荒木麻美のパリ生活
年に1度の「パリ産」ワインを気軽に味わうチャンス
モンマルトルのブドウ収穫祭
(2015/11/21 00:00)
ボジョレー ヌーヴォーの季節に合わせて、今月はワインの話題をお届けしたいと思います。
以前、モンマルトルを散歩していたときにブドウ畑を見かけました。「へー、こんなところにブドウ畑!」と思い、入ってみようとしたら「入場禁止」の札が。その時はそれで断念したのですが、ここに入れる機会が年に1回あると聞いて行ってきました。それは「モンマルトルのブドウ収穫祭」の時。毎年10月の第2週末に行なわれており、今年で第82回。今年は10月7日から11日まで開催されていました。
ブドウ畑に入るには事前の申し込みが必要です。申し込みの受け付けは1カ月前くらいなのですが、すぐに満員になると聞いていたので、申し込み受付開始直後に、サイトから張り切って申し込みました。そして当日。係の人に言われて中に入ると、まずは畑の歴史からワインの醸造場所などについての説明が延々と30分ほど。
それによると、このブドウ畑の歴史は10世紀までさかのぼります。12世紀からの修道院による管理などを経て、現在はパリ市によって管理されています。この畑の敷地は1556m2。約1700本のブドウの木が植えられています。農薬は一切使われておらず、害虫を寄せ付けないための植物を植えているとのことでした。
この畑のブドウからできるワインのアルコール度数は11度。生産量は年によって500Lから2000Lです。これまではロゼワインのみを作ってきましたが、今年は豊作だったので、来年(2016年)に向けて初めて赤ワインを仕込んだとか。ちなみに醸造はパリ18区の区役所の地下でしているというから驚きです。
寒い日だったこともあり、説明はちょっと長く感じましたが、この畑、そしてワインへの愛と誇りをそれはもうひしひしと感じました。説明が終わると畑を自由に散策できます。小さな畑ですが、せっかくの機会なので、じっくりと、結局1時間くらいは中にいました。
畑を出たあとは周辺を散策です。お祭り期間中、サクレ・クール寺院周辺はまさにイベントが毎日目白押し。各種展示会から子供向けのアトリエ、ワインの試飲会、花火、フランス各地の郷土服を着た人によるパレードもあります。このほかフランス各地の郷土料理の屋台も出て、普段から観光客の多いエリアがさらに大変な賑わいとなります。
私は屋台だけをちらっと見ましたが、フランスの郷土料理なので、チーズ、ソーセージ、フォアグラ、牡蠣、ワイン、シャンパンなど、私が普段ほとんど食べないものばかり。屋台にはさほどテンションは上がりませんでしたが、もりもりと飲んで食べて楽しそうな人たちを見ているのは和みました。
さっき見た畑で採れたブドウを使ったワインの試飲もできます。しかし私はお酒を一滴も飲めない下戸。そこで飲んでいる人に感想を聞いてみました。
「とってもおいしいわよ!」
と言ったのはブドウ畑組合のおばさま。当然です。そしてスタンド周辺で飲んでいる人の声はというと
「まずくはないよ」
「わるくはない」
「まぁまぁ」
という答えがほとんどでした。何とも微妙なお答え……。
グラス1杯7.50ユーロ、ボトルで買うと500mlで50ユーロですから決して安くはないのですが、「パリ産の希少なワイン」ということに価値があるのでしょうね。それと、売り上げは社会活動の資金に充てられているので、そこに賛同して買う人もいると思いました。
なお、ボトルワインはお祭り期間だけでなく、在庫がある限りはモンマルトルのブドウ畑組合でも販売しています。オンラインでの販売もしています。
フランスに住んでいるのに少し残念ではありますが、私はアルコール類を一切飲めないので、ワインそのものへの興味はありません。でもこの土地代が異常に高いパリで、パリ産のワインにこだわり続け、パリ市自らワイン畑の管理からワインの醸造までしているところがすごい! の一言です。
ブドウ畑周辺に住む人達も総出のワイン祭り。彼らのワインへの強い愛と、それを守り抜くのだという気概を感じられるよい機会となりました。ちなみに、パリ市内にはここを合わせて5カ所にパリ市が管理するブドウ畑があるそうです。
- ●モンマルトル産ワインを買えるブドウ畑組合
- 名称:
- Syndicat d'Initiative
- 所在地:
- 21 Place du Tertre, 75018 Paris
- オンライン販売:
- http://www.comitedesfetesdemontmartre.com/?p=21(フランス語)