旅レポ
食事も豪華!! 新ビジネスクラスシート搭載「JAL SKY SUITE 777(SS2)」でバンコクへ
1-2-1ヘリンボーン配置の「SKY SUITE III」
2016年7月11日 00:00
- 2016年6月18日 運航開始
JAL(日本航空)が長距離国際線に積極的に導入しているのが、“フルフラット&全席通路アクセス”の新ビジネスクラスシート「SKY SUITE」と、足下空間を従来より10cm拡げたという“新・間隔エコノミー”シート「SKY WIDER」。
JALはこれらのシートを搭載した機種を「JAL SKY SUITE(スカイスイート)」と名付け、ボーイング 777-300ER型機を改修した「JAL SKY SUITE 777」(時刻表表記:SS7)をはじめ、ボーイング 787-8型機「JAL SKY SUITE 787」(SS8)、ボーイング 787-9型機「JAL SKY SUITE 787」(SS9)、ボーイング 767-300ER型機「JAL SKY SUITE 767」(SS6)と矢継ぎ早にシリーズ化。SS7では座席位置をずらした2-3-2配置で、SS8とSS9では2-2-2配置で、SS6では1-2-1配置でフルフラット&全席通路アクセスを実現している。
その最新版となるのが、中距離国際線に投入されるボーイング 777-200ER型機の「JAL SKY SUITE 777」で、ビジネスクラスは1-2-1のヘリンボーン配置を採用。窓側の席は斜め配置で窓側を向くように座り、中央2席は足の位置を上下交差させて配置することで前後方向の距離を短縮。乗客の快適性と航空会社としての収益性を両立しようとしている。
この中距離国際線に投入されるJAL SKY SUITE 777の時刻表表記は「SS2」。設置される新ビジネスクラスシートは「SKY SUITE III」。なかなかややこしい表記だが、以下とくに断わりのない限り機体はSS2、シートはSKY SUITE IIIと表記していく。
バンコク線から投入されたSS2
中距離国際線用のSS2が最初に投入されたのは羽田(東京)~バンコク線になる。今回SS2では、新ビジネスクラスシート42席のほか、プレミアムエコノミークラスには「SKY PREMIUM」40席、エコノミークラスには「SKY WIDER」154席と、いずれも新世代シートを搭載している。ボーイング 777-300ER型機を改修したSS7ではファーストクラス「JAL SUITE」を搭載した4クラス構成だったが、SS2では3クラス構成になる。
今後、8月には羽田~シンガポール線、来年1月以降には羽田~ホノルル線の中距離国際線に投入されていくが、羽田~バンコク線が最初に選ばれたのは、中距離国際線としてビジネス需要が高いため。バンコク、つまりタイにはトヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、三菱自動車工業、スズキなど数多くの自動車会社が組立・生産工場を構えており、世界市場へ向けての一大生産拠点となっている。もちろん、日系自動車メーカーの生産工場があるということは、日系の部品メーカーも多数進出しており、デンソーやアイシン精機などは代表的なメーカーになる。また、日本の自動車産業が数多く進出しているため、それを背景に日本のモータースポーツで最も人気のある「SUPER GT」シリーズも、唯一の海外戦をタイのチャン・インターナショナル・サーキットで開催(2016年は10月8日~9日)しているほどだ。
もちろん、JALもその豊富なビジネス需要を背景に、1日6便(成田1便、羽田2便、セントレア1便、関空2便、福岡1便)と、手厚いネットワークを構築しており、ホノルル線に匹敵する路線となっている。
その第1弾投入路線として選ばれたのが、羽田11時20分発~バンコク15時40分着のJL31便と、その折り返し運用となるバンコク21時55分発~羽田翌6時5分着のJL34便。基本的には毎日SS2で運航されているが、SS2仕様のボーイング 777-200ER型機は1機(登録記号:JA701J、7月上旬時点)しかないため、運用上の都合のためか毎週火曜日には羽田~香港便のJL29/26便として用いられているようだ。
SS2仕様のJAL31初便に搭乗する機会を得たため、本記事で新ビジネスクラスシートであるSKY SUITE IIIによる旅を紹介していく。
出発までの時間を効率よく使えるビジネスクラス
ビジネスクラスによる旅のメリットは、効率よく旅を楽しむことができる点だ。それは飛行機に乗る前から始まっており、受付カウンターは専用のビジネスカウンターを用いることができ、預け入れ手荷物も到着空港で優先して出てくるよう「プライオリティタグ」を取り付けてくれる。また、預け入れ手荷物の無料手荷物許容量も、プレミアムエコノミークラスやエコノミークラスが23kg×2個に対し、32kg×3個。つまりうまく3分割してパッキングすれば96kgまで無料で運ぶことができる。
そのうえ、豪華なことで知られる羽田空港のサクララウンジを使用することができ、搭乗時はほかのクラスよりも優先して搭乗することができ、いろいろな場面で発生しがちな“無駄な待ち時間”を限りなく減らすことができる。
JALは羽田空港国際線ターミナルに、3つのサクララウンジを用意。112番搭乗口に近い本館に4階と5階が、新設された146番搭乗口に近いエリアにサクララウンジ・スカイビューが設けられている。営業時間は、本館4階/本館5階が4時30分~翌1時30分、サクララウンジ・スカイビューが6時~12時30分/21時~翌1時30分となっていて、サクララウンジ・スカイビューは航空便の多い時間帯に配慮して営業している。
いずれのサクララウンジにも、専用Wi-Fiが用意されているほか、ワインなどのドリンクやソフトドリンク、サラダなどの軽食を用意。国際線サクララウンジの名物である「JAL特製ビーフカレー」も終日食べられるようになっている。軽食やドリンクは時期ごとに異なったものになるので、JALのWebサイトで公開されているフードメニュー、ドリンクメニューを参考にしていただきたい。
羽田空港国際線ターミナル サクララウンジ・スカイビュー
ただ、JAL特製ビーフカレーに関しては美味しさに定評がある味だけにビジネスクラスに乗る際は食べる量に注意したい。JALはビジネスクラスにおいて「空の上のレストラン“BEDD”」を展開しており、羽田~バンコク線のJL31便では和食を黒木純シェフが、洋食を山田チカラシェフが担当。それら、ビジネスクラスならではの食事を楽しめるだけの余力は残しておく必要があるだろう。
出発時刻である11時20分前には、当日の出発エリアである146番搭乗口へと移動。SS2の初便が搭乗口へと到着するのを見守った。
これが改修後の初就航となるだけに機体はピカピカ。真っ白なボディに、鶴丸マークと日の丸、そして「JAPAN AIRLINES」と「JAL SKY SUITE 777」の文字が映える。JALの格納庫で行なわれた発表会で見たときも「ピカピカだなぁ」と感じたが、快晴の中で見るSS2はさらにピカピカ度が増した感じだった。
搭乗も順調に進み、いよいよ機内へ。機内での座席は「10K」で右の窓側の席となっていた。1-2-1のヘリンボーン配置のシートのため、A席は左の窓側の、K席は右の窓側のボッチ席(1人ぼっちの席)で、非常にパーソナル感が高い。とくに窓側を向いて座ることになるため、席に座ったときからぐっとパーソナル感が高まる感じだ。
中央2席(D席、G席)はシートの高さを工夫することで、フルフラットと必要な足下空間を確保しつつ座席密度を高めており、SS2で注目されるシート。今回は乗ることができなかったが、こちらについてはまたの機会に乗ってみたいと思っている。
出発は順調に~と書きたいところだが、実はトラブルが発生。11時25分にブロックアウトしたものの、トラブルが発生したらしく11時46分にブロックイン。搭乗口のスポットに戻ってしまった。
機長のアナウンスでは、「エンジンから空調の……」という言葉を聞き取ることができ、その部分の点検を行なうという。のちほどJALの広報に確認したところ「右エンジンのブリードシステムの不具合」で、「外気を吸い込んで空調に使用するシステムに不具合があり、引き返して安全を確認しました」という対応を行なっていたとのことだ。
2度目のブロックアウトタイムは12時49分。1時間以上出発時刻が遅れてしまった。2度目のブロックアウト以降は順調で、13時3分にA滑走路(16R)から離陸。座席が右窓側の10Kのため、川崎や横浜地区を眺めながらの離陸となった。
ビジネスクラスはシャンパンクラス!?
離陸後、シートベルト着用サインが消えるとすぐにドリンクサービスが始まった。ビジネスクラスの醍醐味は、離陸後すぐに始まるドリンクサービスにあると言ってもよいかもしれない。ビジネスクラスのため10Kという前から10列目の席でも、すぐにドリンクサービスの順番が回ってくる。
ここで頼むべきドリンクは、アルコール類が苦手ではない場合、シャンパン(シャンパーニュ)がお勧めだ。ビジネスクラスでは鶴丸入りのグラスでシャンパンが楽しめ、JL31便の場合、「シャルル エドシック ブリュット レゼルブ N.V.」という呪文のようなシャンパンが提供されていた。「BEDD」のメニューには、N.V.、つまりこのノンヴィンテージの場合にはとくに古いシャンパンがブレンドされ、「複雑で風味豊かな味わいを表現している」と書いてある。“複雑”はさすがに分からなかったものの、“風味豊か”なのは味わうことができ、離陸してすぐに、そして富士山を見ながら味わうシャンパーニュは格別だった。
ある大手半導体メーカーの広報さんによると、「ビジネスクラスは、シャンパンクラス」と呼ばれているとのことで、シャンパンをすぐに楽しめるのがビジネスクラスらしい象徴する部分なのだろう。
シャンパンを楽しんだあとは、PCをおもむろにセッティング。ユニバーサルAC電源の位置も使いやすい場所にあり、シート下をのぞき込む必要がないのは便利だ。もちろんテーブルも11インチのMacBook Airには十分広く、シャンパンを飲みながらどや顔で仕事を楽しめる(窓側を向いているため意味はないが……)。JAL SKY SUITE 7x7シリーズでは、ほとんどの機体で容量無制限のWi-Fiサービス「JAL SKY Wi-Fi」を提供しており、仕事でも使えるようVPN(Virtual Private Network)に対応している。このSS2でももちろんWi-Fiを使うことができ、VPNによって社内ネットワークに接続することができた。
豪華な食事を楽しんでいるうちにバンコクへ
PCでメールなどをチェックしていると食事の時間が始まった。羽田~バンコク線のビジネスクラスでは、東京湯島「くろぎ」黒木純シェフ監修による「和食」と、東京麻布十番「山田チカラ」山田チカラシェフによる「洋食」の2種類から食事を選ぶことができる。今回は和食を注文し、洋食は別途許可を得てギャレーで撮影用のものを用意してもらった。
和食を注文すると、「薫風(くんぷう)」と名付けられたお造りが最初に提供される。6つのエリアに区分けされ、真鯛の昆布〆、夏野菜と若布のポン酢ジュレ掛けセロリの土佐酢漬けなど、見た目に美しいお造りが入っていた。最初はメニューがよく分かっておらず、これら6品が和食コースのメインなのかと思って完食したら、本当のメインである台の物が続いて登場した。
メインとして登場した台の物は、銀鱈味噌漬けと和風牛タンシチューから構成され、新潟奥阿賀産のコシヒカリ「雪蔵今摺り米(ゆきぐらいまずりまい)」の炊きたてご飯と一緒に楽しめる。和食は見た目が命とも言われるが、見た目に美しく、食べて美味しいメニューとなっていた。
さらに食後のデザートとして水ようかんも提供され、余程お腹が空いていない限り、味も量も満足できるだろう。
食事が終わると機内販売が始まる。JALに限らず多くの航空会社は機内販売に力を入れており、機内販売の冊子には魅力的な商品が並ぶ。JALはこの機内販売冊子を2015年1月からリニューアル。単なるカタログ冊子ではなく、読んで楽しめるように工夫されており、旅気分をぐっと盛り上げてくれる。このカタログはデジタル版としてJALのWebで公開されている(国際線版「JAL SHOP」)ので、航空機に乗る前からあれこれチェックすることが可能だ。とくに7月にビジネスクラスに乗るのであれば、焼酎の「森伊蔵」などはお勧め。720mlの森伊蔵を3200円(JALカードなら2880円)で購入することができる(人気の商品なので売り切れに注意)。
シャンパンを飲んで、食事をしたら、フルフラットシートによる寝心地を試しておきたいところだ。フルフラットシートにするためには、手元(K席なら右側)にある電子スイッチを押すだけでOK。リクライニング状態や通常状態にするにも分かりやすいアイコンで示され、操作に迷うことはないだろう。
SKY SUITE IIIと名付けられたこの新ビジネスクラスシートだが、最新のシートだけあってリクライニングや、フルフラットに転換する際の動作音がとても小さいのがうれしかった。動作音がとても小さいため、まわりに迷惑をかけることなく、自由なポジションにできるからだ。また、腰のサポート機能も用意されており、体型に合わせたシート調節が可能だ。
実際にフルフラットにして寝てみたが、身長178cmの記者にとっても十分な長さがあり、足下に余裕もある。もう少し身長の高い人でも、問題なくフルフラットで就寝できるだろう。ただ、これはSKY SUITE IIIの問題ではないのだが、航空機は巡航時に若干機首を上げた状態で飛行する。そのため、フルフラットにしてしまうと微妙に頭が下がった状態になり快適度が下がる。記者は若干シートバックを起こし気味にして、枕を使って頭の位置を調整し、快適なポジションを作ってみた。
窓側に足を投げ出して、ほぼフルフラット状態で過ごす機内は快適の一言。頭のまわりにパーティションがあり、周囲の環境がまったく気にならない。枕のベストポジションを見つけ、毛布をかけて寝る準備をすれば“巣作り”完了だ。あとはこの快適なSKY SUITE IIIでの睡眠を楽しめばよいだろう。
ただ、記者にはギャレーで洋食メニューを撮影したり、エコノミークラスのメニューを撮影したりする仕事があり、本格的にSKY SUITE IIIでの睡眠を楽しめないのが残念だった。このSKY SUITE IIIでは、スマートフォン感覚で扱えるタッチパネル式の17インチモニターが装備されており、最新の「MAGIC-VI」システムで映画やフライトマップを大画面で楽しむことができる。MAGIC-VIでは、タッチレスポンスも改善され、スムーズな操作を実現。寝る時間と同様、映画を1本楽しむ時間を持てなかったが、そのサクサクと動く操作感は快適なものだった。
出発は約2時間近く遅れたものの、途中の速度を調整したためか現地時間(日本とタイの時差は2時間)の16時48分にバンコクのスワンナブーム国際空港に着陸。16時54分にブロックインした。時刻表の到着時刻は15時40分となるため、出発時刻の遅れをいくらか取り戻した形だ。
JL34便のSS2で日本へ
本当はここでタイの観光話をとなるのだが、記者は取材で乗っていたため折り返し便となるJL34便で日本へ。JL34便のタイムスケジュールは、バンコク21時55分発~羽田6時5分到着。つまり、5時間未満のバンコク滞在(正確には、スワンナブーム国際空港滞在)となった。
JL34便にSS2が投入されるのはこれが初めてとなり、初便の搭乗客には記念品配布を実施。JALロゴの入ったバゲッジタグがプレゼントされていた。
帰路となるJL34便では、SS2の特徴でもある3-4-2配置の新・間隔エコノミー「SKY WIDER」を利用した。1人で利用している場合は、3-4-2配置のメリットを感じることは少ないかもしれないが、グループでの旅行では大きなメリットを感じる部分だろう。
個人的にこのSKY WIDERは何度も利用しているシートだが、前席のシートバックにさまざまな小物入れが用意されており、いろいろ便利に使える。エンタテイメントシステムのモニターサイズは10.6インチと小さいが、それは自分のPCで補えば問題ない。タブレットを持ち込んで電子書籍を読んだり、インターネットにつないでニュースを見たり(JAL SKY Wi-Fiサービスでのストリーミング利用は不可)すれば、それほど問題とはならないだろう。インターネット接続は、ビジネスクラスでもエコノミークラスでも等しくサービスが提供され、あとは使う側の工夫次第なのがうれしいところだ。
JL34便におけるエコノミークラスの食事はJALスタンダードと呼べるもので、鶏の照焼と炊き込みご飯をメインに、じゃが芋のきんぴら、そば、フレッシュフルーツなどを添えたもの。JALは月ごとにメニューを変更しており、エコノミークラスの「お食事・お飲み物」Webページで搭乗する月のメニューをチェックしておくのがお勧めだ。
JL34便は予定時刻の6時5分より早く、5時33分に羽田空港に到着した。
今回、羽田からバンコクへはSS2のビジネスクラスで、バンコクから羽田へはエコノミークラスの新・間隔エコノミーで移動したが、やはりフルフラット&全席通路アクセスの新ビジネスクラスシート「SKY SUITE III」」の快適度は圧倒的だ。快適に寝ることができるほか、大画面で映画を見ることもできるし、空の上とは思えないほどの食事を楽しむこともできる(シャンパンも)。もちろん、航空券の価格もエコノミークラスと差があるが、JALはビジネスセイバーなどの各種割引運賃を用意している。SS2が投入されるときは、時刻表に「SS2」の表示がされており、バンコクへの旅行や出張などの際は、JALの時刻表をチェックしつつ、より快適な飛行機での移動を考えてみるのもありだろう。