイルチケットサービスを説明するMasabi アジア事業開発担当責任者 ジャコモ・ビジェーロ氏

 導入事例としてアメリカのMBTA(Massachusetts Bay Transportation Authority)や、ロサンゼルスのメトロリンク、ニューヨークのMTA(Metropolitan Transportation Authority)などを紹介、MBTAでは60%、メトロリンクでは42%の乗客が同社のJustrideを利用していると語った。

ジャコモ・ビジェーロ氏が紹介した、Justrideの導入事例

 実際に公共交通機関でこうしたサービスを利用する場合、1人あたりの改札に要する時間も重要になる。チケットの認証に長時間を要することになれば、改札で混雑が生じるためだ。

 この点についてビジェーロ氏は、「公共交通機関での利用に特化していることもJustrideの特徴である」としたうえで、1人あたり380ミリ秒以内にスキャンすることが可能であること、これにより1分に約35人が改札を通過できることなどを説明した。

Justrideはクラウドサービスとして提供されており、チケットの販売と各種データの管理、チケットの認証などのシステムから構成される
まずチケットの目視から導入し、専用アプリを使ったスマートフォンでのスキャン、そして専用の端末認証ソリューションと、段階的に導入することも可能
二次元コードのスキャンスピードやセキュリティ、システムの冗長性など、公共交通機関での利用に耐えるスペックを持つとする

 最後に登壇したジョルダン 執行役員 研究開発部 部長の平井秀和氏は、乗換案内アプリに乗車券や観光券、食事券、宿泊券など各種チケットを一括管理する「チケットウォレット」を搭載したイメージを紹介。さらにインバウンド向けに多言語対応した乗換案内である「Japan Transit Planner」でチケットサービスを展開することなどについて説明した。

ジョルダン株式会社 執行役員 研究開発部 部長 平井秀和氏
乗換案内アプリのなかに「チケットウォレット」としてモバイルチケットサービスが組み込まれる
お食事券や観光施設の特典などをチケットに組み込むことも可能
他言語版の乗換案内である「Japan Transit Planner」でもモバイルチケットサービスを展開する
発表会場では、モバイルチケットサービスのデモンストレーションも行なわれた
改札機に組み込まれたJustrideのリーダー(黄枠部分)
スクリーンを備えたリーダー。二次元バーコードを読み込むリーダーのほか、ICカードリーダーも備える