トラベルグッズレビュー
衣類に装着して旅を“記録”できるクリップ付カメラ「Narrative Clip」
(2015/5/20 00:00)
旅の思い出を残すのに、カメラは欠かせない存在だ。むしろカメラでスナップ写真を撮ることこそが旅行の楽しみという人もいるだろう。
もっとも、事あるごとにバッグからカメラを取り出し、構図を決めてシャッターを切るという一連の行為が、旅行先での体験を阻害してしまうこともある。スナップ写真を撮ることにこだわるあまり、体験そのものが疎かになってしまうのは本末転倒だ。かといって旅の写真がまったくないのも、それはそれで寂しいものがある。このあたりのバランスはなかなか難しい。
もし、カメラを取り出す頻度を減らしつつ、旅の思い出を記録したいのであれば、クリップ型の定点カメラ「Narrative Clip(ナラティブクリップ)」を使ってみてはいかがだろう。もともとは30秒に1回のペースで自動撮影することで日々の行動を記録に残す、いわゆるライフログ目的のカメラで、旅行用の製品というわけではないのだが、これを旅行で使うと、わざわざ撮影するまでもないと判断した旅先の風景も含めて、すべて自動的に保存されていく。あとから旅行を俯瞰しつつ振り返ることができるというわけだ。
製品をざっと紹介しておくと、本体は大判の切手ほどのサイズ(36×36mm)で、隅に500万画素のカメラを搭載している。厚さは9mmで、背面のクリップで襟元や胸ポケットなどに取り付けて使用する。シャッターを切るボタンはおろか電源ボタンすらなく、本体をうつ伏せにしている時を除き、30秒に1回の頻度で自動的に写真が撮影される。これを終日装着していれば、1日が終わる頃には1000枚程度の写真が撮影できるという仕組みだ。
海外の製品だが、メーカーのECサイトが日本への発送に対応しているのでそのまま購入でき、代金はクレジットカードまたはPayPalで支払える。
本製品にはファインダーがないため、構図を決めてスナップ写真を残す用途にはまったく不向きで、デジカメやスマホによるスナップ写真を置き換えられる製品ではないが、旅行から帰ったあとにこれらをチェックすると、わざわざカメラを取り出して撮ったスナップ写真よりも、旅行先での記憶をよほど鮮明に呼び覚ましてくれる。目的地に向かう途中の道端の風景や、空の雲が流れる様子、街を歩く人々、電車内の様子など、写真を撮ってまで残そうとは考えもしなかった風景の羅列が、旅の記憶を正確に伝えてくれる。
そもそも“旅の記憶”というのは、現地で撮ったスナップ写真に影響されやすいもの。旅の途中で“ここぞ”というシーンでスナップを撮り、それらをあとから見返すことによって、それらのシーンだけが記憶の中で強調され、それ以外が記憶の中で埋没していく。これは記憶を恣意的に「編集」しているとも言える。
その点、本製品によって撮られた写真は、言うなれば編集前の生データを見せられるようなもので、「記憶」と「記録」がまったく別物であると痛感させられる。それこそが本製品の面白いところであり、本製品を旅行で使う価値と言ってよいだろう。
旅行を終えてから写真を見返すまでの日数が空けば空くほど、スナップ写真によって形作られた記憶とのギャップが大きくなり、それだけ新鮮な驚きを味わえるので、敢えてしばらく期間を空けてからチェックするのも、1つの楽しみ方だ。
もっとも、クルマに乗っていて前方の景色を撮っているつもりが延々とハンドルを回す手元を撮っていたり、誰かと向かい合って食事をしている時に相手は一切映らずに皿の料理が減っていく様子が延々と記録されたり、かと思えば洗面所で手を洗っている自分の姿が鏡に写った状態でバッチリ撮られていたりと、「そうじゃないだろ」と突っ込みたくなる写真が積み重なることもしばしばだ。が、そこで腹を立てるのは筋が違っている。「そういう性格の製品なのだ」と笑って許容できることが、この製品のユーザーとなる最低限の資格かもしれない。
なお、本来はライフログ用途である本製品を旅行で使う場合にネックとなるのは、データの転送に必ずPCが必要になることだ。バッテリの持ちは約2日、ストレージの容量は約4日分。特にストレージ容量の約4日分を超える場合は旅先にPCを携行する必要がある。旅行中に写真をチェックしたい場合も同様だ。次期モデルはWi-Fi搭載でスマホと連携できるとのことだが、技術基準適合証明(技適)の関係で国内での利用は難しそうなので、2泊3日程度の旅行には現行のモデルの方が適している。
製品名 | Narrative Clip |
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発売元 | Narrative |
価格 | 149ドル |