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ユナイテッド航空と昭和女子大学、女性のキャリアを考える「グローバルに活躍する女性旅客機パイロット」講演会

「自分の気持ちと夢を大事に」と女性機長から学生にエール

2018年11月19日 実施

ユナイテッド航空は、昭和女子大学と共催で「グローバルに活躍する女性旅客機パイロット~米系エアラインの女性機長、女性リーダーと考えるグローバルキャリア~」と題する講演会イベントを実施した

 ユナイテッド航空は、昭和女子大学と共催で「グローバルに活躍する女性旅客機パイロット~米系エアラインの女性機長、女性リーダーと考えるグローバルキャリア~」と題する講演会イベントを実施した。

 近年、世界的な海外旅行需要の高まりとLCC(格安航空会社)の増加などにより、世界各地でパイロット不足が深刻化してきており、将来のパイロット養成、確保が重要な課題となっている。なかでも女性パイロットの数は非常に限られており、国際女性パイロット協会によれば、世界主要航空会社100社のパイロット約15万人のうち、女性パイロットは約8000人ほど。

 さらに日本における女性パイロットの数は非常に少なく、女性がパイロットを将来の選択肢の一つとして捉え、その認知度を上げていくことの重要性が高まってきているという。

 こうした社会的背景を踏まえ、940名という世界最多の女性パイロットが所属するユナイテッド航空では、人材のグローバル化や女性の社会進出、キャリア形成に積極的に取り組む昭和女子大学、昭和女子大学付属昭和中学校・高等学校の学生に向けて、女性旅客機パイロットというキャリアや航空業界で働くことの魅力について紹介する場を設けることとなった。このような取り組みはユナイテッド航空としても初の試みとなる。講演会イベントは中高生向けと大学生向けの2部に分かれて行なわれたが、中高生向けの講演会の様子を紹介する。

第1部は中学3年生と高校1年生の120名が参加した

 第1部は、“How America's Female Airline Pilots Are Opening New Roads"「グローバルに活躍する女性旅客機パイロット」という演題で中高生向けに行なわれ、中学3年生と高校1年生の120名が参加した。講演では2名の女性パイロットを招き、パイロットになったきっかけや、パイロットという仕事の魅力、また充実したワークライフバランスなどが語られた。

女性パイロットのデナ・ガルナー氏

 最初にマイクを持ったのは、デナ・ガルナー氏。ガルナー氏は、米国空軍予備軍のパイロットに合格後、軍用輸送機(C-141)を操縦するなど2002年までの20年間予備軍に携わったのち、ユナイテッド航空に入社。DC-10の航空機関士およびインストラクターに加え、ボーイング 727型機、DC-10、ボーイング 747型機の副操縦士として勤務。現在はワシントン・ダレス国際空港を拠点にボーイング 787型機(ドリームライナー)の機長を務めている。

 冒頭では、自身がパイロットになったきっかけ紹介。大学では生物学を専攻していたが、子供のころに飛行機に乗った思い出が忘れられず、大学に在学しながらプライベートパイロット養成学校に通い、選択科目の一つとして地元空港で飛行レッスンを受講。この選択科目に心を奪われ、航空への興味に目覚めたのだという。

 その後パイロットとしての経験を積むために入った米国空軍では、約2年間の訓練を積み副操縦士になると、日本を含む世界中の空を飛べるようになったという。そしてユナイテッド航空に入社し、自身のキャリアをスタートさせたそうだ。

ガルナー氏がパイロットになった理由
女性パイロットとして

 キャリアを積んでいくうえで大切なのは環境や働き方。ユナイテッド航空を含む多くの米系航空会社は年功序列制を採っており、パイロットの空きがでた際には、男女差別なく公平に自分の拠点となる空港、機種、職務が決定されると勤務の仕組みを紹介した。また飛行機は年間を通じて毎日運航するため、毎月の飛行スケジュールを柔軟に組むことができると、働きやすさもアピール。さらに、パイロットの醍醐味として国際線を飛ぶといろいろな国に行けること、また長時間のフライトのためその分休みも長くなることなどを挙げた。

 ガルナー氏は、入社当初は女性パイロットは非常に少なく乗客などからCA(客室乗務員)に間違われる経験もあったと振り返りながらも、「実際女性だからといってパイロットにならなかった人生というのは考えられないと思っている」と自身の気持ちを語った。

 最後に学生に向けて「自分の気持ちと夢を大事に、それに従うこと。あなたの心に響く新たなチャンスが訪れたら、人生の方向性を変えることを恐れないで」とエールを送った。

ユナイテッド航空でボーイング 777型機の機長を務めるデヴラ・マッカウ氏

 次にマイクを持ったのは、ユナイテッド航空でボーイング 777型機の機長を務めるデヴラ・マッカウ氏。マッカウ氏は、17歳のときにパイロット免許を取得後、米国空軍予備軍で軍用機のパイロットを務めたのち、ユナイテッド航空に入社。それ以降パイロットとして33年のキャリアを積んでいる。

 マッカウ氏がパイロットを目指した理由は「皆さんくらいの年頃で初めて飛行機に乗った。それがとても楽しかったから」と、とてもシンプル。また父親が空軍に在籍していたこともあり、幼いころから「女性でもパイロットになれるよ」と聞いて育ったのだという。

 パイロットという仕事が身近な存在だったマッカウ氏は、その後14歳で飛行レッスンを受け、16歳で単独飛行ができるようになり、17歳で民間の飛行機の免許を取得。高校生のときには、友人を乗せて空を飛ぶことを楽しんでいた思い出を笑いを交えながら語っていた。

マッカウ氏がパイロットを目指した理由
ユナイテッド航空のパイロットとして

 ユナイテッド航空に入社後は、さまざまな機材の操縦や数多くの路線を経験し、現在はサンフランシスコを拠点にボーイング 777型機の機長として勤務している。マッカウ氏は通常のフライト以外にも、ユナイテッド航空が病気の子供たち向けに実施しているチャリティフライト「ファンタジー・フライト」の機長も務めた経験もあり「私は自分のキャリアを非常に楽しんでいる」と自信に満ちあふれていた。

 また、パイロットとしてのキャリアを積んでいるあいだに、2人の子供を出産。夫婦で、スケジュールを調整したりベビーシッターを活用したりしながら、母親として子育てをやり遂げた経験も紹介された。

「私もガルナー機長も初期のころの女性パイロットだが、フライト・クルーが全員女性という場合もあるなど、状況は様変わりしている。(学生たちには)好きなことを追求して、やっている仕事を好きでいられるようなことを見つけてほしいと思う。自分に与えられた才能が何か、というのを考えて熱意を持って取り組めるものを見つけて、それに向かって進んでほしいと思う」と学生にメッセージを送った。

 講演会の最後には質疑応答の時間が設けられ、仕事と家庭の両立についてや、判断力・決断力の身に付け方などが投げかけられるなか、生徒からのリクエストで機内アナウンスを披露するなど会場は盛り上がりを見せ講演会は終了した。

質疑応答の時間では、生徒からのリクエストで機内アナウンスを披露したガウナー氏。会場を盛り上げた