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NEXCO東日本、定例会見で渋滞予報士がお盆期間に渋滞を回避するポイントを紹介

アクアライン20周年事業や高速道路リニューアル秋期予定なども説明

2017年8月2日 実施

NEXCO東日本が2017年度の4回目となる定例会見を実施。中央が東日本高速道路株式会社 代表取締役社長 廣瀨博氏。左は取締役兼専務執行役員 管理事業本部長 遠藤元一氏、右は取締役兼常務執行役員 サービスエリア事業本部長 萩原隆一氏

 NEXCO東日本(東日本高速道路)は8月2日、2017年度で4回目となる定例記者会見を実施し、秋期の「高速道路リニューアルプロジェクト」の工事予定や、東京湾アクアラインの開業20周年記念事業、お盆期間の渋滞情報などについて説明した。

高速道路リニューアルプロジェクトは今秋、新たに3カ所の工事に着手

東日本高速道路株式会社 代表取締役社長 廣瀨博氏

 NEXCO 3社は高速道路のネットワーク機能を永続的に活用していくために補修・改善を行なう「高速道路リニューアルプロジェクト」に取り組んでいる。NEXCO東日本管内では、この秋期より新たに3カ所の工事に着手する。

 札樽自動車道では、朝里IC(インターチェンジ)~銭函ICで対面通行規制を行ない、大野橋の床版取り替え工事を行なう。大野橋は札幌オリンピック直前の1971年末に開通し46年が経過。海岸から350mと近いために塩害が起こりやすく、冬期の凍結防止剤散布などもあって傷みがひどいという。

 八戸自動車道では、一戸IC~九戸ICで対面通行規制を実施し、楢山橋の床版補強工事と折爪トンネルの補強工事などを行なう。この区間は開通後29年以上が経過し、楢山橋ではシリカを含んだ骨材が水分を含んで膨張し、ひび割れも進行しているという。この区間は9km程度にわたっての対面通行規制となり、ある程度期間をかけて舗装工事や保全工事を実施するとしている。

 上信越自動車道では、須坂長野東IC~信州中野ICを対面通行規制し、豊洲高架橋の床版取り替え工事を行なう。1995年開通の同区間では、通行車両が大型化したことで輪荷重が増加し、ひび割れが発生。また冬期の凍結防止剤による塩害などの要因もあって補修が必要と判断された。

 説明にあたったNEXCO東日本 代表取締役社長 廣瀨博氏は、「単純に同一要因ではなく、地域や歴史、道路の特性、交通の特徴などによる負荷で、床版を取り替える必要などがある」と理解を求めるとともに、工事区間に伴う渋滞が予想されることから「Webサイトやハイウェイテレフォン、ラジオなどでリアルタイムの情報を確認し、できるだけ渋滞回避を」と呼びかけた。

東京湾アクアラインが12月18日に開通20周年

 廣瀨氏からは引き続き、東京湾アクアラインの開通20周年事業についての説明が行なわれた。1997年12月18日に開通した東京湾アクアラインは、調査に20年、建設に10年をかけた延長15.1kmの道路で、当時の最先端技術を集結したものであると紹介。

 現在では、料金の社会実験などもあり2016年度の利用は1日約4万6000万台と、開通翌年は1日約1万台に対して約4.6倍に伸長。休日は夕方の上り(川崎方面)を中心に交通集中による渋滞が発生するほど利用が増加し、20年間の累積通行台数は約1億7000万台としている。

 20周年事業では、アクアラインの事業や建設技術、整備効果などを広く知ってもらうための企画、アクアラインを利用する人にドライブを楽しんでもらう企画、海ほたるPA(パーキングエリア)で楽しい時間を過ごしてもらうための企画を計画。

 整備効果としては、川崎~木更津間の走行距離が千葉市側を通る約100kmから約30kmに短縮され、それまで4路線しかなかった高速バスが現在は23路線、1日476便が運行されるようになった。特に木更津駅発~川崎駅着のバスは、通勤時間帯には15分に1便が運行され、低廉良質な住宅を求めて木更津に引っ越す人が増加。2014年には木更津市内に33年ぶりに小学校が開校したことも話題となった。

6月の通行台数、料金収入は前年越え

東日本高速道路株式会社 取締役兼専務執行役員 管理事業本部長 遠藤元一氏
東日本高速道路株式会社 取締役兼常務執行役員 サービスエリア事業本部長 萩原隆一氏

 続いて、取締役兼専務執行役員 管理事業本部長 遠藤元一氏と取締役兼常務執行役員 サービスエリア事業本部長 萩原隆一氏により、6月の営業概要の説明が行なわれた。

 通行台数は、前年同月比2.1%増の1日平均約287万台。料金収入は同3.6%増の約674億6700万円となり、2月の圏央道 境古河IC~つくば中央IC開通によるネットワーク効果が引き続き出たことが大きな要因となって通行台数、料金収入とも増加した。車種別では、台キロベースの前年比伸び率の平均が101.6%に対し、大型車が104.6%、特大社が106.3%と大きく伸びている。

 SA(サービスエリア)/PAの売上高は、前年同月比5.3%増の約105億7100万円。飲食販売等の売上高が同1.6%増の74億2000万円、ガソリンスタンド売上高が15%増の約31億4000万円となった。

 飲食販売の売上高は、道央自動車道の輪厚PA(上り)のリニューアルや、上信越道の千曲川さかきPAに新設されたコンビニエンスストアの売り上げが好調だったことを受けたもの、ガソリンスタンドは各油種とも前年から11円ほど単価が上昇したことと、軽油の給油数量増が理由に挙げられた。

 次に、遠藤氏から2017年1月~7月の死亡事故発生状況の説明があった。同期間のNEXCO東日本管内の死亡事故は23件発生し、25名が死亡。2016年同期間は事故15件/死亡7名で、事故が8件増、死亡者は8名増加した。特に7月は事故9件、死亡11名と、前年同月からそれぞれ5件/7名増加。1カ月間の死亡者数としては2012年以来の高い水準だという。

 事故の特徴としては、自動二輪車に起因するものと、シートベルト非着用による事故が増加。一方で、貨物車が第一当事者となる事故は減少傾向にあり、NEXCO東日本では新たに「自動二輪車事故防止」を2017年度の取り組みテーマに加えて、関係機関とともに安全啓発を強化する方針とした。

 なお、暫定を含む2車線区間における対向区間への飛び出し事故も増加しているが、現在対策としてワイヤーロープの設置が進められている。この効果について遠藤氏は「実際に設置してみると飛び出しによる事故は起きていないが、ワイヤーロープに接触する軽微な事故は起きており、その修復のための通行止めが発生するというトレードオフがある。さらに検証して、より安全な形に持っていきたい」としたほか、廣瀨氏は「安全対策として(対向車線へと)突破事故はないが、修理のための交通規制に時間がかかっているので、材質なども含めて現状(の設備で)よいのか、冬場はどうなのか、また路肩寄りを走るという走行パターンの変化もある。試行してよかったと思っているが、よく見ていかなければならない」とコメントした。

道東道の渋滞、山の日を含む3連休の渋滞に注意

 最後にお盆期間の渋滞予測について説明があった。2017年度のお盆期間は8月5日~16日の12日間を対象として予測しており、その内容については弊誌でもお伝えしているとおりだ(関連記事:高速道路各社、お盆期間(8月5日~16日)の渋滞予測 下りのピークは8月11日、上りのピークは13日~15日)。

 NEXCO東日本管内での渋滞について説明した遠藤氏は、特に道東自動車道について言及。並行する国道274号の日勝峠が、2016年8月末の台風により被害を受け、現在も通行止めが続いており、復旧が2017年秋ごろの見込みとなっていることからお盆期間は道東道の交通量が増加すると予測している。8月14日の札幌方面でトマムIC付近を先頭に最大26kmの渋滞予測が出ているほか、10km以上の渋滞が6回(前年2回)、20km以上の渋滞が2回(同1回)と予測している。

渋滞予報士が関東支社管内の渋滞予測と回避ポイントを説明

東日本高速道路株式会社 関東支社 交通技術課 外山敬祐氏

 東京を中心とした関東支社管内の渋滞予測については、渋滞予報士の外山敬祐氏が紹介した。

 外山氏によると、2017年は「山の日が3連休となり11日にお盆休みのスタートが集中する」「圏央道 境古河IC~つくば中央IC開通でネットワーク効果が発揮された交通量増加」が大きなポイントにあるとし、交通集中による渋滞は前年比25回増となる127回の発生を予測している。

 お盆期間の渋滞の特徴としては、ゴールデンウィークとは異なり帰省目的の移動が増えることから、地方部でも40kmを超える渋滞が発生する傾向があることを指摘。下りでもっとも長い渋滞は8月11日10時ごろに矢板北PA付近を先頭に45kmの渋滞を予測しているが、最近は前日夜から始める傾向があることから10日の深夜から渋滞が始まると見ているという。上りのピークは、8月14日17時ごろに高坂SA付近を先頭に45kmとなっている。

2017年お盆期間の渋滞の特徴
2017年お盆期間の渋滞回数やピークなど。内容はすでに発表されているとおり
関東支社管内の長い渋滞の情報

 さらに上り/下りそれぞれのピーク日前後の予報では、下りは10日午前は渋滞が発生せず、10日22時ごろから渋滞がスタート。11日午前中にピークを迎え、14時ごろに都心に近い部分を中心に渋滞が落ち着くと予想。12日は午前中は混雑が激しいものの、やはり夕方には落ち着くとみており、「連休がスタートする11日、12日の外出を計画している人は午後に外出を」と呼びかけた。

 上りは、14日、15日ともに午後から日付が変わる深夜まで渋滞が続くことから、「この2日間は午前中の利用がお勧め」としたほか、16日の午前中も渋滞の発生は予想されていない。16日の午後は関越自動車道と東北自動車道で渋滞が発生するものの、常磐道の渋滞は落ち着くとしており、「16日以降の利用者は常磐道への迂回を検討してほしい」と紹介。

 この16日午後の迂回ルートについて、16日14時に東北道 仙台宮城ICを出発して外環道 草加ICまで移動する場合、最短ルートの東北道を利用した場合は5時間43分であるのに対して、常磐道へ迂回した場合は4時間10分と約1時間30分早く着けるとしている。

 外山氏は「予測を見て空いているルートを選ぶことが大事だが、実際の交通状況は異なることがあるので、必ず最新情報のチェックを」と呼びかけ、情報収集手段として「ドラぷらアプリ」や、Webサイト「どらトラ」のチェックを推奨している。

下りの渋滞予報
上りの渋滞予報

 また、渋滞回避のポイントとしては、先述の常磐道への迂回ルートのほか、圏央道開通を活かした複数ルートからの選択や、上り坂やサグ部での速度低下への注意を喚起。

 NEXCO東日本としては、渋滞発生ポイントの高坂SA付近や坂戸西スマートIC前後に付加車線を設置したほか、トンネル部に勾配がある東京湾アクアラインのペースメーカーライトを設置。ペースメーカーライトはNEXCO東日本管内では唯一、東京湾アクアラインの川崎方面にのみ設置されているもので、一定の速さで光を走らせることで自車との速度差を分かりやすくし、上り坂や下り勾配の変化に伴う速度低下を認知しやすくする。

 このほか、混雑時には少しでも速く進みたいというドライバー心理から追い越し車線を走行するクルマが増え、渋滞の多くは追い越し車線から発生することへの対応として、関越道下りの東松山IC~嵐山小川IC間にLED標識を設置し、走行車線の利用を促す渋滞対策実験を、このお盆期間に実施する。

上り坂やサグ部への速度低下は渋滞発生の要因。写真右のような標識を見たら注意が必要
渋滞多発ポイントに付加車線を設置
東京湾アクアラインにペースメーカーライトを設置。以前から川崎側の上り坂には付いていたが、2017年のゴールデンウィーク前に木更津側の下り勾配が変化する場所にも設置した
ドライバー心理の影響から渋滞は追い越し車線から発生。走行車線を利用することで渋滞緩和を図るべくLED標識を設置する渋滞対策実験を実施する